Shironetsu Blog

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『三体』の三体問題について

 これは劉慈欣『三体』(早川書房)のネタバレがある記事。

 「三体問題は(解析的に)解けない」という事実は古典力学を学ぶとなんとなく知ることになり、その意味するところもなんとなく分かる。ほんの僅かしかない力学の「解ける」例に触れた後、それより少し複雑な対象を扱うと「解けない」問題のほうが普通だと信じられるようになる。その一番簡単で象徴的な例が三体問題。

 ところが、数学的に正確に「三体問題は解けない」の意味を説明しようとすると言葉に詰まる。「独立な第一積分が不足した非可積分系である」らしい。「不可能性」の数学的な定式化はだいたい難しい。

 しかし、「三体問題は解けない」が怪しい使われ方をしている場面に直面して、「そういう意味ではない」と言うくらいならもう少し簡単な仕事になる。『三体』の三体問題の記述にはところどころにそう指摘せずにはおれない怪しさがある。

 重要なのは、「三体問題は解けない」という命題それ自体の性質は純粋に数学的なものであること。非常に雑な表現をすれば、抽象的な問題であって自然現象の側に属する問題ではない。確かに「三体問題は解けない」が、解を全く知ることができないということではない。ごく特殊な例外を除いて任意の精度で時間変化を知ることはできる。ただ、三つの質点の任意の時刻での位置を表す「閉じた式」が存在しない。

 ただし、三体系はそのカオス的な振る舞いのため、長い時間が経過したあとの状態について、定量的にも定性的にも予測を行うことが難しいという原理的な困難を孕んでいる。このことは物理的に、そして三体人の生存にとって極めて重要な意義を持つ。この困難さを指して「三体問題は解けない」が使われている部分もあって、上の数学的命題と混同するような記述があるように思われる。

 「三体問題」はタイトルにもとられているほど重要な要素なので、作品理解のためにも簡単に整理したい。なお、ベースは日本語訳版のみ。


汪淼の発見

 「三体問題」の語が初めて現れるのは第15章「三体 コペルニクス、宇宙ラグビー、三太陽の日」において。VRゲーム「三体」中で汪淼(ワン・ミャオ)は、「三体世界」の太陽に関する謎を解明する。

  • 三体人たちの住む惑星は、三つの太陽の周りを回っている。
  • 惑星と、三つの太陽のうち一つだけとの距離が十分短くなったとき、惑星は重力的に捕らえられ、太陽の運行は周期的になる。これが恒紀。この間だけ文明は安定的に発展する。
  • そうでないとき、つまり三つの太陽全てと離れてしまったり、二つ以上の太陽から等しく影響を受けるようになったとき、太陽の運行は不規則になる。結果、地表は沈まない太陽に焼き尽くされたり、太陽が遠すぎて凍結する。これが乱紀。この時期を三体人は乾燥して休眠状態になって耐え忍ぶが、カタストロフィックなイベントが起こると文明が滅ぶ。

というのが彼の予想でありおそらく正しい解釈。三つの太陽の運行を正確に予測するためには、三体問題(+惑星の軌道)を考えればよい。しかし三体問題は複雑であるため、万年歴(おそらく半永久的に利用可能な太陽の運行予測のこと)を作ることはできない。

 万年歴をつくることは諦めざるをえないとしても、三体人の生存にとって重要なのは、太陽の振る舞いを可能な限り先まで予測することだろう。そうすれば灼熱・極寒地獄に備えて休眠するための時間的猶予を延ばしたり、恒紀中の計画を立てることができるようになる。これを実現するためには、三つの太陽+惑星をつぶさに観測して、初期値に由来する予測誤差を減らすとともに、この系の理解を深める必要が出てくる。「三体問題は解けない」という数学的な困難に悩んでも仕方がない。

 ともあれ、三体問題の記述そのものには特に変なところはない。


魏成のアルゴリズム

 続く16章「三体問題」の魏成(ウェイ・チョン)の独白。この辺から怪しい記述が目立ってくる。

みんなは、三体問題に解がないことをポアンカレが証明したと思っているみたいだけど、それはただの誤解だと思う。ポアンカレは、初期条件に対する感度が高いことと、三体問題は求積可能ではないということを証明したにすぎない。でも、感度の高さは、まったく決定できないということとイコールではない。解法に、もっとたくさんのさまざまな方式が含まれているというだけのこと。必要なのは新しいアルゴリズムなんだ。

 
 「感度の高さ」というのはいわゆる初期値鋭敏性のこと。初期値鋭敏性とは、初期値が完全に分かっていて、その後の時間変化を完全に正確に計算できたとしても、初期値のわずかな違いによって長い時間の後の系の様子が大きく変わるというカオス系の性質。この性質のために、長時間の予測は役に立たない。1年後の同じ日に雨が降るかどうか正確な天気予報が出せないのと似ている。しかし一週間先の天気ならかなり信頼できて、その日が近付いてくるほど精度は高くなる。

 と言ってみたがここで天気予報のような現実的な例を出すのが実はあまり適切ではない。天気の問題の場合、どれだけ高性能な計算機があっても、考慮に入れられない無数の要素があってそれも予測精度に影響する。

 初期値鋭敏性はもっと原理的な困難を引き起こす。どれだけ高精度に計算を行うことが可能だとしても、入力する初期値がわずかに違えば未来の状態が大きく異なるということは、つまり、理想化された(考慮に入れる要素を最小限に削ぎ落した)条件の下であっても、正確な予測を行うためには、初期値の精度を上げなければならないということ。計算法をいくら改良しようと予測精度は上がらない。「必要なのは新しいアルゴリズム」ではない。

 このあとモンテカルロ法、進化的アルゴリズムによる三体問題の求積というアイデアが出てくるが、正直ナンセンスだと思う。

メソッドはシンプルだが、モンテカルロ法は、ランダムな総当たり攻撃が正確なロジックを凌駕しうることを示している。量を質に変える、数的なアプローチだ。…(中略)…計算を進めると、最後に生き残った組み合わせが、三体の次の配置、次の瞬間の正確な予測になる。

 「次の瞬間の正確な予測」と言ってしまっている。目的がほかのところにあるならまだ逃げ場があったが。少なくとも、ポアンカレとその後継者たちが追究したような三体問題の難しさを正しく解釈していれば、こういう書き方にはならないと思う。「次の瞬間の正確な予測」にこんなむやみやたらと計算資源を食う方法を取る必要はないどころか、初期値鋭敏性を考えると不適切でさえある。ルンゲ・クッタ法なりシンプレクティック数値積分法なりで完全に決定的に(サイコロを振る必要はない)次の瞬間の予測は行えて、刻み幅を変えることで精度は任意に向上させられる。

 作中で言及がある、Alain Chenciner & Richard Montgomeryによる8の字軌道の探索で取られた方法はある種の最適化問題なので、周期軌道を見つけるうえでこういうアプローチも役に立つかもしれないが、任意の配置を対象にしてその時間発展を求めることが目標なら魏成のアルゴリズムの有効性はかなり疑わしいと言わざるを得ない。

Chenciner, Alain, and Richard Montgomery. "A remarkable periodic solution of the three-body problem in the case of equal masses." arXiv preprint math/0011268 (2000).
https://arxiv.org/abs/math/0011268


 ちなみに本書刊行後の出来事になるが1000以上の周期解が見つかっている。

Li, Xiaoming, Yipeng Jing, and Shijun Liao. "The 1223 new periodic orbits of planar three-body problem with unequal mass and zero angular momentum." arXiv preprint arXiv:1709.04775 (2017).
https://arxiv.org/abs/1709.04775


救済派

救済派の最終的な理想は主の救済であり、…(中略)…主が太陽系を侵略せずに、このまま三体世界で生きつづける道が見つかるとしたら、それが理想的な解決だというのが、救済派の大部分の考えだった。三体運動の問題を物理学的に解決することで、この理想を実現することができ、三体と地球、ふたつの世界を同時に救えるのだと、無邪気に信じている。

 三体文明が何度も滅んでしまうのは、太陽の運行予測がうまくいかず不意を打たれてしまうから(もっとも、どれも予測が成功したところで対処のしようがない天体的災害のような気がする)。この失敗は三体問題に解析解がないことが原因ではなく、予測に十分な精度を与えるための系のモデルが完成していないためだと考えるのが自然*1。問題は純粋な三体問題よりはるかに複雑だが、解けない問題を解くことを求められているわけではない。彼らに必要なのは観測、実験、技術開発…である。

 そういった理由で地球人が「三体運動の問題を物理学的に解決」するだけでは三体人の生存に寄与するところは特に無いだろう。救済派は誤った宗教的信念に基づいて行動しているように表現されているので、ある意味それも正しいのだけれど…。


アルファ・ケンタウリ

 この作品の設定にはもっと乱暴なところがある。それは「三体世界」をアルファ・ケンタウリに定めた部分にある。

 アルファ・ケンタウリ(ケンタウルス座アルファ星系)は実在する。実際、地球から約4光年の位置にあり、三つの太陽が結びついた三重連星系をなしている。その三つにはA、B、Cのアルファベットが振られていて、もっとも小さいC:プロキシマ・ケンタウリが現在地球から最も近い太陽以外の恒星となっている。

 問題はA、B、Cがゲーム「三体」で描かれたような姿をしていないこと。

 確かにこの三つは重力的に相互に影響しているが、数十AUを隔ててお互いに回っているA-Bの二つに対して、Cがあまりにも遠く離れているのだ。その距離は1.3万AU。1AUとは太陽-地球間距離のことで、1.3万AUは1.9兆km、0.21光年に及ぶ。めちゃくちゃ遠い。遠すぎて重力的に結びついているか疑われていた程度に遠い。

en.wikipedia.org
www.nasa.gov

 従って少なくとも現在のアルファ・ケンタウリにはカオス的な「三体問題」は存在しないし、過去に存在していたと示す根拠も乏しい。加えて、太陽に近い質量と明るさのA-Bに対してCは赤色矮星でずいぶん小さく暗いというのも作中との三太陽との明らかな差異となっている。ましてや、距離によって不連続に見た目が変わるという特異な光学的性質は到底仮定できない。

 この天界の有名人たちを、現実と明らかに異なった設定を与えてまで登場させたのは解せない。…とまで書いたあと、「三体」に出てくる歴史上の舞台や人物たちが、いくつかの特徴だけを借りた別物・別人であることを思い出した。それくらいの気持ちで読むべきなのか。

 ちなみに、かなり核心に迫るネタバレだが、ロバート・J・ソウヤーによる『イリーガル・エイリアン』はこのアルファ・ケンタウリの性質をうまくストーリーに織り込んでいる。おすすめ。

***

 三体問題関係の記述以外にもかなりつらい部分はあった。特に三体人が送り込んできたふたつの人工知能搭載陽子、智子(ソフォン)。粒子加速器が突然おかしなデータを吐くようになったからと言って理論物理学者がドタバタ自殺するというのも無理があると思ったが、更にその異常現象をこいつらが引き起こしているという真相が明かされたときは脱力してしまった。

 汪淼が目撃したいくつかの奇跡、「射撃手と農場主」のたとえ話*2が出てきた時点では、宇宙のシミュレーション仮説のようなものを想像していた。『神は沈黙せず』みたいな。鳴り物入りで出版されたこの本でそんな古典的なことはしないだろうと期待した後に提示された解答がこれだった。えぇ~~。

 次巻を待ちましょう。
 

その他リファレンス

19/07/11-12, 18 一部記述改め。

*1:第19章に「アインシュタイン」が登場し、一般相対性理論による修正が必要であったことを述べる。これ自体は正しい(実際にどの程度影響するかは不明)が、「三体問題の難しさ」で捉えられる範囲を逸脱している。モデルの欠陥は「三体問題は解けない」こととは関係がない。

*2:ところでこの「射撃手と農場主」仮説(作中ではSF(Shooter and Farmer)の略称がある)はよく考えると意図が分からない。「農場主」の方にはラッセルによる「帰納主義の七面鳥」という元ネタがあるらしく、帰納の弱点を示す例として使われる。一方「射撃手」の方は著者の考案したものらしいが、「科学的方法の欠陥」を示すたとえ話として両者の違いはどこにあるのだろう。二次元人は真実を知らないまま一生を終えるが、七面鳥は首を刎ねられるという差?

G2 ― ディンキン図形から7次元クロス積まで

 ここにG_2型のディンキン図形がある. 何も知らないふりをしてこの図が表すリー代数がどういう素性を持っているのか調べよう.
f:id:shironetsu:20190616002644p:plain:w300
ふたつの頂点には上のように単純ルート\(\alpha_1,\alpha_2\)を割り当てる. 間の線が3本なので,
\begin{align}
\frac{4(\alpha_1,\alpha_2)^2}{|\alpha_1|^2|\alpha_2|^2} = 3.
\end{align}
矢印は\(<\)の向きについているから,\(|\alpha_1|<|\alpha_2|\). 従って,
\begin{align}
\frac{2(\alpha_1,\alpha_2)}{|\alpha_2|^2} = -1,\ \ \
\frac{2(\alpha_2,\alpha_1)}{|\alpha_1|^2} = -3.
\end{align}
ここからカルタン行列\(C\)が復元される.
\begin{align}
C= \begin{pmatrix}
2 & -1\\
-3 & 2
\end{pmatrix},\ \ \
C_{ij} = \frac{2(\alpha_i,\alpha_j)}{|\alpha_j|^2}
\end{align}

 続いて, ルート系全体\(\Delta\)を復元する. 正ルートは,
\begin{align}
\begin{array}{|c|c|} \hline
\mbox{高さ} & \mbox{正ルート} \\ \hline
 1 & \alpha_1,\ \alpha_2 \\ \hline
 2 & \alpha_1 + \alpha_2 \\ \hline
 3 & 2\alpha_1 + \alpha_2 \\ \hline
 4 & 3\alpha_1 + \alpha_2 \\ \hline
 5 & 3\alpha_1 + 2\alpha_2 \\ \hline
\end{array}
\end{align}
合わせて6本.

\(\langle e_1,e_2\rangle\)を正規直交基底にもつ2次元ユークリッド空間にルート系を埋め込もう. \(|\alpha_1|=1, |\alpha_2|=\sqrt{3}\)と決めると,
\begin{align}
\alpha_1 = e_1,\ \ \ \alpha_2=-\frac{3}{2}e_1 + \frac{\sqrt{3}}{2}e_2
\end{align}
図にすると以下のようになる. ランクは2なので全部で14次元だと分かる.
f:id:shironetsu:20190616003003p:plain:w600

 既約表現を調べる. カルタン行列の逆を取ると,
\begin{align}
C^{-1} = \begin{pmatrix}
2 & 1\\
3 & 2
\end{pmatrix}
\end{align}
から, 基本ウェイトは,
\begin{align}
\omega_1 &= 2\alpha_1 + \alpha_2,\\
\omega_2 &= 3\alpha_1 + 2\alpha_2.
\end{align}
任意のウェイトはこの2つの基本ウェイトの整数係数線形和であって, \(m_1\omega_1+m_2\omega_2,\ \ m_1,m_2\in\mathbb{Z}\)と表せる. これを\((m_1,m_2)\)と略記する.
最高ウェイトが\(\lambda=(m_1,m_2)\ \ m_1,m_2\geq 0\)であるような既約表現\(V_\lambda\)の次元は, ワイルの次元公式から,
\begin{align}
{\rm dim}(V_\lambda)
=
\frac{\prod_{\alpha\in\Delta^+} (\lambda+\rho,\alpha)}
{\prod_{\alpha\in\Delta^+} (\rho,\alpha)}.
\end{align}
(参考 : Weyl character formula - Wikipedia
ここに,\(\Delta^+\)は正ルート全体の集合,ワイルベクトル\(\rho\)は正ルート全体の和の1/2, すなわち,
\begin{align}
\rho = \frac{1}{2}\sum_{\alpha\in\Delta^+} \alpha= 5\alpha_1 + 3\alpha_2.
\end{align}
である.
\begin{gather}
\lambda = (2m_1+3m_2)\alpha_1+(m_1+2m_2)\alpha_2,\\
(\alpha_1,\alpha_1) = 1,\ (\alpha_1,\alpha_2) = -\frac{3}{2},\ (\alpha_2,\alpha_2) = 3
\end{gather}
を使って計算すると,
\begin{align}
&\prod_{\alpha\in\Delta^+} (\lambda+\rho,\alpha)\\
&=\left(\frac{1}{2}m_1+\frac{1}{2}\right)
\left(\frac{3}{2}m_2+\frac{3}{2}\right)
\left(\frac{1}{2}m_1+\frac{3}{2}m_2+2\right)
\left(m_1+\frac{3}{2}m_2+\frac{5}{2}\right)
\left(\frac{3}{2}m_1+\frac{3}{2}m_2+3\right)
\left(\frac{3}{2}m_1+3m_2+\frac{9}{2}\right)
\end{align}
これが分母. 分子は\(m_1=m_2=0\)を代入して得られる.
\begin{align}
&\dim(V_\lambda)\\
&=\left(m_1+1\right)\left(m_2+1\right)
\left(\frac{1}{4}m_1+\frac{3}{4}m_2+1\right)
\left(\frac{2}{5}m_1+\frac{3}{5}m_2+1\right)
\left(\frac{1}{2}m_1+\frac{1}{2}m_2+1\right)
\left(\frac{1}{3}m_1+\frac{2}{3}m_2+1\right)
\end{align}
いくつかの\((m_1,m_2)\)に対して実際に値を求める.
\begin{align}
\begin{array}{|c|c|}\hline
(m_1,m_2) & {\rm dim} \\ \hline
(0,0) & 1\\ \hline
(1,0) & 7 \\ \hline
(0,1) & 14\\ \hline
(2,0) & 27\\ \hline
(1,1) & 64\\ \hline
(0,2) & 77\\ \hline
(3,0) & 77\\ \hline
(2,1) & 189\\ \hline
(1,2) & 286\\ \hline
(0,3) & 273\\ \hline
\end{array}
\end{align}
(参考: A104599 - OEIS 複素数上のG2型リー代数の既約表現の次元を昇順に並べた数列.)

 自明表現を除けば最小の次元は7. ウェイトを求める.

f:id:shironetsu:20190616003812p:plain:w300
7次元表現のウェイト

 長方形の中にウェイトのラベル\((m_1,m_2)\)が入っていて, 左に下がる方へ\(-\alpha_1\), 右に下がる方へ\(-\alpha_2\)と単純ルートひとつぶん下がっていく. これを見ると, 重複度はどれも1であることが分かる.

 既約表現をその次元(のボールド体)で表すことにする. つまり,最高ウェイトを\((1,0)\)に持つ既約表現は\({\bf 7}\), 最高ウェイトが\((2,0)\)なら\({\bf 27}\)という具合に.

 \({\bf 7}\)表現同士のテンソル積(「合成系」と呼ぶ)\({\bf 7}\otimes{\bf 7}\)は対称部分と反対称部分に分けられて, それぞれ次元は
\begin{align}
    {\rm dim}({\rm Sym}^2{\bf 7}) = \frac{8\cdot7}{2} = 28,\ \ \ 
    {\rm dim}(\wedge^2{\bf 7}) = \frac{7\cdot 6}{2} = 21
\end{align}
となっている.

 最高ウェイト\((1,0)+(1,0)=(2,0)\)の既約表現が対称部分に含まれて, これは27次元である.従って残った1次元は自明表現.

 {\rm Sym}^2{\bf 7} = {\bf 27}\oplus{\bf 1}

 反対称部分は最高ウェイト\((1,0)+(-1,1)=(0,1)\)の既約表現を含んでいて,次元14. 随伴表現に一致するため, \((0,0)\)を除いて重複度は2. 残された7次元は最高ウェイト\((1,0)\)を含むので,\({\bf 7}\)表現.

\wedge^2{\bf 7} = {\bf 14}\oplus{\bf 7}

 各空間のウェイトの重複度は以下のようになっている.
\begin{align}
\begin{array}{|c|c|c|c|c|}\hline
\mbox{ウェイト} & {\bf 27} & {\bf 1} &{\bf 14}&{\bf 7}\\ \hline
(2,0) & 1 &0& 0&0\\\hline
(0,1) & 1 &0& 1&0\\\hline
(-2,2) & 1 &0& 0&0\\\hline
(3,-1) & 1 &0& 1&0\\\hline
(1,0) & 2 &0& 1&1\\\hline
(-1,1) & 2 &0&1&1\\\hline
(4,-2) & 1 &0&0&0\\\hline
(-3,2) & 1 &0&1&0\\\hline
(2,-1) & 2 &0& 1&1\\\hline
(0,0) & 3 &1&2&1\\\hline
(-2,1) & 2 &0&1&1\\\hline
(3,-2) & 1 &0&1&0\\\hline
(-4,2) & 1 &0&0&0\\\hline
(1,-1) & 2 &0& 1&1\\\hline
(-1,0) & 2 &0& 1&1\\\hline
(-3,1) & 1 &0& 1&0\\\hline
(2,-2) & 1 &0& 0&0\\\hline
(0,-1) & 1&0&1&0\\\hline
(-2,0) & 1&0&0&0\\\hline
\end{array}
\end{align}
ふたつの7次元表現から7次元表現が出てくる. これに注目する.

 実際に既約分解を行うことで詳しく調べる. 一般に, あるウェイト\(\mu\)を持つ固有状態(量子力学ふうに)\(|\mu\rangle\)とルート\(\alpha\)に対して,

  • \(\mu+p\alpha\)がウェイトであって\(\mu+(p+1)\alpha\)がウェイトでない
  • \(\mu-q\alpha\)がウェイトであって\(\mu-(q+1)\alpha\)がウェイトでない

ような非負整数\(p,q\)が存在する. このとき,
\begin{align}
\left|E_{-\alpha}|\mu\rangle\right|^2 = \frac{1}{2}q(p+1)(\alpha,\alpha).
\end{align}
ただし, ルート\(\alpha\)に対応するリー代数の元を\(E_\alpha\)で表した.

 \({\bf 7}\)表現のウェイト\((m_1,m_2)\)に対応する状態を単に\(|m_1,m_2\rangle\)で表すことにすると,
\begin{align}
E_{-\alpha1}|1,0\rangle & = \sqrt{\frac{1}{2}}|\!-\!1,1\rangle\\
E_{-\alpha2}|\!-\!1,1\rangle &= \sqrt{\frac{3}{2}}|2,\!-\!1\rangle\\
E_{-\alpha1}|2,\!-\!1\rangle &= |0,0\rangle\\
E_{-\alpha1}|0,0\rangle &= |\!-\!2,1\rangle\\
E_{-\alpha2}|\!-\!2,1\rangle &= \sqrt{\frac{3}{2}}|1,\!-\!1\rangle\\
E_{-\alpha1}|1,\!-\!1\rangle & = \sqrt{\frac{1}{2}}|\!-\!1,0\rangle\\
\end{align}
から全ての状態が得られる.

 合成系は\(|\mbox{(次元)},m_1,m_2\rangle\!\rangle\)で表すことにする. まずは\({\bf 14}\)表現を見る.
\begin{align}
|{\bf 14},0,1\rangle\!\rangle
&= \sqrt{\frac{1}{2}}
\Big(|1,0\rangle|\!-\!1,1\rangle-|\!-\!1,1\rangle|1,0\rangle\Big)\\
|{\bf 14},3,-1\rangle\!\rangle
&= \sqrt{\frac{2}{3}}E_{-\alpha2}|{\bf 14},0,1\rangle\!\rangle\\
&= \sqrt{\frac{2}{3}}
\sqrt{\frac{1}{2}}
\Big(|1,0\rangle\sqrt{\frac{3}{2}}|2,\!-\!1\rangle
-\sqrt{\frac{3}{2}}|2,\!-\!1\rangle|1,0\rangle\Big)\\
&=\sqrt{\frac{1}{2}}
\Big(|1,0\rangle|2,\!-\!1\rangle
-|2,\!-\!1\rangle|1,0\rangle\Big)\\
|{\bf 14},1,0\rangle\!\rangle &=\sqrt{\frac{2}{3}}E_{-\alpha1}|{\bf 14},3,-1\rangle\!\rangle\\
&=\sqrt{\frac{2}{3}}
\sqrt{\frac{1}{2}}
\Big(\sqrt{\frac{1}{2}}|\!-\!1,1\rangle|2,\!-\!1\rangle
+|1,0\rangle|0,0\rangle
-|0,0\rangle|1,0\rangle
-|2,\!-\!1\rangle\sqrt{\frac{1}{2}}|\!-\!1,1\rangle\Big)\\
&=\sqrt{\frac{1}{6}}\Big(|\!-\!1,1\rangle|2,\!-\!1\rangle-|2,\!-\!1\rangle|\!-\!1,1\rangle\Big)
+\sqrt{\frac{1}{3}}\Big(|1,0\rangle|0,0\rangle-|0,0\rangle|1,0\rangle\Big).
\end{align}
合成系の反対称部分のウェイト\((1,0)\)の空間は2次元なので,この中で\(|{\bf 14},1,0\rangle\!\rangle\)に直交するベクトルを取ればそれを\(|{\bf 7},1,0\rangle\!\rangle\)と決められる.
\begin{align}
|{\bf 7},1,0\rangle\!\rangle
= -\sqrt{\frac{1}{3}}\Big(|\!-\!1,1\rangle|2,\!-\!1\rangle-|2,\!-\!1\rangle|\!-\!1,1\rangle\Big)
+\sqrt{\frac{1}{6}}\Big(|1,0\rangle|0,0\rangle-|0,0\rangle|1,0\rangle\Big)
\end{align}
これを次々に下降させて合成系の\(\bf{7}\)表現全体を得る.
\begin{align}
 |{\bf 7},-1,1\rangle\!\rangle
&=\sqrt{2}E_{-\alpha1}|{\bf 7},1,0\rangle\!\rangle\\
&=-\sqrt{\frac{1}{6}}\Big(|\!-\!1,1\rangle|0,0\rangle-|0,0\rangle|\!-\!1,1\rangle\Big)
+\sqrt{\frac{1}{3}}\Big(|1,0\rangle|\!-\!2,1\rangle-|\!-\!2,1\rangle|1,0\rangle\Big)\\
 |{\bf 7},2,\!-\!1\rangle\!\rangle
&=\sqrt{\frac{2}{3}}E_{-\alpha2}|{\bf 7},-1,1\rangle\!\rangle\\
&=-\sqrt{\frac{1}{6}}\Big(|2,\!-\!1\rangle|0,0\rangle-|0,0\rangle|2,\!-\!1\rangle\Big)
+\sqrt{\frac{1}{3}}\Big(|1,0\rangle|1,\!-\!1\rangle-|1,\!-\!1\rangle|1,0\rangle\Big)\\
 |{\bf 7},0,0\rangle\!\rangle
&=E_{-\alpha1}|{\bf 7},2,\!-\!1\rangle\!\rangle\\
&=-\sqrt{\frac{1}{6}}\Big(|2,-1\rangle|-2,1\rangle-|-2,1\rangle|2,-1\rangle\Big)\\
&+\sqrt{\frac{1}{6}}\Big(|-1,1\rangle|1,-1\rangle-|1,-1\rangle|-1,1\rangle\Big)
+\sqrt{\frac{1}{6}}\Big(|1,0\rangle|-1,0\rangle-|-1,0\rangle|1,0\rangle\Big)\\
 |{\bf 7},-2,1\rangle\!\rangle
&=E_{-\alpha1}|{\bf 7},0,0\rangle\!\rangle\\
&=-\sqrt{\frac{1}{6}}\Big(|0,0\rangle|-2,1\rangle-|-2,1\rangle|0,0\rangle\Big)
+\sqrt{\frac{1}{3}}\Big(|-1,1\rangle|-1,0\rangle-|-1,0\rangle|-1,1\rangle\Big)\\
 |{\bf 7},1,-1\rangle\!\rangle
&=\sqrt{\frac{2}{3}}E_{-\alpha1}|{\bf 7},-2,1\rangle\!\rangle\\
&=-\sqrt{\frac{1}{6}}\Big(|0,0\rangle|1,-1\rangle-|1,-1\rangle|0,0\rangle\Big)
+\sqrt{\frac{1}{3}}\Big(|2,-1\rangle|-1,0\rangle-|-1,0\rangle|2,-1\rangle\Big)\\
 |{\bf 7},-1,0\rangle\!\rangle
&=\sqrt{2}E_{-\alpha1}|{\bf 7},1,-1\rangle\!\rangle\\
&=-\sqrt{\frac{1}{3}}\Big(|-2,1\rangle|1,-1\rangle-|1,-1\rangle|-2,1\rangle\Big)
 +\sqrt{\frac{1}{6}}\Big(|0,0\rangle|-1,0\rangle-|-1,0\rangle|0,0\rangle\Big)
\end{align}
よく見ると\(|0,0\rangle\)だけ位置付けが明らかに異なっている. これを解消するためにユニタリ変換で\(\bf{7}\)表現の基底を取り換える.
\begin{align}
|1,0\rangle &= \frac{-|1\rangle-i|7\rangle}{\sqrt{2}}\\
|-1,1\rangle &= \frac{i|2\rangle+|6\rangle}{\sqrt{2}}\\
|2,-1\rangle &= \frac{-|3\rangle-i|5\rangle}{\sqrt{2}}\\
|0,0\rangle &= -|4\rangle\\
|-2,1\rangle &= \frac{|3\rangle-i|5\rangle}{\sqrt{2}}\\
|1,-1\rangle &= \frac{-i|2\rangle+|6\rangle}{\sqrt{2}}\\
|1,0\rangle &= \frac{|1\rangle-i|7\rangle}{\sqrt{2}}
\end{align}
すると,
\begin{align}
|{\bf 7},1\rangle\!\rangle
&=\frac{i}{\sqrt{6}}\Big(-|2\rangle|3\rangle+|3\rangle|2\rangle
+|4\rangle|7\rangle+|5\rangle|6\rangle
-|6\rangle|5\rangle-|7\rangle|4\rangle\Big)\\
|{\bf 7},2\rangle\!\rangle
&=\frac{i}{\sqrt{6}}\Big(|1\rangle|3\rangle-|3\rangle|1\rangle
+|4\rangle|6\rangle-|5\rangle|7\rangle
-|6\rangle|4\rangle+|7\rangle|5\rangle\Big)\\
|{\bf 7},3\rangle\!\rangle
&=\frac{i}{\sqrt{6}}\Big(-|1\rangle|2\rangle+|2\rangle|1\rangle
-|4\rangle|5\rangle+|5\rangle|4\rangle
-|6\rangle|7\rangle+|7\rangle|6\rangle\Big)\\
|{\bf 7},4\rangle\!\rangle
&=\frac{i}{\sqrt{6}}\Big(-|1\rangle|7\rangle-|2\rangle|6\rangle
+|3\rangle|5\rangle-|5\rangle|3\rangle
+|6\rangle|2\rangle+|7\rangle|1\rangle\Big)\\
|{\bf 7},5\rangle\!\rangle
&=\frac{i}{\sqrt{6}}\Big(-|1\rangle|6\rangle+|2\rangle|7\rangle
-|3\rangle|4\rangle+|4\rangle|3\rangle
+|6\rangle|1\rangle-|7\rangle|2\rangle\Big)\\
|{\bf 7},6\rangle\!\rangle
&=\frac{i}{\sqrt{6}}\Big(|1\rangle|5\rangle+|2\rangle|4\rangle
+|3\rangle|7\rangle-|4\rangle|2\rangle
-|5\rangle|1\rangle-|7\rangle|3\rangle\Big)\\
|{\bf 7},7\rangle\!\rangle
&=\frac{i}{\sqrt{6}}\Big(|1\rangle|4\rangle-|2\rangle|5\rangle
-|3\rangle|6\rangle-|4\rangle|1\rangle
+|5\rangle|2\rangle+|6\rangle|3\rangle\Big)
\end{align}
ときれいになる. 更に置換の巡回記法で\((612453)\)と数字を入れ替えて(きわめて恣意的だが...),
\begin{align}
|{\bf 7},1\rangle\!\rangle
&=\frac{i}{\sqrt{6}}\Big(|2\rangle|3\rangle-|3\rangle|2\rangle+|4\rangle|5\rangle
-|5\rangle|4\rangle+|6\rangle|7\rangle-|7\rangle|6\rangle\Big)\\
|{\bf 7},2\rangle\!\rangle
&=\frac{i}{\sqrt{6}}\Big(-|1\rangle|3\rangle+|3\rangle|1\rangle
-|4\rangle|6\rangle+|5\rangle|7\rangle+|6\rangle|4\rangle-|7\rangle|5\rangle\Big)\\
|{\bf 7},3\rangle\!\rangle
&=\frac{i}{\sqrt{6}}\Big(+|1\rangle|2\rangle-|2\rangle|1\rangle+|4\rangle|7\rangle
+|5\rangle|6\rangle-|6\rangle|5\rangle
-|7\rangle|4\rangle\Big)\\
|{\bf 7},4\rangle\!\rangle
&=\frac{i}{\sqrt{6}}\Big(-|1\rangle|5\rangle+|2\rangle|6\rangle-|3\rangle|7\rangle
+|5\rangle|1\rangle-|6\rangle|2\rangle
+|7\rangle|3\rangle\Big)\\
|{\bf 7},5\rangle\!\rangle
&=\frac{i}{\sqrt{6}}\Big(|1\rangle|4\rangle-|2\rangle|7\rangle-|3\rangle|6\rangle
-|4\rangle|1\rangle+|6\rangle|3\rangle+|7\rangle|2\rangle\Big)\\
|{\bf 7},6\rangle\!\rangle
&=\frac{i}{\sqrt{6}}\Big(-|1\rangle|7\rangle-|2\rangle|4\rangle+|3\rangle|5\rangle
+|4\rangle|2\rangle-|5\rangle|3\rangle+|7\rangle|1\rangle\Big)\\
|{\bf 7},7\rangle\!\rangle
&=\frac{i}{\sqrt{6}}\Big(|1\rangle|6\rangle+ |2\rangle|5\rangle+|3\rangle|4\rangle-|4\rangle|3\rangle-|5\rangle|2\rangle
-|6\rangle|1\rangle
\Big)
\end{align}
を得る.

 定数倍を無視するとこれは7次元クロス積に他ならない.
Seven-dimensional cross product - Wikipedia



...........................




 \(G_2\)は八元数の自己同型群として知られる. 実部は不変なので, \(\mathbb{R}^7\)への作用で7次元クロス積の自己同型群と考えてもいい. この事実からルート系を決めるまでは横田一郎『例外型単純リー群』(現代数学社)第1章に詳しく書かれている.

Ichiro Yokota "Exceptional Lie groups"
https://arxiv.org/abs/0902.0431

 では逆に八元数なんて知らないふりをして, ディンキン図から「八元数の自己同型群」であることを知ることができるか...というと上にやった通り. 原理的には手順はほぼ決まっているので計算を頑張るだけではある. ここでやったのは7次元クロス積が出てくるまでなので微妙に届いていないが, もう少し頑張ると1次元表現から7次元ノルムが出てきて八元数そのものが見えてくるはず.

 \(F_4,E_n\)型についても複雑怪奇なベクトルの積が定義される変な空間があってその自己同型群を使って群が構成されているが, 同じようにしてその空間を発見することが可能ではあるのだろう. 手では厳しいけど.

 歴史的には分類定理のあとに八元数との関係が見いだされたはずだが, 調べていないので迂闊なことは言えない.

 それにしても, こういうふうに計算してみてもなお六芒星八元数がルート系を通して繋がるというのは不思議でならない.

直線の配置の数え上げ(1)―6本の直線が作る43通りの形

 ある数え上げの問題. 言葉で説明するよりちょっと観察してみるのが早い.

 4本の直線を引く. どの2本も平行ではなく, どの3本も同じ点で交わることはないとしよう.

f:id:shironetsu:20190505023501p:plain:w600

すると, どう引いても直線で囲まれた領域の「形」はいつも同じになる. 1つの4角形が隣り合う2つの辺で2つの3角形とつながった形.

 5本ならどうか. 4本の直線を引いた後に, もう1本付け足すことを考えて, 慎重に数えると次の6通りがあることが分かる. ただし反転で移り合うものは1つとみなす.

f:id:shironetsu:20190505025204p:plain:w600

☆型が1つ, 左右対称なものが4つ, 自明な対称性しか持たないものが1つ. ここでいう「対称性」はグラフ的な意味で, 交点を頂点, 交点同士を結ぶ線分を辺とみなしている. それぞれ群としては位数10の2面体群 D_5, 位数2の2面体群(というのは反転対称性のこと) D_1, 自明な群 Eを自己同型群として持つ, と言える.

 この直線たちを6本, 7本……と増やしていったときにできる「形」のパターンを数えることがここでの興味である. つまり,

平面上にn本の直線を引く. どの2本も平行ではなく, どの3本も1つの点で交わらない. この条件を満たしつつ連続的に変形, または反転させたとき一致するものを同一視する. このとき, 何通りの直線の引き方が存在するか?

 さて, もう少し観察を続けよう……とペンと紙で \(n=6\) の場合も引き続き調べようとするとかなり根気がいることがだんだん分かってくる. きわめて単純な観察から始まる割にこの問題は難しい. とはいえ \(n=0\) から \(n=5\) までは分かっている. \(1,1,1,1,1,6,...\)

 オンライン整数列辞典へ. 最初の6項と"line"の語を入れて調べてみると出てくる.
f:id:shironetsu:20190505032556p:plain:w600
A090338 - OEIS

"Number of ways of arranging n straight lines in general position in the (affine) plane." : 一般の位置にある  n 本の直線を(アフィン)平面上で並べる方法の数. \(n=6\) では43通り. もう少し根気があれば自力で数えられる程度ではあった. コメントによると, このような直線の配置は"full n-flups"と呼ばれていたらしい. "Old name"とされていることが気になるし, "flup"の訳語も分からないが, ここでもこの用語を使うことにする.

 実はこの検索結果の直下にもうひとつよく似た数列が出てくる(見ての通りナンバリングはA090388の直後であり,相互に参照もしている).
f:id:shironetsu:20190505033035p:plain:w600
A090339 - OEIS

"Number of full curvilinear flups with n curves." : n 本の曲線からなる"full curvilinear flups"の数. コメントを読もう.

  a(n) (訳中:このA090339の数列のこと)は無限長のn本の曲線のトポロジー的に異なる配置の数で, どの曲線も他の曲線とちょうど1点で交わり, どの2つの交点が一致することもない.  n < 8 では a(n) は, 曲線を線分に制限した場合であるA090338(n)に一致する.
 しかし, n=8 において, 我々は a(n) の中に線分で描けない3つの配置を発見した. 「無限長」の条件は, 他の曲線で囲まれた領域の中に端点があるような配置を許さない. A090338(n)と同様に, 鏡映対称な配置は異なるものとして数えない.

n=8 の直線では実現できない配置3つのうち1つが参考に挙げられている.
https://oeis.org/A090339/a090339.gif

 いったいどうやって見つけたのか見当がつかないが, 「直線のなす配置」を仮定するとユークリッド幾何学による難しい制約が加わることが分かる. 現に直線の場合A90338では, 曲線の場合A90339では分かっている n=9 が確定していない. そこで, 純粋に組み合わせ的な問題に帰着できる後者A90339をまずは考える.

 方針はこう:

  • 曲線によって平面は2つの領域に分割される. それぞれに0と1を割り当てる. 曲線も数でラベリングし, 各領域に長さ n の符号を対応させる.

f:id:shironetsu:20190505042510p:plain:w500
平面は n(n+1)/2+1 個の領域に分けられている. (n-1)(n-2)/2 個の有限領域と 2n 個の無限領域.

  • n=k+1 の場合は, n=k の場合に曲線を加えることで生成する. Full  k- flups に含まれる, 2つの無限領域(対応する符号はたがいに反転の関係にある)を結ぶ経路(両端を含んで長さ (k+1))は末尾に0と1を加えて2つの領域に分割. 直線で隔てられた2つの領域のそれぞれで末尾に0か1の異なる数を加える.
  • 同型性の判定が難しい. 直線の入れ替え, 0と1の反転を行うことである「標準形」に持っていく.

このアイデアに従ってコードを書いたが...n=5まではうまくいくものの, n=6で重複や不可能な配置を生成してうまくいかない(おそらく実装の問題). しかし, 生成された配置から(マニュアルで)それらを除いていくと, 何とか43個のfull 6-flupsを確定させることができた. 自己同型群別に以下に並べる.

自己同型群 : 自明な群  E (位数1)…34個
f:id:shironetsu:20190505050102p:plain:w800
f:id:shironetsu:20190505050202p:plain:w800
f:id:shironetsu:20190505050236p:plain:w800

自己同型群 : 1次の2面体群(反転対称性) D_1 (位数2)...6個
f:id:shironetsu:20190505045856p:plain:w800

自己同型群 : 3次の巡回群 C_3 (位数3)...2個
f:id:shironetsu:20190505050341p:plain:w300

自己同型群 : 3次の2面体群 D_3 (位数6)...1個
f:id:shironetsu:20190505050416p:plain:w200

曲線は色で分けた. 無限長を仮定しているが, 交点をすべて含むように両端点を打ち切り.

こうして並べるとなかなか美しい. ちなみにグラフはdotファイルを生成してgraphvizからsvgで出力したもの.
www.graphviz.org

なお, 既に述べたようにこれらはすべて直線の配置として実現可能. これを判定する方法はやはり分からない.

n=7でこれと同じように列挙するのが次の目標. しかし, 現時点で想定通りにコードが動かないうえ, 同型性の判定に非常に時間がかかる.

A09338からリンクされている以下の論文やこの研究に関するホームページ, また参照されている論文などを見ていけばよさそう.
Finschi, Lukas, A graph theoretical approach for reconstruction and generation of oriented matroids - Research Collection, (2001). Diss., Mathematische Wissenschaften ETH Zürich, Nr. 14335, 2001.
www.om.math.ethz.ch

尻切れになってしまった. うまくいったら次の記事で, 列挙アルゴリズムの中身について論じる予定.

氷の塔を建てて隣の星へ――グレッグ・イーガン "Phoresis"

 昨年4月に刊行されたグレッグ・イーガンによるノヴェラPhoresis.

f:id:shironetsu:20190414210751j:plain:w400
https://subterraneanpress.com/phoresis

 コレクター向けに1000部限定でナンバリングされたハードカバー書籍として発売された本作は, 刊行後まもなくKindle電子書籍ストアでの取り扱いが始まり今では気軽に手に取れるようになっている. 発売から1年経ち, 新作Perihelion Summer(太陽系をブラックホールが通過するという何ともタイムリーな内容)の刊行も目前に迫っている. 以下ネタバレを大いに含む紹介.

続きを読む

PSL(2,13)指標表手作り体験記(2)――PSL(2,q)の部分群

続き.
PSL(2,13)指標表手作り体験記(1)――G2の有限部分群 - Shironetsu Blog

PSL(2,q)の部分群

 ガロアシュヴァリエへ宛てた「最後の手紙」の中で述べた命題は現代的に解釈するとこうであった.

素数 \(p\) について, PSL(2,p) が \(p\) 点に推移的に作用するのは \(p=2,3,5,7,11\) の場合に限られる.

 ガロアが気付いていたのかどうかは不明だが, 実際にはこの定理はより一般の有限体に拡張できて, 9元体を加えて次のようになる.

素数冪 \(q\) について, 自明な作用を除いて \(PSL(2,q)\) が \(q\) 点以下に推移的に作用するのは \(q=2,3,5,7,9,11\) の場合に限られる.

\(PSL(2,\mathbb{F}_q)\) は射影直線 \(P^1(\mathbb{F}_q)\) には必ず推移的に作用するため, \(q=2,3,5,7,9,11\) の例外を除けば非自明に推移的に作用する最小の集合の大きさは \(q+1\) ということになる. 例外となるそれぞれの場合で以下の関係が成り立つ.

\begin{align}
    PSL(2,2) &\cong Sym(3)\\
    PSL(2,3) & \cong Alt(4)\\
    PSL(2,5) & \cong Alt(5) \cong PSL(2,4)\\
    PSL(2,7) & \subset Alt(7)\\
    PSL(2,9) & \cong Alt(6)\\
    PSL(2,11) & \subset Alt(11)
\end{align}

 SymとAltはそれぞれ対称群と交代群. \(q=5,7,9,11\) のそれぞれで\(5,7,6,11\)点に推移的に作用する. \(q=2,3\) の場合の\(2,3\)点集合への推移的な作用は,それぞれ3次交代群, クラインの4元群で割った剰余群が2次,3次の巡回群になることから従う(ただし忠実な作用ではない).

 ではこれらの例外を除いて \(q\) 点以下への作用が存在しないのはなぜか. もし \(k\,(\leq q)\) 点への推移的な作用が可能なら, 1点の安定化群として指数 \(k\) の真部分群が存在する. しかし \(q=2,3,5,7,9,11\) 以外では以下で述べるようにそのような「大きな」真部分群は存在しない. したがって自明な作用を除いて \(q\) 点以下への作用は不可能. つまり \(PSL(2,q)\) の部分群の構造が分かればその系として上の定理は得られることになる.

 \(PSL(2,q)\) の部分群は完全に分類されている. 以下の事実が知られている[1-3].

定理: PSL(2,q)\ (q=p^n,\,p:\mbox{素数}) は次の部分群(i)-(vii)をもつ:

(i) 位数 2(q\pm 1)/d の2面体群とその部分群. ただし d={\rm gcd}(2,q-1).

(ii) 位数 \(q(q-1)/d\) の群 \(H\) とその部分群. \(H\) のシロー \(p-\)部分群 \(Q\) は基本アーベル群, \(Q\triangleleft H\), \(H/Q\) は位数 \((q-1)/d\) の巡回群.

(iii) \(Alt(4)\). ただし \(p=2\) かつ \(n\) が奇数のときを除く.

(iv) \(Sym(4)\). ただし \(q\equiv \pm1\,\mod 8\) のとき.

(v) \(Alt(5)\). ただし \(q\equiv 0,\pm1 \mod 5\) のとき.

(vi) \(PSL(2,r)\). ただし \(q=r^m\) となるとき.

(vii) PGL(2,r). ただし \(q=r^m\) で \(q\) が奇数, \(m\) が偶数のとき.

 各場合について丹念に調べると, \(PSL(2,q)\) の真部分群の指数の最小値は \(q=2,3,5,7,11\) のとき \(q\), \(q=9\) のとき6, その他の場合には \(q+1\) となることが分かる. その真部分群の指数の最小値がちょうど推移的に作用できる最小の集合の大きさということになる.

  肝心の部分群の分類定理の証明について何も言えていないが, それにしてもガロアはこのことをどう理解していたのだろう? ガロアが考えていた素数\(p\)の場合に絞ると, \(PSL(2,p)\) は位数 \(p\) の元を含むため \(p\) 点より小さな集合に忠実かつ推移的に作用することができない. したがって \(p\geq 13\) で指数 \(p\) の部分群がないことだけ分かればよかった. 「だけ」とは言っても指数 \(p\) の部分群の非存在を言う方法が分からない. どんな方法が?

 ちなみにガロアのこの手紙が送られたのは1832年5月末. シローの定理で知られるPeter Ludwig Mejdell Sylowがノルウェーで生まれるのがこの年の12月...というと何が何だかよく分からなくなる.


PSL(2,13)の指標(続)

 再び \(p=13\) に限定してその表現を調べよう.

14次元既約表現

 前回, \(PSL(2,13)\) が \(G_2\) の部分群であることを7次元既約表現によって確かめたあと, \(G_2\) の随伴表現によって \(PSL(2,13)\) の14次元既約表現をひとつ得た. ほかの14次元表現は上の分類定理の(ii)型の部分群による誘導表現から出てくる. 手続きはほぼ \(PSL(2,11)\) の12次元既約表現を得たときとほぼ同じため, 計算の詳細は以下の記事にかえる.

PSL(2,11)指標表手作り体験記――Paley biplaneと正20面体 - Shironetsu Blog

 (ii)の記号を使って \(H\) を位数78の部分群とする. \(H\) の正規部分群 \(Q\cong \mathbb{Z}_{13}\) による剰余群が \(H/Q\cong \mathbb{Z}_6\) となることから, \(H\) の1次元表現, というのは既約指標と同じことで \pi_k\ (0\leq k \leq 5) を得る.

\(H\)の1次元表現.
\begin{align}
    \begin{array}{|c|cccccc|} \hline
        h \in H &  
        \begin{bmatrix}\
         1 & *\\
         0 & 1
        \end{bmatrix} &
        \begin{bmatrix}\
         2 & *\\
         0 & 7
        \end{bmatrix} &
        \begin{bmatrix}\
         4 & *\\
         0 & 10
        \end{bmatrix} &
        \begin{bmatrix}\
         8 & *\\
         0 & 5
        \end{bmatrix} &
        \begin{bmatrix}\
         3 & *\\
         0 & 9
        \end{bmatrix} &
        \begin{bmatrix}\
         6 & *\\
         0 & 11
        \end{bmatrix} \\ \hline
        \pi_k(h) &
        1 &
        \zeta^k&
        \zeta^{2k}&
        \zeta^{3k}&
        \zeta^{4k}&
        \zeta^{5k}\\ \hline
    \end{array}\\
    \zeta = \exp\frac{2\pi}{6}=\frac{1+\sqrt{-3}}{2}
\end{align}

ただし \zeta は1の原始6乗根.

 \(H\) の表現 \(\pi_k\) に対応して \(G\) の誘導表現を \(\rho_k\), 指標を \(\chi_k\) とすると, 以下のようになる.

\(H\) による \(G\) の誘導表現の指標.
\begin{gather}
    \begin{array}{|c|ccccccccc|}\hline
     \mbox{共役類}&1A_1 & 91A_2 & 182A_3 & 84A_{13} & 84B_{13} & 156A_7 & 182A_6 & 156B_7 & 156C_7\\
     \hline
     \chi_k&14 & 2\zeta^{3k} & \zeta^{2k}+\zeta^{4k} & 1 & 1 & 0 & \zeta^k+\zeta^{5k} & 0 & 0  \\ \hline
    \end{array}
\end{gather}

各\(k\)について具体的には次の通り.

\(H\) による \(G\) の誘導表現の指標.
\begin{gather}
    \begin{array}{|c|ccccccccc|}\hline
     \mbox{共役類}&1A_1 & 91A_2 & 182A_3 & 84A_{13} & 84B_{13} & 156A_7 & 182A_6 & 156B_7 & 156C_7\\
     \hline
     \chi_0&14 & 2 & 2 & 1 & 1 & 0 & 2 & 0 & 0  \\ \hline
     \chi_1=\chi_5 & 14 & -2 & -1 & 1 & 1 & 0 & 1 & 0 & 0  \\ \hline
     \chi_2=\chi_4 & 14 & 2 & -1 & 1 & 1 & 0 & -1 & 0 & 0  \\ \hline
     \chi_3 & 14 & -2 & 2 & 1 & 1 & 0 & -2 & 0 & 0  \\ \hline
    \end{array}
\end{gather}

 これまでに得た指標から次のことが分かる.

  • \(\rho_1\cong\rho_5\) は以前得た14次元既約表現と同値.
  • \(\rho_0\) は自明表現と13次元既約表現の直和に同値.

\begin{align}
\rho_0 = {\bf 1}\oplus {\bf 13}
\end{align}

  • \(\rho_3\) はふたつの7次元既約表現(一方を\({\bf 7I}\), もう一方を\({\bf 7I\!I}\)として区別)の直和に同値.

\begin{align}
\rho_3 = {\bf 7I}\oplus {\bf 7I\!I}
\end{align}

そして \(\rho_2\cong\rho_4\) はほかのすべてと直交して既約. もうひとつの14次元既約表現を見つけたことになる.


12次元既約表現

 これまでに \(PSL(2,13)\) の既約表現を6つ, 1,7,7,13,14,14次元表現を得た. 2乗和は
\begin{align}
1^2+7^2+7^2+13^2+14^2+14^2 = 660.
\end{align}
共役類が9つなので残りは3つ.
\begin{align}
x^2+y^2+z^2 = 1092-660 = 432,\ \ \ x\leq y\leq z
\end{align}
自然数解は\((x,y,z)=(4,4,20),(12,12,12)\)だが, 20は位数1092の約数ではないため既約表現の次元としては不可能. したがって残る3つの既約表現は12次元表現が3つとなる. この3つを求めるために, また部分群による誘導表現を考えよう.

 \(PSL(2,13)\) から次の2つの元をとる.
\begin{align}
a = \begin{bmatrix}
6 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix},
b = \begin{bmatrix}
0 & 5\\
5 & 0
\end{bmatrix}\\
\end{align}
これらは次の関係を満たす.
\begin{align}
a^7 = b^2 = (ab)^2 = e.
\end{align}
したがって\(a,b\)によって生成される群は位数14の2面体群 \({\mathcal D}_{14}\). 分類定理の(i)にあたる. 2面体群の指標表はすぐに書ける. 順に\(\pi_k\ (1\leq k\leq 5)\)としよう.

2面体群\({\mathcal D}_{14}\) の既約指標.
\begin{align}
    \begin{array}{|c|ccccc|} \hline
        \mbox{共役類} & \{e\} & \{a^{\pm 1}\} & \{a^{\pm 2}\} & \{a^{\pm 4}\} & \{a^{-m}ba^{m}\}_{m=0}^6\\ \hline
        \pi_1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1\\ \hline
        \pi_2 & 1 & 1 & 1 & 1 & -1\\ \hline
        \pi_3 & 2 & \tau+\tau^6 & \tau^2+\tau^5 & \tau^4+\tau^3 & 0 \\ \hline
        \pi_4 & 2 & \tau^2+\tau^5 & \tau^4+\tau^3 & \tau+\tau^6 & 0 \\ \hline
        \pi_5 & 2 & \tau^4+\tau^3 & \tau+\tau^6 & \tau^2+\tau^5 & 0 \\ \hline
    \end{array}\\
    \tau = \exp\frac{2\pi\sqrt{-1}}{7}
\end{align}

 この部分群による \(PSL(2,13)\) の誘導表現 \(\rho_k\) の指標 \(\chi_k\) は次のようになる.

2面体群 \({\mathcal D}_{14}\)\ による \(PSL(2,13)\) の誘導表現の指標.
\begin{gather}
    \begin{array}{|c|ccccccccc|}\hline
     \mbox{共役類}&1A_1 & 91A_2 & 182A_3 & 84A_{13} & 84B_{13} & 156A_7 & 182A_6 & 156B_7 & 156C_7\\
     \hline
     \chi_k& 78\pi_k(e) & 6\pi_k(b) & 0 & 0 & 0 & \pi_k(a) & 0 & \pi_k(a^4) & \pi_k(a^2)\\ \hline
    \end{array}
\end{gather}

一方これまでに得た既約指標は,

既知の \(PSL(2,13)\) 既約指標.
\begin{gather}
    \begin{array}{|c|ccccccccc|}\hline
     \mbox{共役類}&1A_1 & 91A_2 & 182A_3 & 84A_{13} & 84B_{13} & 156A_7 & 182A_6 & 156B_7 & 156C_7\\
     \hline
     {\bf 1} & 1 & 1 &1 &1 &1 &1 &1 &1 &1 \\ \hline
    {\bf 7I} &7 & -1 & 1 & -\alpha & -\beta & 0 & -1 & 0 & 0\\ \hline 
    {\bf 7I\!I} &7 & -1 & 1 & -\beta & -\alpha & 0 & -1 & 0 & 0\\ \hline
    {\bf 13} & 13 & 1 & 1 & 0 & 0 & -1 & 1 & -1 & -1 \\ \hline
    {\bf 14I} &14 & -2 & -1 & 1 & 1 & 0 & 1 & 0 & 0  \\ \hline
    {\bf 14I\!I} &14 & 2 & -1 & 1 & 1 & 0 & -1 & 0 & 0  \\ \hline
    \end{array}\\
    \alpha =\frac{-1+\sqrt{13}}{2},\ \ \ \beta =\frac{-1-\sqrt{13}}{2}
\end{gather}

 指標の直交性を使うと, 12次元既約表現のラベリング\({\bf 12I},{\bf 12I\!I},{\bf 12I\!I\!I}\)の任意性を除いて分解は一意に決まる. 各表現に含まれる既約表現の重複度を表にする.

誘導表現に含まれる既約表現の重複度.
\begin{align}
    \begin{array}{|c|ccccccccc|} \hline
        \mbox{既約表現} & {\bf 1} & {\bf 7I} & {\bf 7I\!I} & {\bf 12I} & {\bf 12I\!I} & {\bf 12I\!I\!I}& {\bf 13} & {\bf 14I} & {\bf 14I\!I}\\  \hline
        \rho_1 & 1 & 0 & 0 & 1 & 1 & 1 & 1 & 0 & 2\\ \hline
        \rho_2 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 0 & 2 & 0\\ \hline
        \rho_3 & 1 & 1 & 1 & 1 & 2 & 2 & 2 & 2 & 2\\ \hline
        \rho_4 & 1 & 1 & 1 & 2 & 1 & 2 & 2 & 2 & 2\\ \hline
        \rho_5 & 1 & 1 & 1 & 2 & 2 & 1 & 2 & 2 & 2\\ \hline
    \end{array}
\end{align}

あとは差し引きするだけで3つの12次元既約表現の指標が得られる.

12次元既約表現の指標
\begin{gather}
    \begin{array}{|c|ccccccccc|}\hline
     \mbox{共役類}&1A_1 & 91A_2 & 182A_3 & 84A_{13} & 84B_{13} & 156A_7 & 182A_6 & 156B_7 & 156C_7\\
     \hline
    {\bf 12I} & 12 & 0 & 0 & -1 & -1 & -u & 0 & -w & -v \\ \hline 
    {\bf 12I\!I} & 12 & 0 & 0 & -1 & -1 & -v & 0 & -u & -w \\ \hline 
    {\bf 12I\!I\!I} & 12 & 0 & 0 & -1 & -1 & -w & 0 & -v & -u \\ \hline 
    \end{array}\\
    u = \tau+\tau^6 = 2\cos\frac{2\pi}{7},\ \ \ 
    v = \tau^2+\tau^5 = 2\cos\frac{4\pi}{7},\ \ \ 
    w = \tau^4+\tau^5 = 2\cos\frac{8\pi}{7}.
\end{gather}

 再び誘導表現の指標をみると,

\begin{align}
    {\bf 13}\otimes {\bf 12I} = \rho_3,\ \ \ 
    {\bf 13}\otimes {\bf 12I\!I} = \rho_4,\ \ \ 
    {\bf 13}\otimes {\bf 12I\!I\!I} = \rho_5,\ \ \ 
\end{align}

という関係になっていたことが分かる. これにどういう理由があるのかよく分からない.


指標表

 まとめよう(すぐ上にあるのを繋げるだけだが). ちょっと列を入れ替えて \(PSL(2,13)\) の完全な既約指標は以下のようになる.

\(PSL(2,13)\) の指標表.
\begin{gather}
    \begin{array}{|c|ccccccccc|}\hline
     \mbox{共役類}&1A_1 &  84A_{13} & 84B_{13}  & 156A_7  & 156B_7 & 156C_7&91A_2 & 182A_6  & 182A_3\\
     \hline
     {\bf 1}        & 1  &       1&1       & 1 & 1 &  1& 1 &  1 &  1 \\ \hline
    {\bf 7I}        & 7  & -\alpha& -\beta & 0 & 0 &  0&-1 &  -1 & 1 \\ \hline 
    {\bf 7I\!I}     & 7  & -\beta& -\alpha & 0 & 0 &  0&-1 &  -1 & 1 \\ \hline
    {\bf 12I}       & 12 &      -1& -1     &-u &-w & -v& 0 &  0 &  0 \\ \hline 
    {\bf 12I\!I}    & 12 &      -1& -1     &-v &-u & -w& 0 &  0 &  0 \\ \hline 
    {\bf 12I\!I\!I} & 12 &      -1& -1     &-w &-v & -u& 0 &  0 &  0 \\ \hline 
    {\bf 13}        & 13 &       0& 0      &-1 &-1 & -1& 1 &  1 & 1  \\ \hline
    {\bf 14I}       &14  &       1& 1      & 0 & 0 &  0&-2 &  1 & -1  \\ \hline
    {\bf 14I\!I}    &14  &       1& 1      & 0 & 0 &  0&2  & -1 & -1 \\ \hline
    \end{array}\\
    \alpha =\frac{-1+\sqrt{13}}{2},\ \ \ \beta =\frac{-1-\sqrt{13}}{2},\\
    u = \tau+\tau^6 = 2\cos\frac{2\pi}{7},\ \ \ 
    v = \tau^2+\tau^5 = 2\cos\frac{4\pi}{7},\ \ \ 
    w = \tau^4+\tau^5 = 2\cos\frac{8\pi}{7}.
\end{gather}

 この指標表を見ると13次対称群への埋め込みが存在しないことは明らか. というのも, 13次対称群への埋め込みによって指標がすべて\(-1\)以上の整数になる12次元表現が得られるが, そのような表現は自明な表現以外に存在しないため矛盾するから.


まとめと課題

 本記事ではまず \(PSL(2,q)\) の部分群の構造を見た. 指数 \(q\) 以下の部分群が \(q=2,3,5,7,9,11\) の例外を除いて存在しないことが, \(q\) 点以下への推移的な作用の非存在の理由であった.
 続いて誘導表現によって\(PSL(2,13)\) の14次元既約指標1つと12次元既約指標3つを得た.

 既約指標を完成させたのはいい. しかし「指標表手作り体験記」と言いつつ既約表現の具体的な構成にこだわっていた今までの方針からすると12次元表現では実現できないまま残ってしまったことが非常に不本意.

 振り返ってみると, 今まで向き合ってきた \(PSL(2,q)\) の \(q-1\) 次元既約表現の構成は その特殊性に頼ったものだった. \(q=5,7,11\) では \(q\) 次対称群への「例外的な埋め込み」から. 鏡映群の部分群として実現したことになる. \(q=9\) の場合(つまり6次交代群)にはややアクロバティックで, ヴァレンティナ―群という \(SU(3)\) の部分群からの随伴表現として得た. このヴァレンティナ―群はまた複素鏡映群である.

\(PSL(2,5)\cong Alt(5) \cong \mathcal{I}\)
球面調和関数で正20面体をつくる - Shironetsu Blog

\(PSL(2,7)\)
PSL(2,7)指標表手作り体験記(2)――ファノ平面・GL(3,2)・四元数・正8面体 - Shironetsu Blog

\(PSL(2,9)\cong Alt(6)\)
ヴァレンティナー群と6次交代群の8次元表現 - Shironetsu Blog

\(PSL(2,11)\)
PSL(2,11)指標表手作り体験記――Paley biplaneと正20面体 - Shironetsu Blog

 指標表を得ることと既約表現の構成の間の隔たりは大きい. どんな幾何学によって既約表現を実際に作ることができるのだろう?

 ほとんどの素数 \(p\) で \(PSL(2,p)\) が指数 \(p\)の部分群を持たないことの簡単な証明も知りたいところ.

リファレンス

[1] 鈴木通夫, 『群論』(上), 1977, 岩波書店, pp.394-398.

[2] Conway, J. H., Sloane, N., J., A., 1988, "Sphere Packings, Lattices and Groups", Springer-Verlag.

[3] Huppert, B., 1967, "Endliche Gruppen I", Springer-Verlag, p.214.
文献[2]p.268で引用されているがドイツ語なので翻訳にかけないと読めない.

[4] group theory - Reference for the subgroup structure of PSL(2,q)
group theory - Reference for the subgroup structure of $PSL(2,q)$ - Mathematics Stack Exchange
ドイツ語文献[3]で困っている質問者がいた.

PSL(2,13)指標表手作り体験記(1)――G2の有限部分群

イントロ:G2の有限部分群

 PSL(2,13)は例外型リー群\(G_2\)の有限部分群である.

 本記事はこの衝撃的な事実を確かめることを主目的とする.
 自分はこれを論文[1]で知った. そこでは複素化された\(G_2(\mathbb{C})\)の有限部分群を調べた論文[2]をもとに\(G_2\)の有限部分群が表にまとめられている.

\begin{align}
\begin{array}{|c|c|c|} \hline
\mbox{部分群}\,\Gamma \in G_2 & \mbox{タイプ} & |\Gamma| \\ \hline \hline
SU(2)\times SU(2), SU(3)\mbox{の有限部分群} & - & -\\ \hline
PSL(2,7) \cong GL(3,2) \cong \Sigma(168) \in SU(3) & {\rm I} & 168\\ \hline
PSL(2,7) \rtimes \mathbb{Z}_2^3 & {\rm I} & 1344 \\ \hline
PGL(2,7) & {\rm P} & 336\\ \hline
PSL(2,8) & {\rm P} & 504\\ \hline 
PSL(2,13) & {\rm P} & 1092\\ \hline
PU(3,3) \cong G_2(2)' & {\rm P} & 6048\\ \hline
G_2(2) & {\rm P} & 12096\\ \hline
\end{array}
\end{align}
表:\(G_2\)の有限部分群.

「タイプ」のPとIの記号はprimitive(P)とimprimitive(I)を意味する. それぞれ\(G_2\)の7次元表現への埋め込みが可約か既約かに対応.

 いずれは\(PSL(2,8)\)や\(G_2(2)\)も調べたいがまずは\(PSL(2,13)\). 7次元既約表現があることは\(PSL(2,p)\)の一般論から分かる. そしてたぶん実表現であることも. \(SO(7)\)に入るならいっそのこと\(G_2\)に入っていてくれたらいいな……と期待してしまう. そしてその通りなのである. すごい.

 なお本記事との直接的なつながりはないが以下の記事の記法をいくつか引き続き用いた.
PSL(2,11)指標表手作り体験記――Paley biplaneと正20面体 - Shironetsu Blog


PSL(2,13):基本的性質と13次元既約表現

共役類

前回の記事の記法を踏襲して, \(PSL(2,13)\)の9つある共役類に以下の記号を与える.
\begin{align}
\begin{array}{|c|c|c|c|}\hline
\mbox{共役類}&\mbox{代表元} & \mbox{大きさ} &\mbox{位数} \\ \hline
1A_1&\begin{bmatrix}
1 & 0\\
0 & 1
\end{bmatrix}
& 1 & 1 \\ \hline
91A_2&\begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} =t
& 91 & 2 \\ \hline
182A_3&\begin{bmatrix}
1 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} = st
& 182 & 3 \\ \hline
84A_{13}&\begin{bmatrix}
1 & 1\\
0 & 1
\end{bmatrix} = s
& 84 & 13 \\ \hline
84B_{13}&\begin{bmatrix}
1 & 2\\
0 & 1
\end{bmatrix} = s^2
& 84 & 13 \\ \hline
156A_7&\begin{bmatrix}
3 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} = s^3t
& 156 & 7 \\ \hline
182A_6&\begin{bmatrix}
4 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} = s^4t
& 182 & 6 \\ \hline
156B_7&\begin{bmatrix}
5 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} = s^5t
& 156 & 7 \\ \hline
156C_7&\begin{bmatrix}
6 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} = s^6t
& 156 & 7 \\ \hline
\end{array}
\end{align}
合わせて位数は
\begin{align}
|PSL(2,13)|=1092.
\end{align}

置換表現と13次元既約表現

 共役類の各代表元の, \(P^1(\mathbb{F}_{13})=\mathbb{F}_{13}\cup\{\infty\}\)の14点への作用は以下の通り.
\begin{align}
PSL(2,13) &\hookrightarrow Sym(13)\\
\begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} &\mapsto (0\ \infty)(1\ 12)(2\ 6)(3\ 4)(7\ 11)(9\ 10)\\
\begin{bmatrix}
1 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} &\mapsto (0\ \infty\ 1)(2\ 7\ 12)(3\ 5\ 6)(8\ 9\ 11)\\
\begin{bmatrix}
1 & 1\\
0 & 1
\end{bmatrix} &\mapsto (0\ 1\ 2\ 3\ 4\ 5\ 6\ 7\ 8\ 9\ 10\ 11\ 12)\\
\begin{bmatrix}
1 & 2\\
0 & 1
\end{bmatrix} &\mapsto (0\ 2\ 4\ 6\ 8\ 10\ 12\ 1\ 3\ 5\ 7\ 9\ 11)\\
\begin{bmatrix}
3 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} &\mapsto (0\ \infty\ 3\ 7\ 1\ 2\ 9)(4\ 6\ 5\ 8\ 11\ 10\ 12)\\
\begin{bmatrix}
4 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} &\mapsto (0\ \infty\ 4\ 7\ 2\ 10)(1\ 3\ 8\ 12\ 5\ 9)\\
\begin{bmatrix}
5 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} &\mapsto (0\ \infty\ 5\ 10\ 1\ 4\ 8)(2\ 11\ 12\ 6\ 7\ 3\ 9)\\
\begin{bmatrix}
6 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} &\mapsto (0\ \infty\ 6\ 8\ 1\ 5\ 11)(2\ 12\ 7\ 4\ 9\ 3\ 10)
\end{align}
これで13次元表現の指標が得られる.
\begin{align}
\begin{array}{|c|ccccccccc|}\hline
\mbox{共役類}&1A_1 & 91A_2 & 182A_3 & 84A_{13} & 84B_{13} & 156A_7 & 182A_6 & 156B_7 & 156C_7\\
\hline
\mbox{置換の型} &
\lbrack 1^{14}\rbrack &
\lbrack 1^22^6\rbrack &
\lbrack 1^23^4\rbrack &
\lbrack 1^113^1\rbrack &
\lbrack 1^113^1\rbrack &
\lbrack 7^2\rbrack&
\lbrack 1^26^2\rbrack&
\lbrack 7^2\rbrack&
\lbrack 7^2\rbrack \\ \hline
\mbox{指標}&13 & 1 & 1 & 0 & 0 & -1 & 1 & -1 & -1 \\ \hline
\end{array}
\end{align}


7次元既約表現とG2

 \(PSL(2,13)\)は7次元既約表現をもつ. どうやって作ろう. \(PSL(2,p)\)の\((p\pm 1)/2\)次元既約表現の構成に関する一般論がありそうなものだが, これを自分は知らない. \(4n+1\)型素数と\(4n+3\)型素数では様子が大きく異なるため\(PSL(2,7),\ PSL(2,11)\)でのやり方はそのまま通じないだろう. そこで\(PSL(2,5)\)の3次元既約表現, すなわち正20面体群を参考に試行錯誤することでなんとか次の表現を見つけ出した.
\begin{align}
s = \begin{bmatrix}
1 & 1\\
0 & 1
\end{bmatrix}
&\mapsto
\frac{1}{2}\begin{pmatrix}
b & . & . & -u & . & . & .\\
. & d & . & . & v & . & .\\
. & . & f & . & . & -w & .\\
u & . & . & b & . & . & .\\
. & -v & . & . & d & . & .\\
. & . & w & . & . & f & .\\
. & . & . & . & . & . & 2
\end{pmatrix}
=:S \\
t = \begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
&\mapsto
\frac{-1}{\sqrt{13}}
\begin{pmatrix}
a & b & c & d & e & f & \sqrt{2}\\
b & c & d & e & f & a & \sqrt{2}\\
c & d & e & f & a & b & \sqrt{2}\\
d & e & f & a & b & c & \sqrt{2}\\
e & f & a & b & c & d & \sqrt{2}\\
f & a & b & c & d & e & \sqrt{2}\\
\sqrt{2} & \sqrt{2} &\sqrt{2} &\sqrt{2} &\sqrt{2} &\sqrt{2} & 1
\end{pmatrix}
=:T
\end{align}
ただし,
\begin{gather}
\zeta = \exp\frac{2\pi\sqrt{-1}}{13},\\
a = \zeta + \zeta^{12},\ \ \
b = \zeta^6 + \zeta^7,\ \ \
c = \zeta^3+\zeta^{10},\\
d = \zeta^5 + \zeta^8,\ \ \
e = \zeta^4 + \zeta^9,\ \ \
f = \zeta^2 + \zeta^{11},\\
u = \frac{\zeta^6-\zeta^7}{\sqrt{-1}},\ \ \
v = \frac{\zeta^5-\zeta^8}{\sqrt{-1}},\ \ \
w = \frac{\zeta^2-\zeta^{11}}{\sqrt{-1}}.
\end{gather}
また, ドット(.)は0を意味する. このようにとると,
\begin{align}
S^{13} = T^2 = (TS)^3 = (S^2TS^7T)^3 = {\bf 1}
\end{align}
が満たされ, \(PSL(2,13)\)の表現となることが分かる.

 指標は次のように書ける.
\begin{gather}
\begin{array}{|c|ccccccccc|}\hline
\mbox{共役類}&1A_1 & 91A_2 & 182A_3 & 84A_{13} & 84B_{13} & 156A_7 & 182A_6 & 156B_7 & 156C_7\\
\hline
\mbox{指標}&7 & -1 & 1 & -\alpha & -\beta & 0 & -1 & 0 & 0\\ \hline
\end{array}\\
\alpha = \zeta + \zeta^3+\zeta^4+\zeta^9+\zeta^{10} + \zeta^{12}=\frac{-1+\sqrt{13}}{2}\\
\beta = \zeta^2+\zeta^5+\zeta^6+\zeta^7+\zeta^8+\zeta^{11}=\frac{-1-\sqrt{13}}{2}
\end{gather}
また, 共役類\(84A_{13}\)と\(84B_{13}\)を外部自己同型で入れ替えると同値でない既約表現になる.
\begin{gather}
\begin{array}{|c|ccccccccc|}\hline
\mbox{共役類}&1A_1 & 91A_2 & 182A_3 & 84A_{13} & 84B_{13} & 156A_7 & 182A_6 & 156B_7 & 156C_7\\
\hline
\mbox{指標}&7 & -1 & 1 & -\beta & -\alpha & 0 & -1 & 0 & 0\\ \hline
\end{array}
\end{gather}

 さて, 見ての通り, 行列\(S,T\)はともに成分がすべて実で, 特に行列式が1の直交行列となっている.
従って\(PSL(2,13)\subset SO(7)\)は明らか. ところがその間にもうひとつリー群がいて,
\begin{align}
PSL(2,13) \subset G_2 \subset SO(7)
\end{align}
となっているのだ.

八元数

 八元数\(\mathbb{O}\)の\(\mathbb{R}-\)基底と積を以下の通り定義する[3].

\begin{gather}
    \mathbb{O} = \left\{ \sum_{i=0}^7 x_ie_i \mid x_i\in \mathbb{R}\right\}\\
    e_0e_i = e_ie_0 = e_i,\ \ \ i=0,\cdots,7\\
    e_ie_j = -e_je_i = e_k\\
    (i,j,k)\in \left\{(1,2,3),(3,5,6),(6,7,1),(1,4,5),(3,4,7),(6,4,2),(2,5,7)\right\}
\end{gather}

f:id:shironetsu:20190322063723p:plain:w600
ファノ平面に配置した添え字. 矢印の順にサイクリックに読む.
\(e_0\)は\(1\)と同一視して実部, 他の7次元分を虚部と呼ぶ. 共役は,

\begin{align}
    x=x_0e_0 + \sum_{i=1}^7 x_ie_i \Rightarrow \overline{x} = x_0e_0 - \sum_{i=1}^7 x_ie_i.
\end{align}

内積は,
\begin{align}
(x,y) = {\rm Re}(\overline{x}y)
= \frac{1}{2}(\overline{x}y+\overline{y}x)
=\sum_{i=0}^7 x_iy_i
\end{align}
によって定義される.

例外型リー群 G2

 例外型リー群 \(G_2\)は八元数の自己同型群となる正則線形変換の全体として定義される.
\begin{align}
G_2 = {\rm Aut}(\mathbb{O})
= \{A \mid \forall x,y \in \mathbb{O},\ A(x)A(y) = A(xy)\}
\end{align}
実部\(e_0\)への作用について,
\begin{align}
A(e_0)A(x) = A(e_0x) = A(x)
\end{align}
がすべての\(x\in\mathbb{O}\)で成り立たなくてはならないことから,\(A(e_0)=e_0\). つまり実部を変えない. このことから, 共役と可換であることも分かる:\(\overline{A(x)} = A(\overline{x})\). また,

\begin{align}
    (A(x),A(y)) = {\rm Re}(\overline{A(x)}A(y)) = {\rm Re}(A(\overline{x}y)) = {\rm Re}(\overline{x}y) = (x,y)
\end{align}

から, 内積も変えない. 従って, 7次元の虚部に対する直交変換であることが分かる. 加えて行列式が1であることを事実として認めると*1 , \(G_2\subset SO(7)\)が分かる.

 たとえば, 基底に対して以下のように定義される変換は八元数の積を保つので\(G_2\)の元.
\begin{align}
A(e_i) \mapsto \left\{
\begin{array}{cc}
-e_2 & i=1 \\
e_1 & i=2 \\
e_6 & i=5\\
-e_5 & i=6\\
e_i & {\rm else}
\end{array}
\right.
\end{align}
実際,
\begin{align}
A(e_1)A(e_2) &= -e_2e_1 = e_3 = A(e_3)=A(e_1e_2)\\
A(e_1)A(e_4) &= -e_2e_4 = e_6 = A(e_5)=A(e_1e_4)\\
A(e_4)A(e_5) &= e_4e_6 = -e_2 = A(e_1) = A(e_4e_5)
\end{align}
などが成り立つ. 「などが成り立つ」なんて言ったが, 実際ある行列式1の直交変換が八元数の積を保つかどうかチェックしようとすると, 基底のすべての組み合わせ21通りをチェックするしかない. しかも, \(SO(7)\)上の行列のなす群がたとえ\(G_2\)の部分群であったとしても, 「いまの八元数の積の定義」での\(G_2\)に入るとは限らない. たとえば, 次に挙げる変換\(A'\)は明らかに上の\(A\)と\(SO(7)\)上共役だが, 積は保たない.
\begin{gather}
A': e_i\mapsto = \left\{
\begin{array}{cc}
-e_2 & i=1 \\
e_1 & i=2 \\
e_5 & i=4\\
-e_4 & i=5\\
e_i & {\rm else}
\end{array}
\right.\\
A'(e_1)A'(e_4) = -e_2e_5 = -e_7 \neq A'(e_1e_4) = -e_4\\
\Rightarrow A' \not\in G_2
\end{gather}
そして残念ながら上で定義した行列\(S,T\)もそのままでは\(G_2\)の元とはならない.

相似変換

 ではどうすれば\(G_2\)の元に相似変換できるか? やはり試行錯誤するしかないが, \(S,T\)を非常に整った形で実現したことのご利益がここに現れる.
 
 まず\(S\)を見る. 三角関数を使って表すとこうなる.
\begin{align}
S = \begin{pmatrix}
\cos 6\delta & . & . & -\sin6\delta & . & . & .\\
. & \cos5\delta & . & . & \sin5\delta & . & .\\
. & . & \cos2\delta & . & . & -\sin2\delta & .\\
\sin6\delta & . & . & \cos6\delta & . & . & .\\
. & -\sin5\delta & . & . & \cos5\delta & . & .\\
. & . & \sin2\delta & . & . & \cos2\delta & .\\
. & . & . & . & . & . & 1
\end{pmatrix},\ \ \
\delta = \frac{2\pi}{13}.
\end{align}
3つの2×2回転行列の直和と不変な1次元. この不変な第7成分が\(e_7\)に対応するとしよう. 八元数の\((1,6,7),(3,4,7),(2,5,7)\)でそれぞれ四元数の虚部をなすので, \(e_7\)だけ固定して他2つを回転させる, というのは少なくとも独立には四元数の計算規則を守る. 頑張って計算すると次の変換が積を保つことが分かる.
\begin{align}
\begin{pmatrix}
e_1\\
e_5\\
e_3\\
e_6\\
e_2\\
e_4\\
e_7
\end{pmatrix}
\mapsto
S \begin{pmatrix}
e_1\\
e_5\\
e_3\\
e_6\\
e_2\\
e_4\\
e_7
\end{pmatrix}
=
\begin{pmatrix}
\cos6\delta\,e_1 -\sin6\delta\,e_6\\
\cos5\delta\,e_5 + \sin5\delta\,e_2\\
\cos2\delta\,e_3 - \sin6\delta\,e_4\\
\sin6\delta\,e_1 + \cos6\delta\,e_6\\
-\sin5\delta\,e_5 + \cos5\delta\,e_2\\
\sin2\delta\,e_3 + \cos2\delta\,e_4\\
e_7
\end{pmatrix}
=:\begin{pmatrix}
e_1'\\
e_5'\\
e_3'\\
e_6'\\
e_2'\\
e_4'\\
e_7'
\end{pmatrix}
\end{align}
たとえば,
\begin{align}
e_1'e_2' &= (\cos6\delta\,e_1 -\sin6\delta\,e_6)(-\sin5\delta\,e_5 + \cos5\delta\,e_2)\\
&=-\cos6\delta\sin5\delta e_1e_5 -\sin6\delta \cos5\delta e_6e_2\\
&\ \ \ +\cos6\delta \cos5\delta e_1e_2 +\sin6\delta \sin5\delta e_6e_5\\
&=-\cos6\delta\sin5\delta (-e4) -\sin6\delta \cos5\delta (-e_4)\\
&\ \ \ +\cos6\delta \cos5\delta e_3 +\sin6\delta \sin5\delta (-e_3)\\
&= \sin 11\delta\,e_4 +\cos 11\delta\,e_3\\
&= \cos 2\delta\,e_3 -\sin2\delta\,e_4\\
&= e_3'.
\end{align}
\(S\)が順序を入れ替えるだけで八元数の積を保てるようになることが分かった. しかし\(T\)はまだだめ. できれば\(S\)は崩したくない. そこで\(S\)と交換する行列による共役変換を試す.

 \(T\)を見る.
\begin{align}
T = \frac{-1}{\sqrt{13}}
\begin{pmatrix}
a & b & c & d & e & f & \sqrt{2}\\
b & c & d & e & f & a & \sqrt{2}\\
c & d & e & f & a & b & \sqrt{2}\\
d & e & f & a & b & c & \sqrt{2}\\
e & f & a & b & c & d & \sqrt{2}\\
f & a & b & c & d & e & \sqrt{2}\\
\sqrt{2} & \sqrt{2} &\sqrt{2} &\sqrt{2} &\sqrt{2} &\sqrt{2} & 1
\end{pmatrix}
\end{align}
\(\sqrt{2}\)がかたまっているのが嬉しくない. そこで次の行列\(P\)によって相似変換する.
\begin{align}
P = \frac{1}{\sqrt{2}}
\begin{pmatrix}
1 & . & . & 1 & . & . & .\\
. & 1 & . & . & -1 & . & .\\
.& . & 1 & . & . & -1 & . \\
-1 & . & . & 1 & . & . & .\\
. & 1 & . & . & 1 & . & .\\
.& . & 1 & . & . & 1 & . \\
. & . & . & . & . & . & \sqrt{2}
\end{pmatrix}
\end{align}
\(P\)は\(S\)と交換する. 一方,
\begin{align}
PTP^{-1}
&=\frac{1}{\sqrt{13}}
\begin{pmatrix}
-a-d & . & . & . & -b-e & -c-f & -2\\
. & -c+f & a-d & b-e & . & . & . \\
. & a-d & b-e & c-f & . & . & . \\
. & b-e & c-f & -a+d & . & . & .\\
-b-e & . & . & . & -c-f & -a-d & -2\\
-c-f & . & . & . & -a-d & -b-e & -2\\
-2 & . & . & . & -2 & -2 & -1
\end{pmatrix}
=:T'
\end{align}
\(\sqrt{2}\)が消えた. この新たな行列\(T'\)による変換が八元数の積を保つ.
\begin{align}
\begin{pmatrix}
e_1\\
e_5\\
e_3\\
e_6\\
e_2\\
e_4\\
e_7
\end{pmatrix}
\mapsto
T' \begin{pmatrix}
e_1\\
e_5\\
e_3\\
e_6\\
e_2\\
e_4\\
e_7
\end{pmatrix}
\end{align}
たとえば...いや, ちょっと手計算する気がおきない.

 整理するため基底の順序を取り換えよう. 次の置換行列\(O\)を用意しておいて,
\begin{align}
O =
\begin{pmatrix}
1 & . & . & . & . & . & . \\
. & . & . & . & 1 & . & . \\
. & . & 1 & . & . & . & . \\
. & . & . & . & . & 1 & . \\
. & 1 & . & . & . & . & . \\
. & . & . & 1 & . & . & . \\
. & . & . & . & . & . & 1
\end{pmatrix},
\end{align}
新たに\(\mathcal{S},\mathcal{T}\)を定義する.
\begin{align}
\mathcal{S} &:= OPSP^{-1}O^{-1}\\
&=
\begin{pmatrix}
\cos6\delta & . & . & . & . & -\sin6\delta\\
. & \cos5\delta & . & . & -\sin5\delta & . & . \\
. & . & \cos2\delta & -\sin2\delta & . & . & . \\
. & . &\sin2\delta & \cos2\delta & . & . & . \\
. & \sin5\delta & . & . & \cos5\delta & . & . \\
\sin6\delta & . & . & . & . & \cos6\delta & . \\
. & . & . & . & . & . & 1
\end{pmatrix}\\
\mathcal{T} &:= OPTP^{-1}O^{-1}\\
&=\frac{1}{\sqrt{13}}
\begin{pmatrix}
-a-d & -b-e & . & -c-f & . & . & -2\\
-b-e & -c-f & . & -a-d & . & . & -2\\
. & . & b-e & . & a-d & c-f & .\\
-c-f & -a-d & . & -b-e & . & . & -2\\
. & . & a-d & . & -c+f & b-e & .\\
. & . & c-f & . & b-e & -a+d & .\\
-2 & -2 & . & -2 & . & . & -1
\end{pmatrix}
\end{align}
すると, これらによる線形変換:
\begin{align}
\begin{pmatrix}
e_1\\
e_2\\
e_3\\
e_4\\
e_5\\
e_6\\
e_7
\end{pmatrix}
\mapsto
{\mathcal S} \begin{pmatrix}
e_1\\
e_2\\
e_3\\
e_4\\
e_5\\
e_6\\
e_7
\end{pmatrix},\ \ \
\begin{pmatrix}
e_1\\
e_2\\
e_3\\
e_4\\
e_5\\
e_6\\
e_7
\end{pmatrix}
\mapsto
{\mathcal T} \begin{pmatrix}
e_1\\
e_2\\
e_3\\
e_4\\
e_5\\
e_6\\
e_7
\end{pmatrix}
\end{align}
は\(PSL(2,13)\)の生成元であり, \(G_2\)の元となるのである.

数値実験

 ほんとうに八元数の積を保つのか? 数値的に見てみるまでは安心できない. 実験してみよう. Pythonで.

from math import pi,sqrt,cos,sin
from cmath import exp
import numpy as np

八元数の積を定義. インデックスがゼロ始まりのため1つずれていることに注意.

def octo_prod(u,v):
       return np.array([u[1]*v[2]-u[2]*v[1] + u[3]*v[4]-u[4]*v[3] + u[5]*v[6]-u[6]*v[5],
                        u[2]*v[0]-u[0]*v[2] + u[5]*v[3]-u[3]*v[5] + u[4]*v[6]-u[6]*v[4],
                        u[0]*v[1]-u[1]*v[0] + u[4]*v[5]-u[5]*v[4] + u[3]*v[6]-u[6]*v[3],
                        u[6]*v[2]-u[2]*v[6] + u[4]*v[0]-u[0]*v[4] + u[1]*v[5]-u[5]*v[1],
                        u[0]*v[3]-u[3]*v[0] + u[5]*v[2]-u[2]*v[5] + u[6]*v[1]-u[1]*v[6],
                        u[6]*v[0]-u[0]*v[6] + u[3]*v[1]-u[1]*v[3] + u[2]*v[4]-u[4]*v[2],
                        u[0]*v[5]-u[5]*v[0] + u[2]*v[3]-u[3]*v[2] + u[1]*v[4]-u[4]*v[1]])

諸定数を設定. qが \deltaに, zが\zetaに対応.

q = 2*pi/13.0
z = exp(2j*pi/13.0)
a = z + z**12
b = z**6 + z**7
c = z**3 + z**10
d = z**5 + z**8
e = z**4 + z**9
f = z**2 + z**11

ふたつの行列を作る.

S = np.array([[cos(6*q),0,0,0,0,-sin(6*q),0],
              [0,cos(5*q),0,0,-sin(5*q),0,0],
              [0,0,cos(2*q),-sin(2*q),0,0,0],
              [0,0,sin(2*q),cos(2*q),0,0,0],
              [0,sin(5*q),0,0,cos(5*q),0,0],
              [sin(6*q),0,0,0,0,cos(6*q),0],
              [0,0,0,0,0,0,1]])

T = 1/sqrt(13)* \
    np.array([[-a-d,-b-e,0,-c-f,0,0,-2],
              [-b-e,-c-f,0,-a-d,0,0,-2],
              [0,0,b-e,0,a-d,c-f,0],
              [-c-f,-a-d,0,-b-e,0,0,-2],
              [0,0,a-d,0,-c+f,b-e,0],
              [0,0,c-f,0,b-e,-a+d,0],
              [-2,-2,0,-2,0,0,-1]])

ランダムにふたつの7次元ベクトルu,vをとる.

u = np.random.randn(7)
array([-1.46835478, -1.03908311,  0.65394529, -2.05879815, -0.11483368,
       -0.08945579,  0.07377853])
v = np.random.randn(7)
array([-1.57807514, -0.99362126, -0.14204158,  0.10899408, -2.31439725,
        1.05387586, -0.90875485])

Tで変換してから積を取ったとき.

octo_prod(T@u,T@v)

実行結果

array([ 1.70133359-5.48420585e-16j,  3.72400204-1.68083493e-15j,
       -4.88415011+1.50349806e-15j, -5.23957124+1.56565867e-15j,
        0.24141075+3.80155534e-16j,  2.15323515-9.12489113e-16j,
       -1.74509785+9.72757204e-16j])

積を取ってからTで変換したとき.

T@octo_prod(u,v)

実行結果

array([ 1.70133359-7.60250963e-16j,  3.72400204-1.41564237e-15j,
       -4.88415011+1.62978585e-15j, -5.23957124+2.08488620e-15j,
        0.24141075-1.95692483e-16j,  2.15323515-8.64069962e-16j,
       -1.74509785+0.00000000e+00j])

(厳密なことをいうと\(\mathcal{S,T}\)は既定の変換行列としたので成分はその転置で変換するが, 群をなすから同じこと.)
見たところ数値誤差の範囲で一致している. 安心. Sでやってもやはり一致する. どうやら正しいところに着地していたようだ.

 本当に\(PSL(2,13)\)は\(G_2\)の部分群なのだ.


14次元既約表現と随伴表現

 リー環\(\frak{g}_2\)の次元は14である. したがって随伴表現から14次元表現が得られる.
 
 \({\frak g}_2\)の元は以下のように与えられる[3].
 
 まず, \({\frak b}_3\)(\(SO(7)\)のリー環)の\(\mathbb{R}\)-基G_{ij}\ (1\leq i < j \leq 7)をとる.
\begin{align}
G_{ij}e_k = \left\{\begin{array}{cc}
-e_j& k=i \\
e_i & k=j \\
0 & {\rm else}
\end{array}\right.
\end{align}
すると, \({\frak g}_2\)の元は次の形の元たちの和で表される.
\begin{gather}
\begin{array}{r}
\lambda G_{23} + \mu G_{45} + \nu G_{67},\\
-\lambda G_{13} - \mu G_{46} + \nu G_{57},\\
\lambda G_{12} + \mu G_{47} + \nu G_{56},\\
-\lambda G_{15} + \mu G_{26} - \nu G_{37},\\
\lambda G_{14} - \mu G_{27} - \nu G_{36},\\
-\lambda G_{17} - \mu G_{24} + \nu G_{35},\\
\lambda G_{16} + \mu G_{25} + \nu G_{34},
\end{array}\\
\lambda,\mu,\nu \in \mathbb{R},\ \ \lambda+\mu+\nu = 0
\end{gather}
(\lambda,\mu,\nu)としてはたとえば,
\begin{align}
(\lambda_1,\mu_1,\nu_1)&=\left(\sqrt{\frac{1}{2}},-\sqrt{\frac{1}{2}},0\right),\\
(\lambda_2,\mu_2,\nu_2)&=\left(\sqrt{\frac{1}{6}},\sqrt{\frac{1}{6}},-\sqrt{\frac{2}{3}}\right)
\end{align}
の2組を取ればよい. 内積
\begin{align}
(X,Y) = \frac{-1}{2}{\rm tr}(XY)
\end{align}
で定義しておくと\(G_{ij}\)は正規直交基底をなす. したがって, 次の\(K_{i} i=1,\cdots,14\)が\({\frak g}_2\)の\(\mathbb{R}\)-基をなす.
\begin{gather}
\begin{array}{ll}
K_1 = \lambda_1 G_{23} + \mu_1 G_{45} + \nu_1 G_{67}, &
K_8 = \lambda_2 G_{23} + \mu_2 G_{45} + \nu_2 G_{67},\\
K_2 = -\lambda_1 G_{13} - \mu_1 G_{46} + \nu_1 G_{57},&
K_9 = -\lambda_2 G_{13} - \mu_2 G_{46} + \nu_2 G_{57},\\
K_3 = \lambda_1 G_{12} + \mu_1 G_{47} + \nu_1 G_{56}, &
K_{10} = \lambda_2 G_{12} + \mu_2 G_{47} + \nu_2 G_{56},\\
K_4 = -\lambda_1 G_{15} + \mu_1 G_{26} - \nu_1 G_{37}, &
K_{11} = -\lambda_2 G_{15} + \mu_2 G_{26} - \nu_2 G_{37},\\
K_5 = \lambda_1 G_{14} - \mu_1 G_{27} - \nu_1 G_{36}, &
K_{12} = \lambda_2 G_{14} - \mu_2 G_{27} - \nu_2 G_{36}, \\
K_6 = -\lambda_1 G_{17} - \mu_1 G_{24} + \nu_1 G_{35}, &
K_{13} = -\lambda_2 G_{17} - \mu_2 G_{24} + \nu_2 G_{35}, \\
K_7 = \lambda_1 G_{16} + \mu_1 G_{25} + \nu_1 G_{34}, &
K_{14} = \lambda_2 G_{16} + \mu_2 G_{25} + \nu_2 G_{34}.
\end{array}\\
\end{gather}
\({\frak g_2}\)上での随伴表現\(\rho\)を
\begin{gather}
\rho(A) : D \mapsto ADA^{-1}\\
A\in G_2,\ D \in {\frak g}_2
\end{gather}
によって定義すると, 指標\(\chi\)は
\begin{align}
\chi(A) = \sum_{i=1}^{14} (\rho(A)K_i,K_i)
\end{align}
から決められる. これを計算して, 以下の\(PSL(2,13)\)の14次元表現の既約指標を得る.
\begin{gather}
\begin{array}{|c|ccccccccc|}\hline
\mbox{共役類}&1A_1 & 91A_2 & 182A_3 & 84A_{13} & 84B_{13} & 156A_7 & 182A_6 & 156B_7 & 156C_7\\
\hline
\mbox{指標}&14 & -2 & -1 & 1 & 1 & 0 & 1 & 0 & 0 \\ \hline
\end{array}
\end{gather}
14次元既約指標はもうひとつあって, どちらも指数14の極大部分群の1次元表現からの誘導表現として得られるが, \(G_2\)の随伴表現として出てくるのはこちらのほうなのだ.


まとめ

 \(PSL(2,13)\)の7次元既約表現を具体的に構成することで, この群が例外型リー群\(G_2\)の部分群であることを確かめた.

 リー群の有限部分群の分類はそもそもかなり難しい問題らしい[4]. それでも例外型リー群\(G_2,F_4,E_6,E_7,E_8\)の有限部分群はいろいろ調べられていて, 交代群だったり\(PSL(2,q)\)だったりがたくさん出てくる[5-7]. どういう原理があるのだろう?


リファレンス

[1] Evans, David Emrys and Pugh, Mathew J. 2018. Spectral measures for G2 II: finite subgroups. arXiv e-prints , 1404.1866.
https://arxiv.org/abs/1404.1866

[2] Arjeh M. Cohen & David B. Wales (1983) Finite subgroups of G2(C), Communications in Algebra, 11:4, 441-459.
https://doi.org/10.1080/00927878308822857

[3] 横田一郎, 2013, 『例外型単純リー群』, 現代数学社.
arXivで英語版が公開されている.
Ichiro Yokota, 2009, Exceptional Lie groups, arXiv e-prints, 0902.0431.
https://arxiv.org/abs/0902.0431

[4] Lie 群の有限部分群
http://pantodon.shinshu-u.ac.jp/topology/literature/finite_subgroup_of_Lie_group.html

[5] Cohen, A. M., & Wales, D. B. (1995). Finite simple subgroups of semisimple complex Lie groups : a survey. In W. M. Kantor, & L. Di Martino (Eds.), Groups of Lie Type and their Geometries (Proceedings, Como, Italy, June 14-19, 1993) (pp. 77-96). (London Mathematical Society Lecture Note Series; Vol. 207). Cambridge: Cambridge
University Press.
https://pure.tue.nl/ws/files/2496259/588218.pdf

[6] Arjeh M Cohen , Robert L Griess Jr. & Bert Lisser (1993) The group L(2,61) embeds in t h e Lie group of type E8 , Communications in Algebra, 21:6, 1889-1907.
https://doi.org/10.1080/00927879308824659

[7] Griess Jr, R. L., & Ryba, A. J. (2001). Embeddings ofPSL (2, 41) andPSL (2, 49) inE8 (C). Journal of Symbolic Computation, 31(1-2), 211-227.
https://doi.org/10.1006/jsco.1999.1000

*1:部分群\(SU(3)\)による剰余類が\(S^6\)になるため単連結であることから示されている[3].

PSL(2,11)指標表手作り体験記――Paley biplaneと正20面体

イントロ――ガロアの最後の手紙

 シュヴァリエへ宛てたガロアの最後の手紙[1]. モジュラー方程式との関係から彼が重要視し, 証明なしに与えた命題は現代的なことばで述べるとこうであった.
 
素数\(p\)に対して, \(PSL(2,p)\)が\(p\)点への忠実かつ推移的な作用を持つのは\(p=5,7,11\)のときに限られる.
 
 それぞれ正4面体群, 正8面体群, 正20面体群を部分群としてもつことから起こるこの現象. ADE分類, McKay対応の「例外的な三つ組」がここにも現れる.
 本記事では\(PSL(2,7)\)について調べた前回の記事に引き続き, \(PSL(2,11)\)の既約指標を求めつつ, ここで起こっている現象の理解を目標とする.

小さな非可換単純群 - PSL(2,p) - Shironetsu Blog
PSL(2,7)指標表手作り体験記(1) 3,3,8次元既約表現 - Shironetsu Blog
PSL(2,7)指標表手作り体験記(2)――ファノ平面・GL(3,2)・四元数・正8面体 - Shironetsu Blog

 なお, この記事を書くにあたってはKostantによる優れた解説[2]を大いに参考にした.

PSL(2,11):基礎事項

 一般に奇素数\(p\)について\(PSL(2,p)\)の位数は\((p^3-p)/2\). 従って,
\begin{align}
|PSL(2,11)| = 660.
\end{align}
 \(PSL(2,p)\)の共役類は「ほぼ」プラスマイナスを無視したトレースで決まる. 例外はトレースが±2の場合. 単位元のみからなる共役類, 位数\(p\)の元からなる2つの共役類の合わせて3つに分裂する.
 ここで角括弧はプラスマイナスを同一視する意味で用いる.
\begin{align}
\begin{bmatrix}
a & b\\
c & d
\end{bmatrix}
=\left\{
\begin{pmatrix}
a & b\\
c & d
\end{pmatrix},\
\begin{pmatrix}
-a & -b\\
-c & -d
\end{pmatrix}
\right\}\in PSL(2,p).
\end{align}

共役類とその代表元のリストは以下の通り.

\begin{align}
\begin{array}{|c|c|c|c|}\hline
\mbox{共役類}&\mbox{代表元} & \mbox{大きさ} &\mbox{位数} \\ \hline
1A_1&\begin{bmatrix}
1 & 0\\
0 & 1
\end{bmatrix}
& 1 & 1 \\ \hline
55A_2&\begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} =t
& 55 & 2 \\ \hline
110A_3&\begin{bmatrix}
1 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} = st
& 110 & 3 \\ \hline
60A_{11}&\begin{bmatrix}
1 & 1\\
0 & 1
\end{bmatrix} = s
& 60 & 11 \\ \hline
60B_{11}&\begin{bmatrix}
1 & 2\\
0 & 1
\end{bmatrix} = s^2
& 60 & 11 \\ \hline
132A_5&\begin{bmatrix}
3 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} = s^3t
& 132 & 5 \\ \hline
132B_5&\begin{bmatrix}
4 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} = s^4t
& 132 & 5 \\ \hline
110A_6&\begin{bmatrix}
5 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} = s^5t
& 110 & 6 \\ \hline
\end{array}
\end{align}
生成元\(s,t\)によって各代表元がどう表されるかも書いた. \(s\)と\(t\)の表現さえ得られれば全ての指標が分かることになる.


5次元既約表現

 \(PSL(2,7)\)の3次元既約表現を思い出しながら.
 11の平方剰余は1,3,4,5,9. 1の原始11乗根を\zetaとして, 11の平方剰余による\zetaのべき乗の和を\etaとする.

\begin{align}
    \eta = \zeta+\zeta^3+\zeta^4+\zeta^5+\zeta^9.
\end{align}

\(-1\)が平方非剰余であることから,

\begin{align}
    \eta + \overline{\eta} = -1.
\end{align}

\etaの満たす2次方程式は,

\begin{align}
    \eta^2 &= \zeta^2 + \zeta^6+ \zeta^8+\zeta^{10} + \zeta^7\\
            &\hspace{10pt}+2(\zeta^4+\zeta^7+\zeta^9+\zeta^3 + \zeta^5+\zeta^8+\zeta^2+\zeta^6+\zeta + \zeta^{10})\\
            &= (-1-\eta) + 2\cdot(-1)\\
            &=-\eta-3.
\end{align}

これを解くと,

\begin{align}
    \eta = \frac{-1\pm\sqrt{-11}}{2}.
\end{align}

複号はプラスをとることにして, 以下の\(a,b,c,d,e\)を定義する.
\begin{align}
    a = \frac{\zeta-\zeta^{10}}{\sqrt{-11}},\ \ 
    b = \frac{\zeta^4-\zeta^{7}}{\sqrt{-11}},\ \ 
    c = \frac{\zeta^5-\zeta^{6}}{\sqrt{-11}},\ \ 
    d = \frac{\zeta^9-\zeta^{2}}{\sqrt{-11}},\ \ 
    e = \frac{\zeta^3-\zeta^{8}}{\sqrt{-11}}.
\end{align}

すべて実数であることに注意. 順序は,

\begin{align}
    a = \frac{\zeta-\zeta^{-1}}{\sqrt{-11}},\ \ 
    b = \frac{\zeta^{4}-\zeta^{-4}}{\sqrt{-11}},\ \ 
    c = \frac{\zeta^{4^2}-\zeta^{-4^2}}{\sqrt{-11}},\ \ 
    d = \frac{\zeta^{4^3}-\zeta^{-4^3}}{\sqrt{-11}},\ \ 
    e = \frac{\zeta^{4^4}-\zeta^{-4^4}}{\sqrt{-11}}.
\end{align}

から来ている. これらを用いて, 次の5×5行列を定義する.
\begin{align}
T =
\begin{pmatrix}
a & b & c & d & e\\
b & c & d & e & a\\
c & d & e & a & b\\
d & e & a & b & c\\
e & a & b & c & d
\end{pmatrix}.
\end{align}
行・列成分の順序は\(a,b,c,d,e\), 対角成分の順序は\(a,c,e,d,b\)となっていることに気付くだろう. 美しい.
f:id:shironetsu:20190317015733p:plain:w300
 トレース, 行列式はそれぞれ,

\begin{gather}
    {\rm tr}(T) = a+c+e+b+d = \frac{\eta-\overline{\eta}}{\sqrt{-11}}=1,\\
    \det(T) = 5abcde-a^5-b^5-c^5-d^5-e^5 = 1.
\end{gather}

 2乗すると,
\begin{align}
T^2 &=
\begin{pmatrix}
p & q & r & r & q\\
q & p & q & r & r\\
r & q & p & q & r\\
r & r & q & p & q\\
q & r & r & q & p
\end{pmatrix},
\end{align}
ここで,

\begin{align}
    p &= a^2+b^2+c^2+d^2+e^2,\\
    q &= ab+bc+cd+de+ea,\\
    r &= ac+ce+eb+bd+da.
\end{align}

なんとも都合の良いことに, \(p=1,\ q=r=0\)が成り立つ. すなわち,
\begin{align}
T^2 = {\bf 1}.
\end{align}
もうひとつ, 次の対角行列を定義する.
\begin{align}
    S=
    \begin{pmatrix}
        \zeta^5 & 0 & 0 & 0 & 0\\
        0 & \zeta^3 & 0 & 0 & 0\\
        0 & 0 & \zeta^4 & 0 & 0\\
        0 & 0 & 0 & \zeta^9 & 0\\
        0 & 0 & 0 & 0 & \zeta
    \end{pmatrix}
\end{align}

明らかに, \(S^{11} = {\bf 1}.\) そして(数式処理ソフトの力を借りて,
\begin{align}
(TS)^3 = (S^2TS^6T)^3 = {\bf 1}.
\end{align}
 これが何を意味するかというと,
\begin{align}
\langle S,T\rangle\cong PSL(2,11).
\end{align}
つまり\(S,T\)は\(PSL(2,11)\)の5次元表現の生成元[3].
\begin{align}
s= \begin{bmatrix}
1 & 1\\
0 & 1
\end{bmatrix}
\mapsto S,\ \
t=\begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
\mapsto T
\end{align}
によって表現になる. 指標は以下の通り.

\begin{align}
    \begin{array}{|c|cccccccc|}\hline
     \mbox{共役類}&1A_1 & 55A_2 & 110A_3 & 60A_{11} & 60B_{11} & 132A_5 & 132B_5 & 110A_6\\
     \hline
     \mbox{指標}&5 & 1 & -1 & \eta & \overline{\eta} & 0 & 0 & 1 \\ \hline
    \end{array} 
\end{align}

 クラインの4次曲線のように, 4次元複素射影空間\(\mathbb{C}P^4=\{(x_1:x_2:x_3:x_4:x_5)\mid x_1,x_2,x_3,x_4,x_5\in \mathbb{C}\}\)でこの行列による射影変換で不変なものを探すとあっさり見つかって次のように書ける.
\begin{align}
x_1x_2^2+x_2x_3^2+x_3x_4^2+x_4x_5^2+x_5x_1^2=0.
\end{align}
特に, 左辺を\(f({\bf x})=f(x_1,x_2,x_3,x_4,x_5)\)とおくと
\begin{align}
f(S{\bf x})=f(T({\bf x}))=f({\bf x})
\end{align}
が成立して不変式となっている. 何が起こっているのかよく分からないがとにかくそうなっている.

 もうひとつの5次元既約表現は複素共役から得られる. あるいは, PGL(2,11)\backslash PSL(2,11)(行列式が平方非剰余)の元による外部自己同型写像によって\(60A_{11}\)と\(60B_{11}\)を入れ替えても複素共役と同値な表現になる.

 この5次元表現に関しては計算すると確かに表現になっている, 以上のことが言えない. 背景にあるのが何なのか分かっていない.


10次元既約表現その1

 本記事の主目標. \(PSL(2,11)\)は11点に推移的に作用する. 13以上の素数\(p\)で\(PSL(2,p)\)が\(p\)点に推移的に作用することはない. では\(PSL(2,11)\)が11点に推移的に作用できるのはなぜかというと正20面体群と同型な部分群を持つためである.

Paley Biplane

 11の平方剰余(0を除く)の集合を\(a\)とする.法を11として全ての元に1ずつ加えてゆき, 順に\(b,c,\cdots,k\) とする. ただし10はXで表す.
\begin{align}
a &= \{1,3,4,5,9\}\\
b &= \{2,4,5,6,{\rm X\!}\}\\
c &= \{0,3,5,6,7\}\\
d &= \{1,4,6,7,8\}\\
e &= \{2,5,7,8,9\}\\
f &= \{3,6,8,9,{\rm X\!}\}\\
g &= \{0,4,7,9,{\rm X\!}\}\\
h &= \{0,1,5,8,{\rm X\!}\}\\
i &= \{0,1,2,6,7\}\\
j &= \{1,2,3,7,8\}\\
k &= \{3,4,5,8,9\}
\end{align}
数を「点」, アルファベットを「直線」と呼び, それぞれのなす集合を\(P,L\)としよう.
\begin{align}
P &= \{0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,{\rm X}\}\\
L &= \{a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k\}
\end{align}
よく観察すると, 異なる2つの「点」は2つの同じ「直線」にのり, 異なる2つの「直線」は2つの同じ「点」をのせている(2点で「交わる」)ことが分かる.
たとえば\(\{0,1\}\)は\(h,i\)に含まれ, \(a,b\)は\(\{4,5\}\)を含んでいる. 集合の言葉で記述すると,
\begin{gather}
\forall p,q \in P,{\rm s.t.}\ p\neq q,\ \ |\{\ell \in L \mid \{p,q\}\subset \ell\}| = 2, \\
\forall \ell,m \in L,{\rm s.t.}\ \ell\neq m,\ \ |\{p \in P \mid \{\ell,m\}\subset p\}| = 2.
\end{gather}
この組み合わせを, Paley Biplane*1という[4,5]. 名前は数学者Raymond Paleyから.
 また, ブロックデザインのことばでは\(2-(11,5,2)\)デザインとなる. ここで\(t-(v,k,\lambda)\)デザイン\(X,B\)の定義は以下の通り.

定義: ブロックデザイン
 \(v\)個の元からなる有限集合\(X\)に対して, 大きさ\(k\)の\(X\)の部分集合の全体を\(X^{(k)}\)とする.
\begin{gather}
    |X| = v\\
    X^{(k)} = \{A\subset X\mid |Y|=k\}
\end{gather}
\(X^{(k)}\)の部分集合\(B\)があって次の性質を満たす:
\(X\)の相異なる\(t\)個の元に対して, それらを含む\(B\)の元はちょうど\(\lambda\)個存在する.
\begin{gather}
    \forall x_1,x_2,\cdots, x_t,\ {\rm s.t.}\ x_i\neq x_j\ (1\leq i \lneq j\leq t),\\
    |\{b\in B\mid x_1,x_2,\cdots,x_t\in b\}| = \lambda.
\end{gather}

 いま, \(X\)は「点」の集合\(P\), \(B\)は「直線」の集合\(L\)に対応する. \(v=11\)点集合\(P\)の\(k=5\)点部分集合の集合\(L\)について, \(P\)の相異なる\(t=2\)個の元はちょうど\(\lambda=2\)個の\(L\)の元に含まれるため, Paley Biplaneは\(2-(11,5,2)\)デザイン.

アダマール行列

 Paley biplaneは位数\(n=3\)のアダマール型2-デザインとも呼ばれる. このデザインから\(4n=12\)次のアダマール行列が作られるのだ. アダマール行列とは, すべての成分が\(\pm 1\)の正方行列であって, それ自身の転置行列との積がスカラー行列になるもの.
 具体的な構成は次のようになる. \(12\times 12\)行列\(H\)について, 12行目と12列目成分はともにすべて1として, 他の行はa…kのアルファベットで, 列は0から始めて11までで指定することにする. 各マスをPaley biplneの組をなすなら1, そうでないなら\(-1\)で埋める. すると,
\begin{align}
H =
\left(\begin{array}{rrrrrrrrrrrr}
-1 & 1 & -1 & 1 & 1 & 1 & -1 & -1 & -1 & 1 & -1 & 1\\
-1 & -1 & 1 & -1 & 1 & 1 & 1 & -1 & -1 & -1 & 1 & 1\\
1 & -1 & -1 & 1 & -1 & 1 & 1 & 1 & -1 & -1 & -1 & 1\\
-1 & 1 & -1 & -1 & 1 & -1 & 1 & 1 & 1 & -1 & -1 & 1\\
-1 & -1 & 1 & -1 & -1 & 1 & -1 & 1 & 1 & 1 & -1 & 1\\
-1 & -1 & -1 & 1 & -1 & -1 & 1 & -1 & 1 & 1 & 1 & 1\\
1 & -1 & -1 & -1 & 1 & -1 & -1 & 1 & -1 & 1 & 1 & 1\\
1 & 1 & -1 & -1 & -1 & 1 & -1 & -1 & 1 & -1 & 1 & 1\\
1 & 1 & 1 & -1 & -1 & -1 & 1 & -1 & -1 & 1 & -1 & 1\\
-1 & 1 & 1 & 1 & -1 & -1 & -1 & 1 & -1 & -1 & 1 & 1\\
1 & -1 & 1 & 1 & 1 & -1 & -1 & -1 & 1 & -1 & -1 & 1\\
1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1
\end{array}\right).
\end{align}
これが12次のアダマール行列になっている:
\begin{align}
HH^T = 12 I.
\end{align}
\(I\)は単位行列.
 ちなみに同じような方法で\(q\equiv 3 \mod 4\)なる素数冪\(q\)から\(q+1\)次のアダマール行列が作られる.
 12次のアダマール行列は11,12次のマシュー群との関係からもあまりに重要で, またたぶん別の機会に調べることになると思う.
 さて, このPaley Biplaneの自己同型群が\(PSL(2,11)\)と同型なのである. すなわち\(PSL(2,11)\)は\(P\)と\(L\)のどちらにも11点の置換として作用する. とはいえ, \(PSL(2,11)\)は1次変換の群. どこにPaley Biplaneがいるのだろう?

2項正20面体群

 \(SU(2)\)の部分群であった2項正20面体群を思い出そう. 詳しくは以前の記事を参照.

球面調和関数で正20面体をつくる(4) - 2項正20面体群とマッカイ対応 - Shironetsu Blog

\(xyz\)座標で正20面体の頂点として次の12個を取ることができる.
\begin{gather}
(\pm \phi,\pm1,0),\
(0,\pm\phi,\pm 1),\
(\pm 1,0,\pm\phi)\\
\phi = \frac{1+\sqrt{5}}{2}
\end{gather}

f:id:shironetsu:20180210224315p:plain:w300

 \(\phi\)は\(\lambda^2-\lambda-1=0\)の正根. これらを四元数\(x{\bf i}+y{\bf j}+z{\bf k}\)に対応させると, これらを不変に保つ共役による作用を引き起こす4元数\((t,x,y,z)=t{\bf 1}+x{\bf i}+y{\bf j}+z{\bf k}\)の全体は, 以下の120個.
\begin{gather}
(\pm 1,0,0,0),\ (0,\pm 1,0,0),\ (0,0,\pm 1,0),\ (0,0,0\pm 1),\\
(\pm\frac{1}{2},\pm\frac{1}{2},\pm\frac{1}{2},\pm\frac{1}{2}),\\
(\pm\frac{\phi^{-1}}{2},\pm \frac{\phi}{2},\pm\frac{1}{2},0),\
(\pm \frac{\phi}{2},\pm\frac{\phi^{-1}}{2},0,\pm\frac{1}{2}),\
(\pm\frac{1}{2},0,\pm\frac{\phi^{-1}}{2},\pm \frac{\phi}{2}),\
(0,\pm\frac{1}{2},\pm \frac{\phi}{2},\pm\frac{\phi^{-1}}{2}),\\
(\pm\frac{\phi^{-1}}{2},\pm\frac{1}{2},0,\pm \frac{\phi}{2}),\
(\pm\frac{\phi^{-1}}{2},0,\pm \frac{\phi}{2},\pm\frac{1}{2}),\
(0,\pm\frac{\phi^{-1}}{2},\pm\frac{1}{2},\pm\frac{\phi}{2}),\
(\pm\frac{1}{2},\pm\frac{\phi^{-1}}{2},\pm\frac{\phi}{2},0),\\
(0,\pm\frac{\phi}{2},\pm\frac{\phi^{-1}}{2},\pm\frac{1}{2}),\
(\pm\frac{\phi}{2},\pm\frac{1}{2},\pm\frac{\phi^{-1}}{2},0),\
(\pm\frac{1}{2},\pm\frac{\phi}{2},0,\pm\frac{\phi^{-1}}{2}),\
(\pm\frac{\phi}{2},0,\pm\frac{1}{2},\pm\frac{\phi^{-1}}{2}).
\end{gather}
なお下3行は成分の互いに成分の偶置換. これが2項正20面体群\(\widetilde{I}\)である.
 これを\(\mathbb{F}_{11}\)に移そう. \(1^2+3^2=-1\)から以下のようにとれる.
\begin{align}
{\bf i} =
\begin{pmatrix}
3 & 1\\
1 & -3
\end{pmatrix},\ \
{\bf j} =
\begin{pmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{pmatrix},\ \
{\bf k} =
\begin{pmatrix}
1 & -3\\
-3 & -1
\end{pmatrix}.
\end{align}
5は11の平方剰余であるため, \(\sqrt{5}=7\)に固定して\(\mathbb{F}_{11}\)上で
\begin{align}
\phi = \frac{1+\sqrt{5}}{2} = 4
\end{align}
とする. すると, 以下の120個が2項正20面体群と同型な群を\(SL(2,11)\)内でつくる.
\begin{gather}
(\pm 1,0,0,0),\ (0,\pm 1,0,0),\ (0,0,\pm 1,0),\ (0,0,0\pm 1),\\
(\pm 5,\pm 5,\pm 5,\pm 5),\\
(\pm 4,\pm 2,\pm 5,0),\
(\pm 2,\pm 4,0,\pm 5),\
(\pm 5,0,\pm 4,\pm 2),\
(0,\pm 5,\pm 2,\pm 4),\\
(\pm 4,\pm 5,0,\pm 2),\
(\pm 4,0,\pm 2,\pm 5),\
(0,\pm 4,\pm 5,\pm 2),\
(\pm 5,\pm 4,\pm 2,0),\\
(0,\pm 2,\pm 4,\pm 5),\
(\pm 2,\pm 5,\pm 4,0),\
(\pm 5,\pm 2,0,\pm 4 ),\
(\pm 2,0,\pm 5,\pm 4).
\end{gather}
これらが固定するのが次の6本の「対角線」(プラスマイナスを同一視する)の集合.
\begin{gather}
(\pm 4,\pm1,0),\
(0,\pm 4,\pm 1),\
(\pm 1,0,\pm 4)
\end{gather}
 \(A=x{\bf i}+y{\bf j}+z{\bf k}\)と\(B=x'{\bf i}+y'{\bf j}+z'{\bf k}\)の内積はやはり
\begin{align}
(A,B)=\frac{-1}{2}{\rm tr}(AB) = xx'+yy'+zz'
\end{align}
で定義する.

11元体上の正20面体たち

 以下の観察を行う.
問題1. \(\,(4,1,0)\)と同じく自分自身との内積が\(4^2+1^2+0^2=6\)となるベクトルは何個あるか?
答え1. 132個.
\(x^2+y^2+z^2=6\)の解を数える. これらの集合を\(\mathcal{V}\)とする.
\begin{align}
\mathcal{V} = \{(x,y,z)\in (\mathbb{F}_{11})^3\mid x^2+y^2+z^2=6\}
\end{align}
プラスマイナスを同一視するとちょうど半分の66個.
\begin{align}
\lbrack x,y,z\rbrack = \left\{(x,y,z),(-x,-y,-z)\right\}
\end{align}
と表すことにして,
\begin{align}
\mathcal{D} = \{\lbrack x,y,z\rbrack\mid\lbrack x,y,z\rbrack\subset \mathcal{V}\}
\end{align}
を定義する. \(|\mathcal{D}|=66\). この\(\mathcal{D}\)が「対角線」の集合.

問題2. 「正20面体」\(\{\lbrack 4,\pm1,0\rbrack,\ \lbrack0,4,\pm 1\rbrack,\ \lbrack\pm 1,0,4\rbrack\}\) に対する\(SL(2,11)\)の共役による作用の軌道はどのようになるか?
答え2. 軌道-固定点定理から大きさは11. 以下に列挙する.
\begin{align}
{\bf 0} &:\{\lbrack1, 0, 4\rbrack, \lbrack1, 0, 7\rbrack, \lbrack0, 4, 1\rbrack, \lbrack0, 4, 10\rbrack, \lbrack4, 10, 0\rbrack, \lbrack4, 1, 0\rbrack\}\\
{\bf 1} &:\{\lbrack1, 9, 1\rbrack, \lbrack1, 4, 0\rbrack, \lbrack1, 9, 10\rbrack, \lbrack5, 8, 7\rbrack, \lbrack5, 6, 0\rbrack, \lbrack5, 8, 4\rbrack\}\\
{\bf 2} &:\{\lbrack3, 4, 6\rbrack, \lbrack2, 10, 10\rbrack, \lbrack4, 0, 1\rbrack, \lbrack3, 7, 6\rbrack, \lbrack5, 0, 6\rbrack, \lbrack2, 1, 10\rbrack\}\\
{\bf 3} &:\{\lbrack1, 2, 1\rbrack, \lbrack5, 3, 4\rbrack, \lbrack5, 3, 7\rbrack, \lbrack1, 7, 0\rbrack, \lbrack1, 2, 10\rbrack, \lbrack5, 5, 0\rbrack\}\\
{\bf 4}&:\{\lbrack3, 6, 4\rbrack, \lbrack2, 9, 8\rbrack, \lbrack4, 8, 6\rbrack, \lbrack3, 2, 2\rbrack, \lbrack2, 8, 2\rbrack, \lbrack5, 4, 3\rbrack\}\\
{\bf 5}&:\{\lbrack5, 0, 5\rbrack, \lbrack2, 1, 1\rbrack, \lbrack2, 10, 1\rbrack, \lbrack4, 0, 10\rbrack, \lbrack3, 7, 5\rbrack, \lbrack3, 4, 5\rbrack\}\\
{\bf 6}&:\{\lbrack0, 5, 5\rbrack, \lbrack1, 10, 9\rbrack, \lbrack4, 5, 3\rbrack, \lbrack0, 1, 7\rbrack, \lbrack1, 1, 2\rbrack, \lbrack4, 6, 8\rbrack\}\\
{\bf 7}&:\{\lbrack2, 9, 3\rbrack, \lbrack4, 8, 5\rbrack, \lbrack2, 8, 9\rbrack, \lbrack5, 4, 8\rbrack, \lbrack3, 6, 7\rbrack, \lbrack3, 2, 9\rbrack\}\\
{\bf 8}&:\{\lbrack4, 6, 3\rbrack, \lbrack1, 1, 9\rbrack, \lbrack0, 5, 6\rbrack, \lbrack4, 5, 8\rbrack, \lbrack1, 10, 2\rbrack, \lbrack0, 1, 4\rbrack\}\\
{\bf 9}&:\{\lbrack3, 5, 4\rbrack, \lbrack2, 3, 2\rbrack, \lbrack4, 3, 6\rbrack, \lbrack3, 9, 2\rbrack, \lbrack5, 7, 3\rbrack, \lbrack2, 2, 8\rbrack\}\\
{\bf \rm X}&:\{\lbrack2, 3, 9\rbrack, \lbrack4, 3, 5\rbrack, \lbrack3, 5, 7\rbrack, \lbrack5, 7, 8\rbrack, \lbrack3, 9, 9\rbrack, \lbrack2, 2, 3\rbrack\}
\end{align}
これらの集合を\(\mathcal{P}\)とする. 「対角線」はちょうど1つの\(\mathcal{P}\)の「正20面体」に含まれる.

問題3. 「正20面体」はいくつ存在するか?
答え3. 22個.
「正20面体」とは互いの内積が\(\pm 4\)の「対角線」6本の集合のこと.
\(\mathcal{P}\)に加えて次の11個が存在.
\begin{align}
a &: \{\lbrack1, 10, 9\rbrack, \lbrack1, 1, 9\rbrack, \lbrack1, 0, 4\rbrack, \lbrack5, 0, 6\rbrack, \lbrack5, 7, 8\rbrack, \lbrack5, 4, 8\rbrack\}\\
b &: \{\lbrack1, 9, 1\rbrack, \lbrack0, 4, 1\rbrack, \lbrack0, 5, 6\rbrack, \lbrack1, 2, 10\rbrack, \lbrack4, 3, 6\rbrack, \lbrack4, 8, 5\rbrack\}\\
c &: \{\lbrack2, 9, 8\rbrack, \lbrack2, 3, 9\rbrack, \lbrack3, 7, 6\rbrack, \lbrack4, 5, 8\rbrack, \lbrack3, 9, 2\rbrack, \lbrack5, 8, 4\rbrack\}\\
d &: \{\lbrack3, 5, 4\rbrack, \lbrack2, 1, 1\rbrack, \lbrack4, 10, 0\rbrack, \lbrack3, 5, 7\rbrack, \lbrack5, 5, 0\rbrack, \lbrack2, 1, 10\rbrack\}\\
e &: \{\lbrack0, 5, 5\rbrack, \lbrack1, 2, 1\rbrack, \lbrack4, 3, 5\rbrack, \lbrack0, 4, 10\rbrack, \lbrack4, 8, 6\rbrack, \lbrack1, 9, 10\rbrack\}\\
f &:\{\lbrack3, 6, 4\rbrack, \lbrack2, 10, 10\rbrack, \lbrack4, 1, 0\rbrack, \lbrack2, 10, 1\rbrack, \lbrack5, 6, 0\rbrack, \lbrack3, 6, 7\rbrack\}\\
g &:\{\lbrack4, 0, 1\rbrack, \lbrack1, 4, 0\rbrack, \lbrack0, 1, 7\rbrack, \lbrack1, 7, 0\rbrack, \lbrack4, 0, 10\rbrack, \lbrack0, 1, 4\rbrack\}\\
h &:\{\lbrack3, 4, 6\rbrack, \lbrack5, 3, 4\rbrack, \lbrack4, 6, 8\rbrack, \lbrack3, 2, 2\rbrack, \lbrack2, 8, 9\rbrack, \lbrack2, 2, 8\rbrack\}\\
i &: \{\lbrack4, 6, 3\rbrack, \lbrack5, 3, 7\rbrack, \lbrack2, 8, 2\rbrack, \lbrack3, 4, 5\rbrack, \lbrack2, 2, 3\rbrack, \lbrack3, 2, 9\rbrack\}\\
j &:\{\lbrack5, 0, 5\rbrack, \lbrack1, 1, 2\rbrack, \lbrack1, 10, 2\rbrack, \lbrack5, 7, 3\rbrack, \lbrack5, 4, 3\rbrack, \lbrack1, 0, 7\rbrack\}\\
k &: \{\lbrack2, 3, 2\rbrack, \lbrack2, 9, 3\rbrack, \lbrack4, 5, 3\rbrack, \lbrack5, 8, 7\rbrack, \lbrack3, 7, 5\rbrack, \lbrack3, 9, 9\rbrack\}
\end{align}
これらの集合を\(\mathcal{L}\)とする. 「対角線」はちょうど1つの\(\mathcal{L}\)の「正20面体」に含まれる.

 \(PSL(2,7)\)のときからの類推で, \(\mathcal{P}\)が「点」に, \(\mathcal{L}\)が「直線」に, それぞれ対応付けられることが期待できる. というか既にもう答えを書いた. ただ対応の仕方が少し変わっている.

 \(\mathcal{P}\)の元\({\bf 0}\)を見よう.
\begin{align}
{\bf 0} : \{\lbrack1, 0, 4\rbrack, \lbrack1, 0, 7\rbrack, \lbrack0, 4, 1\rbrack, \lbrack0, 4, 10\rbrack, \lbrack4, 10, 0\rbrack, \lbrack4, 1, 0\rbrack\}
\end{align}
\({\bf 0}\)に含まれる6つの元は, \(\mathcal{L}\)の\(a,b,d,e,f,j\)に分かれて1つずつ入っている.
\begin{align}
a &: \{\lbrack1, 10, 9\rbrack, \lbrack1, 1, 9\rbrack, \underline{\lbrack1, 0, 4\rbrack}, \lbrack5, 0, 6\rbrack, \lbrack5, 7, 8\rbrack, \lbrack5, 4, 8\rbrack\}\\
b &: \{\lbrack1, 9, 1\rbrack, \underline{\lbrack0, 4, 1\rbrack}, \lbrack0, 5, 6\rbrack, \lbrack1, 2, 10\rbrack, \lbrack4, 3, 6\rbrack, \lbrack4, 8, 5\rbrack\}\\
d &: \{\lbrack3, 5, 4\rbrack, \lbrack2, 1, 1\rbrack, \underline{\lbrack4, 10, 0\rbrack}, \lbrack3, 5, 7\rbrack, \lbrack5, 5, 0\rbrack, \lbrack2, 1, 10\rbrack\}\\
e &: \{\lbrack0, 5, 5\rbrack, \lbrack1, 2, 1\rbrack, \lbrack4, 3, 5\rbrack, \underline{\lbrack0, 4, 10\rbrack}, \lbrack4, 8, 6\rbrack, \lbrack1, 9, 10\rbrack\}\\
f &:\{\lbrack3, 6, 4\rbrack, \lbrack2, 10, 10\rbrack, \underline{\lbrack4, 1, 0\rbrack}, \lbrack2, 10, 1\rbrack, \lbrack5, 6, 0\rbrack, \lbrack3, 6, 7\rbrack\}\\
j &:\{\lbrack5, 0, 5\rbrack, \lbrack1, 1, 2\rbrack, \lbrack1, 10, 2\rbrack, \lbrack5, 7, 3\rbrack, \lbrack5, 4, 3\rbrack, \underline{\lbrack1, 0, 7\rbrack}\}
\end{align}
\(a,b,d,e,f,j\)はPaley biplaneにおいて「点」\({\bf 0}\)がのっていない6つの「直線」である. 逆に補集合\(\mathcal{L}\backslash\{a,b,d,e,f,j\}=\{c,g,h,i,k\}\)は「点」0がのっている5つの「直線」.

 「点」と「直線」の双対性からこれらの語を入れ替えても同じことが言える. \(\mathcal{L}\)の元\(a\)を見よう.
\begin{align}
a : \{\lbrack1, 10, 9\rbrack, \lbrack1, 1, 9\rbrack, \lbrack1, 0, 4\rbrack, \lbrack5, 0, 6\rbrack, \lbrack5, 7, 8\rbrack, \lbrack5, 4, 8\rbrack\}
\end{align}
\(a\)に含まれる6つの元は, \(\mathcal{P}\)の\({\bf 0,2,6,7,8,{\rm X}}\)に分かれて1つずつ入っている.
\begin{align}
{\bf 0} &:\{\underline{\lbrack1, 0, 4\rbrack}, \lbrack1, 0, 7\rbrack, \lbrack0, 4, 1\rbrack, \lbrack0, 4, 10\rbrack, \lbrack4, 10, 0\rbrack, \lbrack4, 1, 0\rbrack\}\\
{\bf 2} &:\{\lbrack3, 4, 6\rbrack, \lbrack2, 10, 10\rbrack, \lbrack4, 0, 1\rbrack, \lbrack3, 7, 6\rbrack, \underline{\lbrack5, 0, 6\rbrack}, \lbrack2, 1, 10\rbrack\}\\
{\bf 6}&:\{\lbrack0, 5, 5\rbrack, \underline{\lbrack1, 10, 9\rbrack}, \lbrack4, 5, 3\rbrack, \lbrack0, 1, 7\rbrack, \lbrack1, 1, 2\rbrack, \lbrack4, 6, 8\rbrack\}\\
{\bf 7}&:\{\lbrack2, 9, 3\rbrack, \lbrack4, 8, 5\rbrack, \lbrack2, 8, 9\rbrack, \underline{\lbrack5, 4, 8\rbrack}, \lbrack3, 6, 7\rbrack, \lbrack3, 2, 9\rbrack\}\\
{\bf 8}&:\{\lbrack4, 6, 3\rbrack, \underline{\lbrack1, 1, 9\rbrack}, \lbrack0, 5, 6\rbrack, \lbrack4, 5, 8\rbrack, \lbrack1, 10, 2\rbrack, \lbrack0, 1, 4\rbrack\}\\
{\bf \rm X}&:\{\lbrack2, 3, 9\rbrack, \lbrack4, 3, 5\rbrack, \lbrack3, 5, 7\rbrack, \underline{\lbrack5, 7, 8\rbrack}, \lbrack3, 9, 9\rbrack, \lbrack2, 2, 3\rbrack\}
\end{align}
\({\bf 0,2,6,7,8,{\rm X}}\)はPalay biplaneにおいて「直線」\(a\)がのせていない6つの「点」である. 逆に補集合\(\mathcal{P}\backslash\{{\bf 0,2,6,7,8,{\rm X}}\}=\{1,3,4,5,9\}\)は「直線」\(a\)がのせている5つの「点」.

 かくしてPaley biplaneが見つかった. Palay biplaneの自己同型群「全体」であるというには少し足りないが, \(PSL(2,11)\)の元が自己同型として作用することは言えた(実際Paley biplaneのフルの対称性が\(PSL(2,11)\)である.).

 この埋め込み\(PSL(2,11)\hookrightarrow Sym(11)\)によって生成元は以下のように写される.
\begin{align}
s = \begin{bmatrix}
1 & 1\\
0 & 1
\end{bmatrix}
&\mapsto ({\bf 029867315{\rm X}4}) = (a\,h\,b\,g\,k\,i\,e\,f\,d\,c\,j)\\
t = \begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
&\mapsto ({\bf 13})({\bf 49})({\bf 68})({\bf 7{\rm X}}) = (b\,e)(c\,h)(d\,f)(i\,k).
\end{align}

各共役類の代表元についても,
\begin{align}
st = \begin{bmatrix}
1 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
&\mapsto {\bf (029)(35{\rm X})(487)} = (a\,h\,j)(b\,f\,c)(e\,g\,k)\\
s^2 = \begin{bmatrix}
1 & 2\\
0 & 1
\end{bmatrix}
&\mapsto {\bf (0963542871{\rm X})} = (a\,b\,k\,e\,d\,j\,h\,g\,i\,f\,c)\\
s^3t = \begin{bmatrix}
3 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
&\mapsto {\bf (081{\rm X}5)(26347)} = (a\,g\,e\,i\,f)(b\,c\,k\,d\,j)\\
s^4t = \begin{bmatrix}
4 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
&\mapsto {\bf (06143)(27985)} = (a\,k\,c\,i\,d)(b\,j\,g\,f\,h)\\
s^5t = \begin{bmatrix}
5 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
&\mapsto {\bf (078{\rm X}41)(23)(596)} = (a\,i\,c\,e\,f\,b)(d\,h\,g)(j\,k)
\end{align}
と写る. 11次対称群の10次元既約表現の制限によって指標は以下のようになる.
\begin{align}
\begin{array}{|c|cccccccc|}\hline
\mbox{共役類}&1A_1 & 55A_2 & 110A_3 & 60A_{11} & 60B_{11} & 132A_5 & 132B_5 & 110A_6\\
\hline
\mbox{置換の型}
& \lbrack1^{11}\rbrack
& \lbrack1^32^4\rbrack
& \lbrack1^23^3\rbrack
& \lbrack 11\rbrack
& \lbrack 11\rbrack
& \lbrack1,5^2\rbrack
& \lbrack1,5^2\rbrack
& \lbrack2,3,6\rbrack
\\ \hline
\mbox{指標}&10 & 2 & 1 & -1 & -1 & 0 & 0 & -1 \\ \hline
\end{array}
\end{align}


10次元表現その2

 5次元既約表現の反対称積から得られる. 一般に, 表現空間を\(V\)とする群\(G\)の表現(指標は\(\chi_V\)とする)の反対称テンソル表現\wedge^2 Vの指標\chi_{\wedge^2 V}は,

\begin{align}
    \chi_{\wedge^2 V}(g) = \frac{1}{2}\left(\chi_V(g)^2-\chi_V(g^2)\right),\ \ 
    g\in G
\end{align}

で得られるから, 指標は次の通り.
\begin{align}
\begin{array}{|c|cccccccc|}\hline
\mbox{共役類}&1A_1 & 55A_2 & 110A_3 & 60A_{11} & 60B_{11} & 132A_5 & 132B_5 & 110A_6\\
\hline
\mbox{指標}&10 & -2 & 1 & -1 & -1 & 0 & 0 & 1 \\ \hline
\end{array}
\end{align}


11次元表現

 \(\mathbb{F}_{11}\)上の射影直線\(P^1(\mathbb{F}_{11})\)への作用から12次交代群の11次元表現に埋め込む. 作用を各共役類の代表元に対して列挙しよう. なお, 10だけXで表す.
\begin{align}
\begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} &= (0\infty)(1{\rm X})(25)(37)(48)(69)\\
\begin{bmatrix}
1 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} &= (0\infty 1)(26{\rm X})(385)(497)\\
\begin{bmatrix}
1 & 1\\
0 & 1
\end{bmatrix} &= (0123456789{\rm X})\\
\begin{bmatrix}
1 & 2\\
0 & 1
\end{bmatrix} &= (02468{\rm X}13579)\\
\begin{bmatrix}
3 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} &= (0\infty 3{\rm X}4)(12876)\\
\begin{bmatrix}
4 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} &= (0\infty 413)(29{\rm X}56)\\
\begin{bmatrix}
5 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} &= (0\infty 5789)(142{\rm X}63)
\end{align}
置換の型さえ分かれば, 固定点\(-1\)から指標が得られる.
\begin{align}
\begin{array}{|c|cccccccc|}\hline
\mbox{共役類}&1A_1 & 55A_2 & 110A_3 & 60A_{11} & 60B_{11} & 132A_5 & 132B_5 & 110A_6\\
\hline
\mbox{置換の型} &
\lbrack 1^{12}\rbrack &
\lbrack 2^6\rbrack &
\lbrack 3^4\rbrack &
\lbrack 1,11\rbrack &
\lbrack 1,11\rbrack &
\lbrack 1^2\,5^2\rbrack&
\lbrack 1^2\,5^2\rbrack&
\lbrack 6^2\rbrack \\ \hline
\mbox{指標}&11 & -1 & -1 & 0 & 0 & 1 & 1 & -1 \\ \hline
\end{array}
\end{align}


12次元表現

 一般に, \(G=PSL(2,p)\)の\(P^1(\mathbb{F}_p)=\mathbb{F}_p\cup\{\infty\}\)への作用において, \(\infty\)の固定部分群\(B\)は(プラスマイナスを同一視した)上三角行列の全体になる. 指数は(p+1)で位数は(p^2-p)/2.
\begin{align}
B = \left\{
\begin{bmatrix}
\alpha & \beta\\
0 & \alpha^{-1}
\end{bmatrix}\in PSL(2,p)
\mid
\alpha\in\mathbb{F}_p^{\times}, \beta\in\mathbb{F}_p
\right\}.
\end{align}
\(B\)による\(G\)の左剰余類の完全代表系\(R\)は次のように与えられる.
\begin{gather}
R = \left\{t_i \mid i \in P^1(\mathbb{F}_p)\right\},\\
t_\gamma =
\begin{bmatrix}
1 & 0\\
\gamma & 1
\end{bmatrix},\ \
t_\infty =
\begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix},\ \
\gamma \in \mathbb{F}_p.
\end{gather}
\(B\)は対角成分が1の行列全体からなる位数\(p\)の正規部分群\(N\)をもつ. 位数は\(p\).
\begin{align}
N = \left\{
\begin{bmatrix}
1 & c\\
0 & 1
\end{bmatrix}\in PSL(2,p)
\mid
c\in\mathbb{F}_p
\right\}.
\end{align}
\(B\)の\(N\)による剰余群は巡回群と同型になることが簡単な計算から確かめられる.
\begin{align}
B/N \cong \mathbb{Z}_{(p-1)/2}.
\end{align}
従って\(B\)には(忠実でない)既約な1次元表現が(p-1)/2個ある. この表現による誘導表現から\(G\)の(既約とは限らない)(p+1)次元表現が得られる.

 \(B\)の1次元表現\(\rho\)による\(G\)の誘導表現\(\pi\)の表現行列は具体的に次のように得られる. まず, 部分群の表現を次のように\(G\)全体に拡張して\(\widetilde{\rho}\)とする.
\begin{align}
\widetilde{\rho}(g)=\left\{
\begin{array}{cc}
\rho(g) & {\rm if\ } g\in B\\
0 & {\rm else\ if\ } g\not\in B
\end{array}
\right.
\end{align}
左剰余類\(G/B\)の完全代表系\(R=\{t_i\mid i\in P^1(\mathbb{F}_p)\}\)によって,\(\,(ij)\)成分を
\begin{align}
\lbrack\pi(g)\rbrack_{ij} = \widetilde{\rho}(t_i^{-1}gt_j)
\end{align}
とすれば\(G\)の表現になる. 指標は
\begin{align}
\chi_\pi(g) = \sum_{i\in\mathbb{F}_p}\chi_{\widetilde{\rho}}(t_i^{-1}gt_i)
\end{align}
 ここから\(p=11\). \(B/N \cong \mathbb{Z}_5\)であり, \(B\)には次の5通りの互いに同値でない既約な1次元表現\(\rho_i\ (i=0,1,2,3,4)\)が存在する.
\begin{align}
\begin{array}{|c|ccccc|}\hline
b\in B &
\begin{bmatrix}
1 & *\\
0 & 1
\end{bmatrix}
&
\begin{bmatrix}
2 & *\\
0 & 6
\end{bmatrix}
&
\begin{bmatrix}
3 & *\\
0 & 4
\end{bmatrix}
&
\begin{bmatrix}
4 & *\\
0 & 3
\end{bmatrix}
&
\begin{bmatrix}
5 & *\\
0 & 9
\end{bmatrix}\\\hline
\rho_0(b)&1 & 1 & 1 & 1 & 1\\
\rho_1(b)&1 & \xi & \xi^3 & \xi^2 & \xi^4\\
\rho_2(b)&1 & \xi^2 & \xi & \xi^4 & \xi^3\\
\rho_3(b)&1 & \xi^3 & \xi^4 & \xi & \xi^2\\
\rho_4(b)&1 & \xi^4 & \xi^2 & \xi^3 & \xi\\ \hline
\end{array}
\end{align}
ただし\(\xi\)は1の原始5乗根.

 \(\rho_0\)による誘導表現は, \(B\)の共役な部分群たちに対する置換表現にほかならず, 既に得られた\(1+11\)次元に分解するため無視. 他の誘導表現を得るため, \(G\)の共役類に対して\(R\)による共役を黙々と計算する.
\begin{align}
\begin{bmatrix}
1 & 0\\
-\gamma & 1
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
a & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
1 & 0\\
\gamma & 1
\end{bmatrix}
&=
\begin{bmatrix}
a-\gamma & -1\\
\gamma^2-a\gamma+1 & \gamma
\end{bmatrix} \\
\begin{bmatrix}
0 & 1\\
-1 & 0
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
a & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
&=
\begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & a
\end{bmatrix} \\
\begin{bmatrix}
1 & 0\\
-\gamma & 1
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
1 & b\\
0 & 1
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
1 & 0\\
\gamma & 1
\end{bmatrix}
&=
\begin{bmatrix}
1+b\gamma & b\\
-b\gamma^2 & 1-b\gamma
\end{bmatrix} \\
\begin{bmatrix}
0 & 1\\
-1 & 0
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
1 & b\\
0 & 1
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
&=
\begin{bmatrix}
1 & 0\\
-b & 1
\end{bmatrix}
\end{align}
\(\rho_i\ (i=1,2,3,4)\)による誘導表現\(\pi_i\)の指標を\(\chi_i\)で表すと, 以下の表のようになる.
\begin{align}
\begin{array}{|c|cccccccc|}\hline
\mbox{共役類}&1A_1 & 55A_2 & 110A_3 & 60A_{11} & 60B_{11} & 132A_5 & 132B_5 & 110A_6\\
\hline
\chi_1 &12 & 0 & 0 & 1 & 1 & \xi+\xi^4 & \xi^2+\xi^3 & 0 \\ \hline
\chi_2 &12 & 0 & 0 & 1 & 1 & \xi^2+\xi^3 & \xi+\xi^4 & 0 \\ \hline
\chi_3 &12 & 0 & 0 & 1 & 1 & \xi^2+\xi^3 & \xi+\xi^4 & 0 \\ \hline
\chi_4 &12 & 0 & 0 & 1 & 1 & \xi+\xi^4 & \xi^2+\xi^3 & 0 \\ \hline
\end{array}
\end{align}
\(\pi_1\)と\(\pi_4\), \(\pi_2\)と\(\pi_3\)の組み合わせがそれぞれ同値, すべて既約であることが分かる. 12次元既約表現を2つ得た.


指標表

 以上の結果を指標表としてまとめる. 各表現を次元と順に下添え字で区別.
\begin{align}
    \begin{array}{|c|cccccccc|}\hline
          &1A_1 & 55A_2 & 110A_3 & 60A_{11} & 60B_{11} & 132A_5 & 132B_5 & 110A_6\\
     \hline
     {\bf 1}&1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
     {\bf 5}_1 & 5 & 1 & -1 & \eta & \overline{\eta} & 0 & 0 & 1 \\ \hline
     {\bf 5}_2 & 5 & 1 & -1 & \overline{\eta} & \eta  & 0 & 0 & 1 \\\hline
     {\bf 10}_1 & 10 & 2 & 1 & -1 & -1 & 0 & 0 & -1 \\ \hline
     {\bf 10}_2 & 10 & -2 & 1 & -1 & -1 & 0 & 0 & 1 \\ \hline
     {\bf 11}&11 & -1 & -1 & 0 & 0 & 1 & 1 & -1 \\ \hline
     {\bf 12}_1&12 & 0 & 0 & 1 & 1 & \xi+\xi^4 & \xi^2+\xi^3 & 0 \\ \hline
     {\bf 12}_2 &12 & 0 & 0 & 1 & 1 & \xi^2+\xi^3 & \xi+\xi^4 & 0 \\ \hline
    \end{array} \\
    \eta = \frac{-1+\sqrt{-11}}{2},\ \xi = \exp\frac{2\pi\sqrt{-1}}{5}.
    \end{align}


まとめとこれから

 \(PSL(2,11)\)は11点に推移的に作用する. このことは正20面体群が部分群として存在することが原因である. また, \(PSL(2,11)\)はPaley biplaneと呼ばれる11点集合上のブロックデザインの自己同型群と同型になる. これら2つの事実を結びつけるため, 11元体係数の四元数上に定義される「正20面体」どうしの構造の中にPaley biplaneを発見した.
 また, 全ての既約表現の具体的な構成法も示した. ただ, 5次元既約表現については背景にある現象(代数幾何学的な?)を掴めていない. 種数70のbuckyball surface(切頂正20面体型のC60分子, バックミンスターフラーレンに由来)へPaley biplaneを埋め込めるらしい[6]が......

 \(PSL(2,11)\)は11次のマシュー群\(M_{11}\)の12点への作用における1点の固定部分群である. また, \(p=5,7,11\)のような性質こそないものの, 散在型単純群の部分群として重要な役割を担う射影特殊線形群は数多くあり, それらについてもここでの考察が役に立つだろう.


リファレンス

[1]Galois' last letter – neverendingbooks
http://www.neverendingbooks.org/galois-last-letter

[2]Kostant, B., "The graph of the truncated icosahedron and the last letter of Galois." , 1995, Notices of the AMS, 42(9), 959-968.
https://www.ams.org/notices/199509/kostant.pdf
%https://en.wikipedia.org/wiki/Raymond_Paley

[3]Behr, Helmut, and Jens Mennicke. "A presentation of the groups PSL (2, p)." Canadian Journal of Mathematics 20 , 1968, 1432-1438.
A Presentation of the Groups PSL(2, p) | Canadian Journal of Mathematics | Cambridge Core

[4]Block design - Wikipedia

[5]Paley graph - Wikipedia

[6]Martín, P., & Singerman, D. (2012). The geometry behind Galois’ final theorem. European Journal of Combinatorics, 33(7), 1619-1630.
The geometry behind Galois’ final theorem - ScienceDirect

*1:Biplaneを訳すとすれば双平面だろうか. 使用例が見られなかったためそのまま英語を使う. ちなみに 普通の辞書を引くとbiplaneは複葉機の意味になる.