Shironetsu Blog

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アニメ「けものフレンズ」の系統樹・覚え書き

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 けものフレンズのアニメに登場する動物たちで系統樹を描いた。誰が誰に近いかなど見るとおもしろいとおもう。「ネコ目」(食肉目)はとりわけ多く出てきたが、こういう関係になっている。シロサイがヘラジカよりライオンに近かったりPPPメンバーの分岐順序などもおもしろい。
 主に参考にしたのは長谷川政美『新図説 動物の起源と進化―書き換えられた系統樹』(八坂書房、2011年)とWikipediaWikipediaは様々な学説が反映されて統一されていないがなるべく色々比較した。(とはいえ素人が本とネットで調べただけなので正確さを欠いていれば指摘してくださるとありがたいです)

 内容について説明すると、まず(1)は哺乳綱の詳細を除く全体図。(2)は哺乳綱の中身。(3)(4)はそれぞれ種数の多い食肉目とクジラ偶蹄目のみ取り出したもの。3叉に分かれている部分は順序がはっきりしなかった。
 オレンジ色の字は作中で文字とともに名前などが紹介された種。つまりこういうのが出たフレンズ。
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順番にメモしたので載せておこう。なおネコ目は食肉目、ネズミ目は齧歯目、ウマ目は奇蹄目とも呼ばれているもの。そもそもこれの意味を理解する目的で系統樹上の位置を確認していったのが系統樹を作成した当初の動機だった。


 1話「さばんなちほー」
ネコ目ネコ科ネコ属 サーバル Serval Cat
偶蹄目カバ科カバ属 カバ Hippopotamus

 2話「じゃんぐるちほー」
ネコ目ネコ科オセロット属 オセロット Ocelot
ウマ目バク科バク属 マレーバク Malayan tapir
ネコ目マダガスカルマングース科フォッサ属 フォッサ Fossa
ゾウ目ゾウ科アジアゾウ属 インドゾウ Indian Elephant
偶蹄目シカ科アクシスジカ属 アクシスジカ Axis dear
有隣目コブラ科キングコブラ属 キングコブラ King cobra
有毛目オオアリクイ科コアリクイ属 ミナミコアリクイ Southern tamandua
キジ目キジ科クジャク属 クジャク Peafowl
フクロネコフクロネコタスマニアデビル属 タスマニアデビル Tasmanian devil
有隣目アガマ科エリマキトカゲ属 エリマキトカゲ Frilled lizard
偶蹄目キリン科オカピ属 オカピ Okapi
ネコ目イタチ科ツメナシカワウソ属 コツメカワウソ Small-clawed otter
ネコ目ネコ科ヒョウ属 ジャガーJaguar

 3話「こうざん」
ペリカン目トキ科トキ属 トキ Japanese crested ibis
クジラ偶蹄目ラクダ科ビクーニャ属 アルパカ・スリ Alpaca suri
コウノトリ目トキ科シロトキ属 ショウジョウトキ Scarlet ibis

 4話「さばくちほー」
ネコ目ネコ科ネコ属 スナネコ Sand cat
未確認生物 ツチノコ Tsuchinoko

 5話「こはん」
ネズミ目ビーバー科ビーバー属 アメリカビーバー American beaver
ネズミ目リス科プレーリードッグ属 オグロプレーリードッグ Black-tailed prairie dog

 6話「へいげん」
クジラ偶蹄目ウシ科ウシ属 オーロックス Aurochs 
クジラ偶蹄目ウシ科オリックス属 アラビアオリックス Arabian oryx
ネコ目ネコ科ヒョウ属 ライオン Lion
被甲目アルマジロ科オオアルマジロ属 オオアルマジロ Giant armadillo
クジラ偶蹄目シカ科ヘラジカ属 ヘラジカ Moose
ネズミ目ヤマアラシヤマアラシ属 アフリカタテガミヤマアラシ African porcupine
ウマ目サイ科シロサイ属シロサイ White rhinoceros
ペリカンハシビロコウハシビロコウハシビロコウ Shoebill
有隣目カメレオン科フサエカメレオン属パンサーカメレオン Panther chameleon
ネコ目クマ科クマ属ニホンツキノワグマ Japanese black bear

 7話「じゃぱりとしょかん」
フクロウ目フクロウ科コノハズク属 アフリカオオコノハズク Northern white-faced owl
フクロウ目フクロウ科ワシミミズク属 ワシミミズク Eurasian eagle owl

 8話「ぺぱぷらいぶ」
ネコ目ネコ科オセロット属マーゲイMargay
ペンギン目ペンギン科マカロニペンギン属 ロイヤルペンギン Royal penguin
ペンギン目ペンギン科マカロニペンギン属 イワトビペンギン Rockhopper penguin
ペンギン目ペンギン科アデリーペンギン属 ジェンツーペンギン Gentoo penguin
ペンギン目ペンギン科フンボルトペンギン属 フンボルトペンギン Humboldt penguin
ペンギン目ペンギン科コウテイペンギン属 コウテイペンギン Emperor penguin

 9話「ゆきやまちほー」
ネコ目イヌ科キツネ属 ギンギツネ Silver fox
ネコ目イヌ科キツネ属 キタキツネ Ezo red fox
ネズミ目カピバラカピバラ属 カピバラ Capybara

 10話「ろっじ」
キツツキ目キツツキ科ハシボソキツツキ属 アリツカゲラ Campo flicker
ネコ目イヌ科イヌ属 タイリクオオカミ Gray wolf
クジラ偶蹄目キリン科キリン属 アミメキリン Reticulated giraffe

 11話「せるりあん
サル目オナガザル科シシバナザル属 キンシコウ Golden snub-nosed monkey
ネコ目クマ科クマ属 ヒグマ Brown bear
ネコ目イヌ科リカオン属 リカオン African wild dog
ネコ目アライグマ科アライグマ属 アライグマ Common raccoon
ネコ目イヌ科キツネ属 フェネック Fennec



一方、黒字はそういうのはなかったり会話の中に出たりした種。それぞれ話数は次の通り。

  • 1話「さばんなちほー」……サバンナシマウマ・トムソンガゼル・ナマケモノ

 かの有名なサバンナシマウマさん。サーバルさんは「シマウマちゃん」としか言っていないがあのフレンズはサバンナシマウマさんというのが定説(?)。
 ナマケモノは「あなたもしかしてナマケモノのフレンズ?」から。けものフレンズアプリ版にも「ナマケモノ」という名前のフレンズがいるがプロフィールによると正確にはフタユビナマケモノ。そもそもナマケモノには絶滅した地上性の大型ナマケモノから派生した2つの系統(フタユビナマケモノ科・ミユビナマケモノ科)があってそれぞれ独立に樹上性に移行したようで、「ナマケモノ」は亜目レベルでの総称になっている。

  • 5話「こはん」……エナガ・ツカツクリ・ニワシドリ・カヤネズミ 

 ビーバーを乗せたあとボスがバス車内から紹介するときに巣が映される。カヤネズミはややあやしい。鳥類かも? そしてその次の巣が分からない。枝と葉を寄せ集めて作った巣のようだが……。
(2017-04-21追記)
 Twitter上でこの記事を読んでくださった@bluetittitさんからこの巣についてオランウータンのものではないかとのアドバイスをいただいた。検索してその画像を見ると、確かに彼らが寝床とする巣の作り方が作中で映ったものに近い。ちなみに巣を作ることは霊長目としては極めて珍しいことらしい。かばんさんが家についてビーバーさんと意気投合する場面が続くのはなかなか意味深。
 オランウータンを系統樹上に加えるならヒトのすぐ隣になる。ヒト科なので。さらに「オランウータン」と呼ばれるのはオランウータン属の現生2種、ボルネオオランウータンスマトラオランウータン。種名でないものは括弧でくくることにしているのでオランウータンもそうすることになる。なお、けものフレンズアプリ版にはボルネオオランウータンさんがいてCV.木村珠莉さんらしい。

  • 6話「へいげん」……ヒト

 あのざわつきを味わわせてくれたハシビロコウさんの発言から。たぶんホモ・サピエンスを意味しているとはいえ「ヒト」というと生物学的にはHomo属の絶滅種を含む。そのため括弧付き。

  • 1~6話OP……ヨーロッパビーバー

 厳密に言うとヨーロッパビーバーが出たとは言いにくいが、OPの「手をつないで大冒険」のところで丸太に手をかけているフレンズの姿はヨーロッパビーバーのそれである。公式のけもフレ図鑑参照。
 そもそもアニメ版のアメリカビーバーさんはアプリ版のアメリカビーバーさんとヨーロッパビーバーさんのハイブリッドのようなデザインに変わっているのでそのあたりの事情が影響しているかも。

  • 7話「じゃぱりとしょかん」……ラクダ

 迷路のクイズから。ラクダも属レベルでの総称になる。

 PPPの初回イベントに来ていた観客たち。この中にはアニメ配信サイトCrunchrollのマスコットキャラHimeも混ざっていた。

 動物の遺物とサンドスターが反応して生まれたフレンズの例としてマーゲイが口にしたのがジャイアントペンギン。放送後の吉崎観音先生のイラストにも描かれていた。

 ヤギはアミメキリンさんの「あなたは……ヤギね!」から。カラカルはボスの映す先代サーバルさんの言葉から。コミック版のカラカルさんを見ると泣いてしまう。

  • 12話「ゆうえんち」…アードウルフ・マイルカ

 アードウルフは1話からか。2人とも声はあるのにフレンズの姿を見せていない。

覚え書き
 作るときに気になった点などいくつか列挙。

  • サーバルの属名は「ネコ属」(Felis)とされているが公式サイトの「けもフレ図鑑」ではLeptailurus servalとされており一貫性がない。カラカル属とする説もあるらしい。Leptailurus属はサーバル1種を含み、由来についてはこういう話があったが定まった和訳がないためそのままにしておいた。

"Etymology Genus Leptailurus From two Greek words; leptaleos meaning "fine or delicate" and aiolos meaning "quick moving" (Brown 1956)"
ielc.libguides.com

  • 白文字紹介ではカバ・アクシスジカ・オカピは「偶蹄目」となっていたがアルパカ・スリ以降は「クジラ偶蹄目」になっている。クジラ類がカバに近いという発見により旧来の「偶蹄目」は側系統群(単一の祖先から分化した種の一部が欠けている分類群)となってしまったため改められ現在は「クジラ偶蹄目」が正式な分類になる。ブルーレイで修正されたらしいが哀れな第3版待ち群のため未確認。
  • そういう理由でマイルカが一番近いのはカバ。
  • 「オーストラリアデビル」(Australian devil?)は検索した限りではあまり用例が見られない。オーストラリア本島に生息していたタスマニアデビルの系統が化石として2種発見されていて、便宜的に「オーストラリアデビル」と呼んでいるのかもしれない。
  • アルパカ・スリは分類階級としては品種になると思われる。アプリ版にはアルパカ・ワカイヤさんもいる。両者は毛並みに違いがあり、スリがさらさらでワカイヤはもこもこらしい。
  • イワビーとプリンセスは同じマカロニペンギン属なので靴がピンクで目が赤で黄色い冠羽があるしそういえば性格もどこか通じるところがあってよいですねと思いながら8話を見よう。
  • アードウルフはイヌ科よりネコ科に近い。これは何度も言いたくなるやつだ。天王寺動物園にもハイエナがいたが展示パネルでネコに近いことが強調されていた記憶がある。一方ズーラシアではリカオンがハイエナの仲間ではないことが書かれていた。写真を撮っていたらある家族が「ハイエナの仲間かな?」と語りあいながらリカオンゾーンに近づいてきてお手本のような反応だと感心してしまった。
  • 「イワハイラックス」はケープハイラックス、あるいはロックハイラックスと同じ。動物園だと「ケープハイラックス」だった。このネズミのような獣が齧歯目ではなくゾウに近いというのもおもしろい。アフリカ獣上目はハイラックスやゾウのほか、ジュゴンやツチブタ、ハネジネズミ(ネズミではない)など「珍獣」と称される種を多く含む。
  • ナマケモノがサルよりアリクイに近いというのも誤解されがちのよう。「異節上目」は従来アリクイやナマケモノの他にセンザンコウなども含む「貧歯目」だったが、センザンコウは食肉目や奇蹄目に近いと判明したため貧歯目は廃止されたらしい。
  • アニメには両生類が出てこないためすべてのフレンズを含む最小の分類群は羊膜類(有羊膜類)になる? ようまくフレンズ。



(2017-04-23修正)
 けもフレ系統樹(3);食肉目(ネコ目)の系統についてまずい誤りをおかしてしまっていた。イヌ科がクマ科よりネコ科に近縁になるように線を引いてしまっていたのだ。イヌはアライグマよりネコに近いのかと誤解させてしまった方がいたらごめんなさい。既に画像は差し替えたが、実際にはこのようにネコ亜目とイヌ亜目は姉妹群の関係で、イヌ亜目はさらにイヌ科のみを含むイヌ下目とクマ科やイタチ科などを含むクマ下目とに分岐する。
 作成時に紙に下書きした図には正しく描かれていたので異なるソースの参照が原因ではないはず……。改めて調べても食肉目の系統についてイヌがネコよりクマに近いという点はほとんど一定していた。