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ヴァレンティナー群と6次交代群の8次元表現

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つづき.

 ヴァレンティナー群(Valentiner group)の存在を知っていながら6次交代群の8次元既約表現の構成法がよくわからない, というのはさすがに鈍かった. {{\bf 3}\otimes\overline{\bf 3}={\bf 8}\oplus{\bf 1}}.

 初めに要点だけ説明する.

 正20面体群{{\mathcal I}\subset SO(3)}が複素射影平面{{\mathbb C}P^2}に作用すると考える. 射影変換をひとつ加えることで, 新たに生成される群が{PSL(3,\mathbb{C})}の部分群として有限になるようにできる. この群は6次交代群{{\frak A}_6}に同型になる. これを{SL(3,\mathbb{C})}に引き戻すと, {\mathbb{Z}/3\mathbb{Z}}に同型な中心を持つ6次交代群の3重被覆になる. これがヴァレンティナー群{{\mathcal V}=3\cdot{\frak A}_6}である. {SU(3)}の部分群として得たヴァレンティナー群から, {SU(3)}の随伴表現の制限によって8次元表現を作る. これが{{\frak A}_6}の忠実な既約表現になる.


正20面体群ミニマム

 正20面体群を具体的につくる. 詳しくは以前の記事を参照.
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 単位超球上にとった正600胞体の頂点120個は{\mathbb{R}^4}で以下の3組に分けられる.

  • {(\pm 1,0,0,0)}の座標を入れ替えたもの...8個.
  • {\left(\pm\frac{1}{2},\pm\frac{1}{2},\pm\frac{1}{2},\pm\frac{1}{2}\right)}...16個.
  • {\left(0,\pm\frac{1}{2},\pm\frac{\phi}{2},\pm\frac{\phi^{-1}}{2}\right)}の座標を偶置換で入れ替えたもの...96個.

ただし{\phi=(1+\sqrt{5})/2}.

 四元数{t+x{\bf i}+y{\bf j}+z{\bf k}\in{\mathbb H}}{(t,x,y,z)\in{\mathbb R}^4}と同一視すると, 正600胞体の頂点は四元数の積によって群をなし, 2項正20面体群{\tilde{\mathcal I}\cong SL(2,{\mathbb F}_5)}, あるいは5次交代群{{\frak A}_5}の2重被覆群と同型である.

 次の準同型写像の制限によって, 中心{\{1,-1\}}を核に持つ, 2項正20面体群から正20面体群{{\mathcal I}}への準同型写像ができる.

{a+b{\bf i}+c{\bf j}+d{\bf k}\in Sp(1)\mapsto
\begin{pmatrix}
a^2+b^2-c^2-d^2&2(-ad+bc)&2(ac+bd)\\
2(ad+bc)&a^2-b^2+c^2-d^2&2(-ab+cd)\\
2(-ac+bd)&2(ab+cd)&a^2-b^2-c^2+d^2
\end{pmatrix}
\in SO(3)}

 3次特殊直交群の部分群として実現される正20面体群は5次交代群の忠実な表現{\rho :{\frak A}_5\rightarrow{\mathcal I}}でもある. 生成元は次のようにとれる.

{\begin{align}
(0,0,0,1)&\mapsto\begin{pmatrix}-1&0&0\\0&-1&0\\0&0&1\\\end{pmatrix}=\rho(\,(12)(34)\,)\\
\left(\frac{1}{2},\frac{1}{2},\frac{1}{2},\frac{1}{2}\right)&\mapsto\begin{pmatrix}0&0&1\\1&0&0\\0&1&0\\\end{pmatrix}=\rho(\,(123)\,)\\
\left(-\frac{\phi^{-1}}{2},0,\frac{\phi}{2},\frac{1}{2}\right)&\mapsto
\frac{1}{2}\begin{pmatrix}-\phi&\phi^{-1}&-1\\-\phi^{-1}&1&\phi\\1&\phi&-\phi^{-1}
\end{pmatrix}=\rho(\,(12345)\,)
\end{align}}


ヴァレンティナー群を見つける

{SO(3)}は5次以下の交代群を部分群に持つ. では6次交代群はどこで現れるかというと, 直交群の部分群としては{SO(5)}に初めて含まれる. ここに射影変換を含めると{PSL(3,\mathbb{C})}に現れる. 普通に"表現"というときの表現ではないが, 3×3行列として書ける. 2項正20面体群が2×2行列で書けることに似ている.

 その名が冠せられているHerman Valentinerは19世紀の数学者.1889年の論文"De endelige Transformations-gruppers Theori"でこの群を見つけているそうだが, 読めていない.

 ここでのやや"発見的"な議論は次の論文に依っている.
Scott Crass "Solving the sextic by iteration: A study in complex geometry and dynamics"
[math/9903111] Solving the sextic by iteration: A study in complex geometry and dynamics

 まず{{\frak A}_6}{\{1,2,3,4,5,6\}}に作用していると考えると, ひとつの{{\frak A}_5}部分群は6の固定化部分群である.

{{\frak A}_5\cong{\mathcal I}\cong{\rm Stab}\{6\}}

この部分群に対し,(1234)(56)を加えることで生成される群はもとの{{\frak A}_6}である.

{{\frak A}_6=\langle {\rm Stab}\{6\},(1234)(56)\rangle}

つまり(1234)(56)の表現を見つけることが目標になる.

{{\rm Stab}\{6\}}は次の形で正4面体群{{\mathcal T}}に同型な4次交代群{{\frak A}_4}を含む.

{{\mathcal T}\cong {\frak A}_4 =\langle (12)(34),(123)\rangle \subset {\rm Stab}\{6\}}

ここに先ほどの(1234)(56)を加えると, 生成される群は4次対称群{{\frak S}_4}である. これが正8面体群に同型であることはいま思い出さなくていい.

{{\frak S}_4\cong\langle {\frak A}_4,(1234)(56)\rangle}

正4面体群と組み合わせることで4次対称群を生成するような, (1234)(56)に対応する3×3行列を見つければよいということになる.

これを考えるため, まず{{\frak A}_4}に同型な{{\mathcal I}}の部分群をとる. 上で既に書いたが,

{\begin{align}
\rho(\,(12)(34)\,)=\begin{pmatrix}-1&0&0\\0&-1&0\\0&0&1\\\end{pmatrix},\ \ \ 
\rho(\,(123)\,)=\begin{pmatrix}0&0&1\\1&0&0\\0&1&0\\\end{pmatrix}
\end{align}}

であった. これらは{{\mathbb R}^3}のベクトル

{\begin{align}
v_1=\left(\!\!\begin{array}{c}1\\-1\\-1\end{array}\!\!\right),\ \ \ 
v_2=\left(\!\!\begin{array}{c}-1\\1\\-1\end{array}\!\!\right),\ \ \ 
v_3=\left(\!\!\begin{array}{c}-1\\-1\\1\end{array}\!\!\right),\ \ \ 
v_4=\left(\!\!\begin{array}{c}1\\1\\1\end{array}\!\!\right)
\end{align}}

に対して

{\begin{align}
\rho(\sigma)v_i\mapsto v_{\sigma(i)}
\end{align}}

と忠実に作用する. これを{{\mathfrak S}_4}に拡張するには, いちばん単純には

{\rho(\,(1234)\,)=\hspace{-.6em}?\ 
\begin{pmatrix}
0&-1&0\\1&0&0\\0&0&1
\end{pmatrix}}

を加えて正8面体群にすれば

{\begin{gather}
\rho(\sigma)\{v_i,-v_i\}\mapsto\{v_{\sigma(i)},-v_{\sigma(i)}\}\\
\sigma\in{\frak S}_4
\end{gather}}

が確かに満たされるが, 正20面体群の生成元と合わせたとき群の有限性が失われる. 厳密には証明しないが, {\rho(\,(12345)\,)}との積を取ったときにトレースが{2\cos(2\pi/n)+1,\ n\in{\mathbb N}}にならないことを見ればよい. そもそも{SO(3)}の有限部分群の分類を知っていれば, 正8面体群を真の部分群に含むものが存在しないので当たり前ではある.

 解決策はこうだ. まずユークリッド幾何学的な描像を越えて{{\mathbb C}P^2}で考える. 射影表現を考えることになるためこれを{\tilde{\rho}}と書く. {{\mathcal I}}に対しては今まで考えていた{\rho}と同じものを取る.

 観察. {\rho(\,(123)\,)}{v_4}を固定する.しかし定数倍を無視すればあと2つの固有ベクトルも不変である.つまり{{\mathbb C}P^2}上で{\tilde{\rho}(\,(123)\,)}は3本の元を固定する. これらを次の{V_4}とする.

{\begin{align}
V_4&=\{\lbrack 1,1,1\rbrack, \lbrack 1,\omega,\omega^2\rbrack,\lbrack 1,\omega^2,\omega\rbrack\}\subset{\mathbb C}P^2
\end{align}}

ただし, {\omega=(-1+\sqrt{3}\,i)/2}は上半平面にいる1の原始3乗根. 適当に{\tilde{\rho}(\,(123)\,), \tilde{\rho}(\,(12)(34)\,)}を作用させることで他の3つも得る.

{\begin{align}
V_1&=\{\lbrack 1,-1,-1\rbrack, \lbrack 1,-\omega,-\omega^2\rbrack,\lbrack 1,-\omega^2,-\omega\rbrack\}\\
V_2&=\{\lbrack 1,-1,1\rbrack, \lbrack 1,-\omega,\omega^2\rbrack,\lbrack 1,-\omega^2,\omega\rbrack\}\\
V_3&=\{\lbrack 1,1,-1\rbrack, \lbrack 1,\omega,-\omega^2\rbrack,\lbrack 1,\omega^2,-\omega\rbrack\}
\end{align}}

{\begin{align}
\tilde{\rho}(\,(12)(34)\,)V_1=V_2,\ \ \ \tilde{\rho}(\,(123)\,)V_1=V_2
\end{align}}
等を満たすことが確かめられる.

 これらの集合に対して(1234)の置換として作用するような変換を探す. といっても先の行列はすでにこの性質を満たしている(共役による作用が正4面体群に対して外部自己同型写像として作用するので当然). 多少根気よく探すと,

{\begin{align}
Q=\begin{pmatrix}0&0&-\omega^2\\0&1&0\\\omega&0&0
\end{pmatrix}
\end{align}}

が新たな候補として挙がる. 正4面体群と合わせて{PSL(3,\mathbb{C})}上に4次対称群を生成することは確かめられる. ただし先ほどとは異なり, 虚数が含まれるため{\mathbb{R}P^2}を固定しない. 問題は正20面体群と合わせたときに有限群を生成するかだが,

{\begin{align}
(\rho(\,(12345)\,)Q)^4=\begin{pmatrix}1&0&0\\0&1&0\\0&0&1\end{pmatrix}\\
\end{align}}

等が満たされる*1

 ここまでの結果をまとめる. 次の生成元によって{{\frak A}_6}の射影表現が決まる.

{\begin{gather}
\tilde{\rho}:{\frak A}_6\rightarrow PSL(3,\mathbb{C})\\
(123)\mapsto\begin{pmatrix}0&0&1\\1&0&0\\0&1&0\\\end{pmatrix},\ \ \ 
(12)(34)\mapsto\begin{pmatrix}-1&0&0\\0&-1&0\\0&0&1\\\end{pmatrix}\\
(12345)\mapsto\frac{1}{2}\begin{pmatrix}-\phi&\phi^{-1}&-1\\-\phi^{-1}&1&\phi\\
1&\phi&-\phi^{-1}
\end{pmatrix},\ \ \ 
(1234)(56)\mapsto\begin{pmatrix}0&0&-\omega^2\\0&1&0\\\omega&0&0\end{pmatrix}
\end{gather}}

 さて, これを{SL(3,\mathbb{C})}に持ち上げる, つまり{{\mathbb C}P^2}に作用する射影変換ではなく{\mathbb{C}^3}のベクトルに作用する線形変換に戻す. すると中心を{Z=\{1,\omega,\omega^2\}}(スカラー行列)に持ち, {{\mathcal V}/Z\cong {\frak A}_6}を満たす位数3×360=1080の群になる. これがヴァレンティナー群{{\mathcal V}}である*2. 1の原始3乗根のスカラー行列を含むことは,

{\begin{align}
\rho(\,(12)(34)\,)(\rho(\,(1234)(56)\,)\rho(\,(123)\,))^2=
\begin{pmatrix}\omega^2&0&0\\ 0&\omega^2&0\\ 0&0&\omega^2\end{pmatrix}
\end{align}}

などから確かめられる.


交代群の被覆群

{{\mathcal V}}は6次交代群の3重被覆に他ならない. しかし他の交代群では普通こういうことは起こらない. 6,7次以外の交代群には2重被覆しか存在しない. 6,7次交代群にのみ例外的に3重被覆が存在する.

https://en.wikipedia.org/wiki/Covering_groups_of_the_alternating_and_symmetric_groups

 このWikipediaの記事に書いてあることを鵜呑みにすることくらいしかできないが, Schurが対称群と交代群の射影表現を調べる過程でそれらの被覆群に関する主要な結果を得たらしい.


SU(3)の有限部分群

さて, うまく表現行列を選んだおかげで上で得たヴァレンティナー群の実現はユニタリ表現になっている. 当然だが行列式もすべて1なので{SU(3)}に入っている. つまり{SU(3)}の有限部分群なのである.

{SU(3)}素粒子物理学で果たす役割の大きさゆえか, {SU(3)}の有限部分群について書かれた論文はしばしば物理学に関連付けられていた.
Patrick Otto Ludl "The finite subgroups of SU(3)"
https://indico.desy.de/indico/event/5590/session/1/contribution/55/material/slides/0.pdf
Patrick Otto Ludl "Comments on the classification of the finite subgroups of SU(3)"
[1101.2308] Comments on the classification of the finite subgroups of SU(3)


 比較的分かりやすい無限系列, {SU(2)}{SO(3)}部分群に加えて, いくつかの例外群が含まれている. ヴァレンティナー群の他,

  • 5次交代群の次に大きな非可換単純群である{PSL(2,\mathbb{F}_7)}の忠実な3次元表現, 位数168.
  • {({\mathbb Z}/3{\mathbb Z})\rtimes SL(2,\mathbb{F}_3)}と記述されるHessian群. 位数216.

Michela Artebani, Igor Dolgachev "Hesse pencil of plane cubic curves" [math/0611590] The Hesse pencil of plane cubic curves


8次元表現

 {{\mathcal V}}の3次元ユニタリ表現が得られたので, ここから8次元表現を作ることができる. {8=3^2-1}. {SU(3)}の随伴表現である.

 まず{\mathfrak{su}(3)}{{\mathbb{R}^8}}基底を用意.ゲルマン行列.

{\begin{gather}
\lambda_1=\begin{pmatrix}0&1&0\\1&0&0\\0&0&0\end{pmatrix},\ \ \ 
\lambda_2=\begin{pmatrix}0&-i&0\\i&0&0\\0&0&0\end{pmatrix},\ \ \ 
\lambda_3=\begin{pmatrix}1&0&0\\0&-1&0\\0&0&0\end{pmatrix},\ \ \ 
\lambda_4=\begin{pmatrix}0&0&1\\0&0&0\\1&0&0\end{pmatrix}\\
\lambda_5=\begin{pmatrix}0&0&-i\\0&0&0\\i&0&0\end{pmatrix},\ \ \ 
\lambda_6=\begin{pmatrix}0&0&0\\0&0&1\\0&1&0\end{pmatrix},\ \ \ 
\lambda_7=\begin{pmatrix}0&0&0\\0&0&-i\\0&i&0\end{pmatrix},\ \ \ 
\lambda_8=\frac{1}{\sqrt{3}}\begin{pmatrix}1&0&0\\0&1&0\\0&0&-2\end{pmatrix},\ \ \ 
\end{gather}}

{\mathfrak{su}(3)}内積{\langle A,B\rangle=\frac{1}{2}{\rm Tr}(AB)}で定めるとこれらは正規直交基底をなす. {SU(3)}の8次元表現は

{\begin{align}
\rho_8 : SU(3)\rightarrow SO(8)\\
U\mapsto {\rm ad}(U)\\
{\rm ad}(U)X=UXU^{\dagger}
\end{align}}

行列要素は.

{\begin{align}
\rho_8(U)_{ij}=\frac{1}{2}{\rm Tr}(\lambda_iU\lambda_jU^\dagger)
\end{align}}

で決まる. ゲルマン行列が正規直交基底になるように内積を決めたので直交行列が得られる. これを有限部分群である{{\mathcal V}}に制限する. 核が{\{1,\omega,\omega^2\}}なので{{\mathcal V}}の忠実な表現ではなく, {{\frak A}_6}の忠実な表現になる. 生成元に対してその表現行列を書いてしまおう.

{\begin{gather}
\rho_8(\,(123)\,)=\begin{pmatrix}
0&0&0&1&0&0&0&0\\
0&0&0&0&-1&0&0&0\\
0&0&-1/2&0&0&0&0&-\sqrt{3}/2\\
0&0&0&0&0&1&0&0\\
0&0&0&0&0&0&-1&0\\
1&0&0&0&0&0&0&0\\
0&1&0&0&0&0&0&0\\
0&0&\sqrt{3}/2&0&0&0&0&-1/2
\end{pmatrix},\ \ \ 
\rho_8(\,(12)(34)\,)=
\begin{pmatrix}
1&0&0&0&0&0&0&0\\
0&1&0&0&0&0&0&0\\
0&0&1&0&0&0&0&0\\
0&0&0&-1&0&0&0&0\\
0&0&0&0&-1&0&0&0\\
0&0&0&0&0&-1&0&0\\
0&0&0&0&0&0&-1&0\\
0&0&0&0&0&0&0&1
\end{pmatrix}\\
\rho_8(\,(12345)\,)=\frac{1}{4}
\begin{pmatrix}-2&0&\phi^{-2}&-2&0&0&0&\sqrt{3}\,\phi\\
0&-2\phi^{-1}&0&0&-2\phi&0&2&0\\-\phi^{-2}&0&(3\phi\!-\!2)/2&\phi^2&0&-\sqrt{5}&0&\sqrt{3}\,\phi/2\\-2&0&-\phi^2&0&0&-2&0&-\sqrt{3}\,\phi^{-1}\\0&-2\phi&0&0&2&0&2\phi^{-1}&0\\0&0&-\sqrt{5}&2&0&2&0&\sqrt{3}\\
0&-2&0&0&-2\phi^{-1}&0&-2\phi&0\\-\sqrt{3}\,\phi&0&\sqrt{3}\,\phi/2&\sqrt{3}\,\phi^{-1}&0&\sqrt{3}&0&-(3\phi\!-\!2)/2
\end{pmatrix}\\
\rho_8(\,(1234)(56)\,)=\frac{1}{2}
\begin{pmatrix}
0&0&0&0&0&1&-\sqrt{3}&0\\0&0&0&0&0&-\sqrt{3}&-1&0\\
0&0&1&0&0&0&0&-\sqrt{3}\\0&0&0&1&\sqrt{3}&0&0&0\\
0&0&0&\sqrt{3}&-1&0&0&0\\-1&\sqrt{3}&0&0&0&0&0&0\\
\sqrt{3}&1&0&0&0&0&0&0\\0&0&-\sqrt{3}&0&0&0&0&-1
\end{pmatrix}
\end{gather}}

共役類の代表元はこれらに加えて単位行列, および次のふたつ.

{\begin{align}
\rho_8(\,(142)(356)\,)&=\frac{1}{4}\begin{pmatrix}-1&\sqrt{3}&\phi^{-2}&0&0&1&-\sqrt{3}&-\sqrt{3}\,\phi\\
\sqrt{3}\phi^{-1}&\phi^{-1}&0&\sqrt{3}&-1&\sqrt{3}\,\phi&\phi&0\\
\phi^{-2}/2&-\sqrt{3}\,\phi^{-2}/2&-(3\phi-2)/2&-\sqrt{5}&\sqrt{15}/2&\phi^2/2&-\sqrt{3}\,\phi^2/2&\sqrt{3}\,\phi/2\\
1&-\sqrt{3}&\phi^2&-1&-\sqrt{3}&0&0&-\sqrt{3}\,\phi^{-1}\\-\sqrt{3}\,\phi&-\phi&0&-\sqrt{3}\,\phi^{-1}&\phi^{-1}&\sqrt{3}&1&0\\
0&0&-\sqrt{5}&-1&-\sqrt{3}&-1&\sqrt{3}&-\sqrt{3}\\
\sqrt{3}&1&0&-\sqrt{3}\,\phi&\phi&\sqrt{3}\,\phi^{-1}&\phi^{-1}&0\\
\sqrt{3}\,\phi/2&-3\phi/2&-\sqrt{3}\,\phi/2&\sqrt{3}/2&3/2&\sqrt{3}\,\phi^{-1}/2&-3\phi^{-1}/2&-(3\phi-2)/2
\end{pmatrix}\\
\rho_8(\,(13524)\,)&=\frac{1}{4}\begin{pmatrix}
0&0&\sqrt{5}&2&0&2&0&-\sqrt{3}\\
0&2&0&0&-2\phi^{-1}&0&-2\phi&0\\-\sqrt{5}&0&1/2&\phi^{-2}&0&-\phi^2&0&-\sqrt{15}/2\\
2&0&-\phi^{-2}&-2&0&0&0&-\sqrt{3}\, \phi\\
0&-2\phi^{-1}&0&0&2\phi&0&-2&0\\-2&0&-\phi^2&0&0&2&0&2\phi^{-1}&0\\
0&2\phi&0&0&2&0&2\phi^{-1}&0\\
\sqrt{3}&0&-\sqrt{15}/2&\sqrt{3}\,\phi&0&-\sqrt{3}\,\phi^{-1}&0&-1/2
\end{pmatrix}
\end{align}}

{\phi=(1+\sqrt{5})/2}を含む式は{\phi^2=\phi,\phi^{-1}=\phi-1,\phi^{-2}=-(\phi-2)}等でなるべく少ない項で表しているが, ほんとうは{\phi}の一次の項だけが現れるように書ける*3.

 これで指標表を書ける.

{\begin{align}
\begin{array}{|c|ccccccc|} \hline
C&\lbrack 1^6\rbrack&\lbrack 1^33\rbrack&\lbrack 3^2\rbrack&
\lbrack 1^22^2\rbrack&\lbrack 24\rbrack&\lbrack 15\rbrack_1&\lbrack 15\rbrack_2
\\ \hline |C|&1&40&40&
45& 90&72&72
\\ \hline
{\mbox 代表元} &()&(123)&(142)(356)&(12)(34)&(1234)(56)&(13524)&(12345)\\ \hline
{\bf 8}{\rm I}&8&-1&-1&0&0&\phi&-\phi^{-1}\\
{\bf 8}{\rm I\!I}&8&-1&-1&0&0&-\phi^{-1}&\phi\\ \hline
\end{array}
\end{align}}

{{\bf 8}{\rm I}}表現が今得た表現{\rho_8}そのもので, {{\bf 8}{\rm II}}表現は任意にとった奇置換ひとつの共役による作用の外部自己同型写像との合成. 既約性もこの表から確かめられる.

 ところで, こうして{SO(8)}に表現をとれたことで八元数によって更に{SO(8)}内に2重被覆の表現を作ることができる. トライアリティ―.
「トライアリティー」(八元数SF) - Shironetsu Blog

が, ちょっと手に負えないほど計算が大変なので次の機会に回す. 例外的な交代群が8次元空間に住んでいるというのはかなり意味深な気がするのでこのあたりはいずれ追究したい.


6次対称群の16次元表現.

{{\frak S}_6={\frak A}_6\rtimes{\mathbb Z}/2{\mathbb Z}}

から, すぐに6次対称群の表現をつくることができる. 具体的には適当に位数2の奇置換, たとえば{(12)}をとったとき, 任意の奇置換{\sigma}に対して{\sigma(12)}は偶置換であるが,

{\begin{align}
\rho_{16}(\sigma)=\left\{\begin{array}{cl}
\begin{pmatrix}\rho_8(\sigma)&0\\0&\rho_8(\,(12)\sigma(12)\,)\end{pmatrix}\ \ \ 
&{\rm for }\ \sigma\in{\frak A}_6\\
\begin{pmatrix}0&\rho_8(\sigma(12)\,)\\\rho(\,(12)\sigma)&0\end{pmatrix}\ \ \ &{\rm for }\ \sigma\in{\frak S}_6\backslash{\frak A}_6\\
\end{array}\right.
\end{align}}

とすれば正しく表現になる. 指標をがどうなるか考えるとすぐに分かるようにこれは既約表現.


まとめとこれから

 ヴァレンティナー群という幾何学的意味が明瞭な対象を介して, 6次交代群の8次元表現, 及び6次対称群の16次元表現の素性がよりよく理解できた. 8次元には変なものがいろいろ棲んでいるのでもう少しそのあたりも突き止めたい.

 次に考えるとすれば7次交代群の前にPSL(2,7)だろうか. ちょっと調べるだけでも途方もなく深い数学が広がっていることが分かるが, まずは線形表現から考えてみたい.


リファレンス

[1]関口次郎 "正面体群からの旅たち" http://www.math.chuo-u.ac.jp/ENCwMATH/51/ewm51_Sekiguchi1.pdf
[2]Scott Crass "Solving the sextic by iteration: A study in complex geometry and dynamics" https://arxiv.org/abs/math/9903111
[3]Crespo, T., & Zbigniew Hajto. (2005). The Valentiner Group as Galois Group. Proceedings of the American Mathematical Society, 133(1), 51-56. Retrieved from http://www.jstor.org/stable/4097824
[4]大渕 朗 "ガロア点と自己同型について" http://www.rimath.saitama-u.ac.jp/lab.jp/fsakai/Ohbuchi2013.pdf
[5]http://pantodon.shinshu-u.ac.jp/topology/literature/finite_subgroup_of_Lie_group.html

*1:が, これではたぶん何も言えていない. ヴァレンティナー群の表示について明確に述べていないのは逃げである.

*2:Wikipedia的にはこれが定義だが, [1]は6次交代群に同型な複素射影変換のなす群をヴァレンティナー群としている. ちょっと悩ましい.

*3:というか計算機上ではそうしている. ノウハウの共有ともっとうまい方法の教えを乞うためにMaxima上で実際にやったことを書くと, 変数{\phi}を含む式に対してdivide関数で{\phi^2-\phi-1}の剰余を求めることで計算している.