Shironetsu Blog

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モーメント2

 (参考) 特殊な擬態の一例として、〈非蟻〉(non-ant)の錯乱効果が知られている。彼らは光学機器を介した観測ではxxxxx属の蟻と見間違えようがない。しかし裸眼ないしは視力矯正器具のみを通して視認した者は「蟻ではない何か無害なもの」と誤認する。悲劇的な事例の一つに、肉に噛みつく蟻の群れを自分の体毛だと思い込んだ犠牲者が痛みすら感じることなくそのまま

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 (灰白色の粥状物をたたえた槽の中に点々と浮かぶ黒い米粒大の粒子──"胚"は培地そのもの、無生物を親としていた──"泥"である)
──研究チームは海底の泥の中の何が発生に寄与するのか、あるいは個体数を調節しているのか突き止めました。今やウナギ養殖は豆腐作りのようなものですよ。材料を混ぜて固まるのを待てばいい。(ウナギの自然発生説)

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 数万年に渡る彼女の丹念で無意識的な育種は広大な野菜農園を色鮮やかな花畑へと変えていった。美しい白い花を咲かせるかつてのキャベツの葉は固く、爽やかな香りを漂わせる花を冠するニンジンの根は頼りないほどに細い。相葉夕美にとって植物は花であり、その味には興味がなかった。(相場夕美のウワサ② 野菜を育てたこともあるが実より花を優先してしまいうまく育たなかったらしい。)

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 増えすぎたヒトを駆除するために放たれた"超ヒト"により人間はロトカ・ヴォルテラ方程式の参加者になる――

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 "こいつは釘を打つのにもってこいなんだ──こんなふうに" 防寒着に身をくるんだ男は採ったばかりの果実を手にして木の下で調査員に実演してみせた。しかしここは熱帯。間違いない、熱力学違反植物"釘打ちバナナ"だ。放置して繁殖を許せばこの島も環境改変され、まもなく氷に呑まれてしまうだろう。

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 紙需要の急激な高まりに応えるべく製紙業界は羊皮紙用家畜の品種改良を進め、脚が見えなくなるほど幾重にも垂れた皮膚を持つ無毛の羊(※皮膚病に注意)を生み出した。

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 幸運のお守りに用いられるウサギの足の収穫効率を高めるため生み出されたウサギにとって空を蹴る100本の脚は歩行には無用の長物である(刈り取っても再生するため一生のうちにおよそその10倍の足を採ることができる)

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 典型的な第二法則違反動物サーマルキャット(thermal cat)は空気から取り出した余剰エネルギーを再び熱として逃がすためラジエーターの役割を果たす長い脚と耳、比較的細身な胴を持つがこれをアレンの法則の一例であると普通生物学者の前で語ると煙たがられる。

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 鳥インフルエンザによって一度滅んだ世界で生存者たちの作り上げた宗教は鶏肉を禁じたがその理由は文明の発展とともに忘れられていくのだった。

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 当社と提携している献血場で患者から採られた血液はその日のうちに本工場へ届けられ、特許取得の技術で精製された高品質な血砂糖(ちざとう)は生の香りも保持しておりVの菓子職人たちに高く評価されています。

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 厳密Zipf則(出現頻度がn番目に高い英単語の出現頻度はnに反比例)の肯定的な証明により英語は消滅の危機に瀕したが、調和級数の収束に関する規制緩和を認める法案の可決と即時執行によりnull英語(単語のない英語)の形成は阻まれ、言語学者はnull仏語との同一性に悩まされずに済んだ。
(Zipf則ジップの法則 - Wikipedia)

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 太りすぎた白色の無毛のラクダのような生き物の群れが恐慌をきたしてハイウェイの横断を試みたために作られた鉄と肉の山の撤去作業がいつも塩の嵐により難航し塩漬け肉目当ての死肉漁りの"コウモリ"を招き寄せるのは偶然ではなく、それはちょうど狩人だったころのヒトがバイソンの群れを追い詰めて崖から落とすように――

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 「葉っぱの表面に白い線がうねうねと通っていることがあるでしょ。あれは葉の内側の組織をハモグリバエの幼虫が食べ進んだ跡なんですよ。ちょうどそれと同じようなものです。あなたはゆりかごとごはんを幼虫に提供しながら肌の上で入れ墨が伸びていく様子を楽しめるんですよ。羽化して飛び立つまで。(フライ・タトゥー)

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 高収量品種の開発によって〈模範的ヒト〉(爪の垢を薬品として利用)の個体数は回復した。

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 標準的な人口増停止手順では、始めに〈ふたりっ子政策〉ウィルスが散布されます。

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 "吸血紙"は触れた者の指をふちで切り血を吸うと染みを残さずにその特異性質のみを近くのA4用紙に"転移"させるが、距離が長くなるほど多量の血液を要するため、転移距離測定のため運びこまれた軌道実験室で~~(中略)~~の犠牲者を出す結果となり隔離計画は断念され現在も都市に潜伏中。

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 彼らの祖先が編み出したのは火炙りを免れる術でした──加熱に耐える力ではなく。高温で分解する分泌物;"スパイス"は、調理を覚えた腐肉食動物に中間宿主の遺骸:生肉を飲み込ませるための発明です。寄生虫たちは我々の舌を楽しませてきてくれた友。成分物質のみを抽出するやり方には私は反対ですよ。

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 君の仕事は三日に一度この箱を一面ずつ新しい素材に取り替えることだ。中にいる〈広所恐怖症患者〉が出ないようにね。彼は外に出ることが大嫌い……ほんとうに大嫌いだが、意に反して皮膚から箱を溶かす物質を出してしまう。溶解液産生までの順応にかかる時間は五日。一度使った素材は再び使えない。万が一箱の外に出ると……

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 ああ、トライポフォビアのお客様がセンコブラクダ(背中におよそ千個のコブがあるラクダ。コブには水が詰まっていて半透明)の背中を真上から直視してしまったのですね、お気の毒に……

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 「今まで"イヌ"と呼ばれていた動物は異なる二つの系統よりなることが分かりました……以前より頭骨の形状の差異などの解剖学的特徴から指摘されていた説です。今回の分子系統解析はそのさらなる裏付けを与えました。一方はオオカミから、もう一方は……齧歯類から。ええ、収斂進化です。大きな"ネズミ"たちがヒトのそばで暮らすうちに……」

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 一年で唯一嘘をつくことが認められる今日という日の夜、印刷場から読者の手に渡り炎の中に至る一日限りの生を終えた小説たちが各町の焚書場で灰になり、また一年フィクションの存在することが許されない日々が始まる。(エイプリルフール)

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 「何を語っても彼が笑いを絶やさないのは」研究員は説明した。「あらゆる文章をジョークとして解釈するからです。そして恐るべきことにその面白さを損ねずに説明してみせる─『感染』するんですよ」溜息をつきながら「おかげで私は読みかけの小説を諦めることになった。思い出し笑いは苦しいものです」

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 「土にこれを混ぜると巣の強度が上がる」担当者は手の平に載せた灰色のペレットを見せた。そしてそのまま握った手で畑のほうに林立する土の塔を指差しながら「すると巣は野生下より遥かに高く伸びる。シロアリの面積当たり収量も上がる。農学という名のシロアリ用タワーマンションのための建築学だよ」

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 「小惑星の形をよくじゃがいもに喩えますよね。その逆ですよ」男が茎を握って引き抜くとよく育った馬鈴薯が土の中から現れた。顔まで持ち上げて指差しながら「よく見てください。全部同じ形でしょう。それだけでも奇妙です。もっと奇妙なのはこれが全て…イトカワの精巧なミニチュアだということです」

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 〈追跡紙〉tracing paper(表面に匂い分子の受容体が密に埋まっている)を折って作られた「蛾」は立派な尾行役になる。

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 侵略。初めは古本屋の棚だった。『ルリタガネの一生』と題する向こう側のファーブルが書いた本だ。それを読んだ物好きが「観察」を始めた。存在するはずのない虫は彼の発見後至る所で見られるようになった。系統樹は書き換わりつつある……下流から。この後に何がやってくるか?人間だよ。隣の世界の。

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 猫好き大富豪の抱いた理想は猫のための天国、彼がテラフォーミング処理済みの惑星を買い取り放ったのは猫と餌動物たち、しかし時の流れの中で猫は適応放散を繰り返し地表は多種多様な「かつて猫だったもの」の末裔に満ちていく。

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 アニメや漫画などの海水浴回で砂浜の砂を素材にして異常に精巧かつ巨大な建造物(砂の城というやつだ)を短時間で作るキャラクターの能力に目をつけた野心的な事業家が産業利用しようとした結果が、ほら、衛星写真を見ても分かるだろ、海岸線が書き換わっている。ここで起こったこと…いや現在も進行中の事態を語るには……

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 誰かに食べられていたわけではなく跡形もなく消えていたんだ。冷蔵庫の中のプリンは。実験はプリンの種類を変えることから始めた。次に誰かが容器に目をつけた。カップと蓋だけではなく中にプリンを入れた箱も消える。密封された鉛の箱でも。そのあとは人だった。1kgのプリンを食べてから冷蔵庫に入った彼は……

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 新鮮さを楽しみたいといった理由でネタバレに否定的な視聴者は実はかなり多く、このニュース番組終了後にYoutubeにアップされる「明日の予告」(翌日に発生する事件の内容が分かってしまう)を嫌ってそれを見ないようにしている。

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 写真を見たことがあると思う。背中にヒトの耳のようなものが生えたネズミ。作成者の名前からバカンティマウスなんて呼ばれている。 患者の死因を調べるために解剖を行うと喉頭は……耳で塞がれていた。大小様々の耳が内壁に生えていたんだ。会話を盗聴されているという患者の生前の訴えはもしかすると……

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 天気予報によると明日はブレインストーム(脳嵐)だ。網を拡げよう。風に乗ってやってくる脳が地面に打ち付けられて崩れてしまう前にキャッチするんだ。飛んできた脳の由来は気にしなくていい。とにかくそれは再接続すれば優秀な計算資源になるんだ。

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 なぞなぞから答えを奪うために獲得したとしか思えないんだ、彼女の異常な能力は。つまり、"パンはパンでも食べられないパンは?"
 アルミニウム製のフライパンを難なく食べた。鉄板も噛み砕いた。シクロプロパンの麻酔作用も効かない。審判、戦犯、典範……。
問題はこの国もパンだということだ。(大原みちるはパンが好き)

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 扉に挟まれていた黒板消しが頭の上に落ちてくると、まるで文字を消すようにそのままするすると抵抗なく教師の体の前半面を……

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 生前に"光の粉"処置を施すと心停止と同時に全身が微粒子(色・輝度はお好みで)とガスに変化、散逸してまるで映画のようなお別れを演出できると人気を博したが、反応速度を変えれば自爆兵器になることにすぐに気付いた誰かがいた。

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 夢を植物だと考える。夢を食べる獏は草食動物。その一種が農業を発見した。知性があるかどうかは分からない、ハキリアリのようなものかもしれない。かれらが夢の増産に取り組んだ。夜にしか生えないのは不都合だ。
 現在どこの病院も夢から目を覚まさない患者でパンクしそうになっているのは

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 畑でこの芋を育てているあの"カバ"たちは元から家畜だったわけじゃない。野生下でこの植物と共生していたんだ。かれらはヒトが管理しはじめる前から農民だった。しかし祖先は絶滅してしまい残ったのがあの奴隷たちだ。
(農業を営む脊椎動物がヒトの他にいない理由は?)

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 当社が開発した"偽すべからく語"セットをあなたの言語中枢にダウンロードすれば、漢文訓読風の響き(誰にも同じ印象を与えられます──辞書に載っていないにも関わらず!)を持った約1000語を自由自在に使いこなして発言に重々しさを加えることができます。

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 3秒ルール!!と叫びながらたまたま通りがかった人が一気にかき集めると屋上から落ちてきたそれは息を吹き返した。こういうときに救命処置の経験が役に立つ。

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 舌猫(tongue cat)が、細かい棘のびっしりと生えているぬめぬめとしたピンク色の皮膚で体側から飼い主の足を擦ると傷だらけに……

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 「らくらく減量」「原材料名:あなた」「内容量:200g」と表示されたアルミ蒸着フィルムの袋の封をひとつ破るとその人の体重は200g減少し、記録には心筋の喪失に至るまで最大180袋の開封に耐えた例が残されている。

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 (注1) 大豆は乳で子供を育てるが最新の分子系統解析から哺乳類とは別系統の生物であることが明らかになった(Nwplloy, 20P9). これも収斂進化のよい一例となっている.

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 「ペンフィールドホムンクルス。脳に関する本で見たことがあるだろう。大脳皮質の運動野ないし体性感覚野の面積比に従って対応する身体部位を拡大縮小した人体模型。
 報告は受けていた。しかし安置所の実物を見てもなお悪趣味な冗談としか思えなかった。ベッドに横たえられたホムンクルスたち。肥大した頭と拳。改変前後で体重は変わらず、感染は接触を介し……」

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 毛髪の庭、"刈り込み"を行う陸棲タカアシガニたちの色はトリコロール、理容師の象徴。

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 ヒトの顔面の皮膚に痣のように投影される生物たち、たとえば人面犬は顎の周りを縄張りとし群れで人面魚を狩る。

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 歴史の教師が教科書を読み上げるかのような単調な説明をし、数学の教師はクラスの優等生に黒板の前で問題を解かせ、国語の教師は居眠りしている生徒を名指しして続きを音読させようとするという奇妙な異変から自分が漫画の世界に囚われていることに気付いた生徒はまずメインキャラクターを探し始めた。
 フィクション世界から脱出するための方法。メインストーリーに干渉してノンフィクションないし実話を基にした創作ということにするべく、異常な現象が主人公の周りで発生してファンタジー化することを妨害するため不断の監視を強いられる(が接触事象の発生により夢オチ/幻覚作戦を発動させることになり──

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 大きさ・色・模様・匂い・腐敗度・基本的な輪郭等30項目をお好みで選んでいただき(予算に応じた"おまかせ設定"も可能です!)、供物を振り込んでいただければ希望の日時に指定された海岸まで漂着形式で未知生物死骸をお届けします!(昨年度の人気商品は蛍光を発する"分解した群体生物"でした)

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 イセエビに似た節と甲のある尾とインコを思わせる嘴を頭に備えた、全体的にはテナガザルのような姿の動物が両腕を広げた姿にして縄で物干し竿に縛り付けられ日光に晒されている様子がこの部屋から見え、はじめは向かいの住人がベランダで縮んだシャツを干しているのだと誤解してしまった。

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 「233羽の中の1羽。第13段階、それまでなら普通の道具で潰せる。段階進行毎に強化するんだ。たとえば第9段階から食餌が不要になる。1羽だけでも破壊できれば〈フィボナッチ増殖〉は停止、1羽を残して分解が始まる。我々の最大の対処事例は第22段階だったが──おそらくその次で不死になる」(フィボナッチの兎のつがい)



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 ツイート採掘その2。 2月半ばより。 家畜とか品種改良とか明らかにけものフレンズと関連して興味を持って読んだ本の影響が出ており単純さがうかがえる。しかしけものフレンズをリアルタイムで見ては動物園に足を運んでおった春休みはやはりこう……豊かだったな……。