PSL(2,7)指標表手作り体験記(2)――ファノ平面・GL(3,2)・四元数・正8面体
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過去ふたつの記事の続き.
小さな非可換単純群 - PSL(2,p) - Shironetsu Blog
PSL(2,7)指標表手作り体験記(1) 3,3,8次元既約表現 - Shironetsu Blog
イントロ――ファノ平面
John Baezによる八元数の解説から[1].
射影幾何は, ルネッサンス期の画家たちによる遠近法の研究に期限を持つ, 歴史ある分野だ. 平行な線たち――たとえば線路のような――は「無限遠点」で交わるかのように見える. 視点を変えると距離や角度は変わるが, 点は点のまま, 直線は直線のまま変わらない. この事実は, 点の集合, 直線の集合, そして点は直線の上に「のる」ことを基礎とした, 次に挙げる公理を満たした, ユークリッド平面幾何学の修正につながる :
- 異なる2点について, 両方をのせているただ1つの直線が存在する.
- 異なる2直線について, 両方にのるただ1つの点が存在する.
- ある4つの点が存在して, どの3つをとっても同じ直線にのっていない.
- ある4つの直線が存在して, どの3つをとっても同じ点をのせていない.
これらの公理を満たす構造を射影平面と呼ぶ. この定義の魅力のひとつは, その「自己双対性」にある : 「点」と「直線」を, 「のる」と「のせる」を入れ替えても変わらないということだ.
引用終わり.
デレステFascinateイベントコミュのタイトルはSF小説
VelvetRose。黒埼ちとせと白雪千夜。 2019年2月26日に突如デレステの予告に登場しあらゆる話題を掻っ攫っていった2人。
驚きどころには尽きないが、自分はこれで敗北してしまった。
イベントコミュのタイトルがSF小説のタイトルから採られているのだ。
サブタイトルにSF小説のタイトルを付けるやつに人類は勝てない……。
それぞれの基となった小説を簡単にまとめる。原著は英語だがすべて邦訳がある*1。
- オープニング "Inherit the Stars"
- 第1話 "Tonight We Steal the Stars"
- 第2話 "Brightness falls…"
- 第3話 "If the Stars Are Gods"
- 第4話 "Moon is a Harsh Mistress"
- 第5話 "Lights in the Sky Are Stars"
- エンディングについて
- エンディング "The End of Eternity"
- 営業コミュ "The Door into Summer"
*1:原著の画像は初版を選んだ。邦訳はとくに拘らなかったが、だいたい文庫化された最新の版になっているはず。と言っても現在書店で手に入るのは『星を継ぐもの』・『月は無慈悲な夜の女王』・『天の光はすべて星』の3つで『輝くもの天より堕ち』はやや怪しい。『今宵われら星を奪う』・『もし星が神ならば』は古本でしか手に入らない。
よい本 1
- 畑将貴『右利きのヘビ仮説――追うヘビ、逃げるカタツムリの右と左の共進化』(東海大学出版会、2012年)
- 千葉聡『歌うカタツムリ――進化とらせんの物語』(岩波書店、2017年)
- 大場裕一『恐竜はホタルを見たか――発光生物が照らす進化の謎』(岩波書店、2016年)
- 上村佳孝『昆虫の交尾は、味わい深い…。』(岩波書店、2017年)
- 細川貴弘『カメムシの母が子に伝える共生細菌―必須相利共生の多様性と進化― 』(共立出版、2017年)
- 青木重孝『兵隊を持ったアブラムシ』(丸善出版、2013年)
- 太田悠造『海のクワガタ採集記―昆虫少年が海へ―』(裳華房、2017年)
- 塚谷裕一『森を食べる植物――腐生植物の知られざる世界』(岩波書店、2016年)
最近読んだよい本たちの紹介。すべて生き物の本。
続きを読むコワレフスカヤのコマ・量子力学?
イントロダクション
コマの運動はほとんど解析的には解けない*1. 「ほとんど」というのは「重力下で一点を固定されている」という条件の下では例外的に次の場合に解けるから.
- オイラーのコマ
重心が固定点に一致しているとき.
- ラグランジュのコマ
対称コマかつ慣性モーメントの対称軸上に重心が位置するとき.
長らく解が知られているのはこの2つの場合だけだったが, 1889年になって3つ目の場合が見つかる. 発見者はロシアの数学者ソフィア・コワレフスカヤ Sofia Kovalevskaya. 現在「コワレフスカヤのコマ」として知られた次の特殊な条件を持つコマである[1].
- コワレフスカヤのコマ
かつ重心が\(X\)軸上に位置するとき.
彼女はオイラー・ラグランジュのコマの解が楕円関数によって表されることに着目し, 特異点解析の理論からこの特殊な場合に解ける可能性を見出した[2]. さらに彼女は実際にこの場合に特殊な第一積分("コワレフスカヤ積分")を発見し, 2変数のリーマンの\(\vartheta\)関数によって解を表すことに成功した[3,4].
さて, 気になるのはコワレフスカヤのコマの量子力学バージョンである. 水素原子や調和振動子の例があり, 古典で特殊なことが起こるなら量子でも何かが起こると期待してしまう.
...しかし少し考えるとすぐに「変な縮退」が起こることはあまり期待できなくなる. というのも, 量子力学バージョンの自由な非対称コマ=オイラーのコマで自明な部分以外の縮退が解けてしまうというのはよく知られた事実だから*2.
ともあれ, 他の何かは起こるかもしれない. まずは数値的にでも解いてみよう.
劇中劇としての「屋根裏の道化師」
ふたつの「屋根裏の道化師」
ミリオンライブTB03「ラスト・アクトレス」ドラマパート「屋根裏の道化師」の考察記事。
リリース情報|アイドルマスター ミリオンライブ! THE IDOLM@STER MILLION LIVE! | Lantis web site
「劇中劇としての『屋根裏の道化師』」。ちょっと気取って付けた記事タイトルだが、きちんと意味がある。ダブルミーニングになるのだ。
「屋根裏の道化師」という作品はふたつ存在する。
ひとつは田中琴葉たちアイドルの出演する映画として。この場合には、
劇【ミリオンライブ】中劇【屋根裏の道化師】。
もうひとつはコレットたち劇団員がミリオン座で演じる演劇作品として。こちらは
劇【屋根裏の道化師】中劇【屋根裏の道化師】。
更にこの作品はコレットたちの世界で過去に起こったとされる「実話」を基にしているため事態はさらに複雑になる。ややこしい。区別するために前者を映画「屋根裏の道化師」、後者を舞台「屋根裏の道化師」と呼ぼう。そして舞台「屋根裏の道化師」の基になった犯人を殺人鬼「屋根裏の道化師」としておく。
この作品は「虚構」と「現実」がマトリョーシカ的に幾重にも重なり合っているのだ。そしてその構造こそがこの作品をサスペンスたらしめている。
以下結末にまで触れる。
なぜ8次交代群は2元体上の4×4一般線形群と同型か
イントロ──位数20160の単純群
定理(Artin,Tits)[1]
ふたつの有限単純群の位数が等しければ(1) 同型
(2)
(3)
のいずれかの組でこれらは互いに排他的(つまり(2)と(3)は非同型な組).
有限単純群の分類定理が絡むのでこの定理そのものについて語ることはとてもできないが, 例外的同型(exceptional isomorphism)を語るうえで非常に示唆的な定理だろう. 有限単純群はほとんど「位数が等しければ同型」なのである. その例外のうち(2)はLie型の単純群B,Cの組で無限系列. 一方(3)は「例外中の例外」でただひとつこの組しか存在しない.
このうちは4元体上の3次一般線形群のことだがいまは見送る.
今回注目するのは例外(3)の半分. というのがこの記事でこれから見ていくで, は交代群である.
位数20160のふたつの単純群は同型とは限らないが, 異なる無限系列─Lie型の単純群と交代群に属するこのふたつは同型になるのである. いわばArtin-Titsの定理の例外の例外の例外ともいえるこの同型を調べていく.