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小さな非可換単純群 - PSL(2,p)

イントロ

2番目に/小さい非可換/単純群

 最小の非可換単純群は位数60の5次交代群だった. 正20面体の対称性でもあることから, 特に線形表現に現れる幾何学的な性質について以前調べた.

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 専ら6次対称群を見ていたので交代群固有の性質にはあまり注目していなかったが, 6次交代群の線形表現も調べた. この群は位数360でやはり単純群だが, 小さいほうからは3番目である.

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 では5次交代群と6次交代群の間にある2番目に小さい非可換単純群の位数はいくつかというと168で, この位数を持つ唯一の単純群

{PSL(2,7)\cong GL(3,2)}

である. 見た目の異なる2つの群が交わっている.

はじめのいくつかの単純群

 オンライン整数列辞典のA109379にこんな数列が登録されている. "Orders of non-cyclic simple groups (with repetition)."「非可換単純群の位数(繰り返しを含む)」.

A109379 - OEIS

60, 168, 360, 504, 660, 1092, 2448, 2520, 3420, 4080, 5616, 6048, 6072, 7800, 7920, 9828, 12180, 14880, 20160, 20160, 25308, 25920, 29120,...

(with repetition)というのは同型ではないが同じ位数の群の位数を重複して含めているということ. 実際20160は2つあってそれぞれPSL(3,4)とPSL(4,2)(8次交代群に同型)である.

 ちなみに次にこういうことが起こるのは402,403番目の4585351680で対応する群はB3(3)とC3(3)らしい.

List of finite simple groups - Wikipedia

 前者は{SO(7,3)}の交換子群で後者は{PSp(6,3)}の交換子群.
 シュヴァレー型の{B_n(q)}{C_n(q)}は位数が同じで, qが偶数, nが2より大きいとき同型ではないらしいので「偶然」ではないよう. つまり同じ系列で位数の重複は繰り返し起こって次は65784756654489600になる.

 こういうことが起こる位数の数列もOEISには登録されている.

 A119648 - OEIS

 "Orders for which there is more than one simple group." 「1つより多い単純群が存在する位数」
 COMMENTSを見ると, 最初の20160を除いて{B_n(q)}{C_n(q)}によるダブりだけらしい. 有限単純群は全部分かっているとはいえすごい.

 つまりこの数列はFORMULA欄に与えられているように, 第1項20160を除いて全て

{\begin{align}
\frac{q^{n^2}}{2}\prod_1^n(q^{2i}-1)
\end{align}}

で表されることになる. {n>2}{q}は奇素数のべき(3,5,7,9,11,13,17,19,23,25,29,...)

 Math Stack Exchangeのこの質問への回答では例外的な同型についても触れられている.
 Are there any distinct finite simple groups with the same order?
math.stackexchange.com

 (「同じ位数の単純群が同型にならないこと」が難しいのが偶然同型の生じる原因ということが言える?) この事実を知ると8次交代群の異常性が一層際立つ気がする. いつか調べたいところ.

8月20日追記
ふたつの有限単純群の位数が一致すれば

  • 同型
  • {B_n(q)\ {\rm and}\ C_n(q)}\ {\rm with} \ n:{\rm odd},\ n\geq 3
  • {A_2(4)\ {\rm and }\ Alt(8)}

のいずれか、というこの定理、Artinの名前が付いていた。
Kimmerle, W., Lyons, R., Sandling, R., & Teague, D. N. (1990). Composition factors from the group ring and Artin's theorem on orders of simple groups. Proceedings of the London Mathematical Society, 3(1), 89-122.
https://doi.org/10.1112/plms/s3-60.1.89



 何の話だったか. 2番目に小さい非可換単純群の位数は168なのだった(でかい数を見た後なので妙に小さく感じる). 交代群はなんせ階乗で位数が増えるから疎らで, 位数の小さい非可換単純群の最初のほうはほとんどPSL(2,q)が占めている(ちゃんと言っていなかったがq>3ですべて単純群になる). 実際1万以下の内訳は下のようになっている.

{\begin{align}
\begin{array}{|r|r|c|}\hline
1 &60 & PSL(2,4)\cong PSL(2,5)\cong Alt(5)\\
2 &168 &PSL(2,7)\cong GL(3,2)\\
3& 360& Alt(6)\cong PSL(2,9)\cong Sp'(4,2)\\
4& 504 &PSL(2,8)\\
5 &660& PSL(2,11)\\
6 &1092& PSL(2,13)\\
7 &2448 &PSL(2,17)\\
8 &2520 &Alt(7)\\
9 &3420& PSL(2,19)\\
10& 4080 &PSL(2,16)\\
11& 5616&PSL(3,3)\\
12 &6048 &PSU(3,3)\\
13& 6072 &PSL(2,23)\\
14 &7800 &PSL(2,25)\\
15 &7920 &M_{11}\\
16& 9828 &PSL(2,27)\\ \hline
\end{array}
\end{align}}

Altは交代群. 15番目に燦然と輝く7920は最小の散在型単純群マシュー群M11.


有限体上の特殊射影線形群 PSL(n,p)

定義

 さて順序が前後したが{PSL(n,q)}を定義する. 記号{L_n(q)}で表されることもある.
 PはProjective, SがSpecial, LがLinear. {n}は行列のサイズで{q}は有限体{\mathbb{F}_q}上にあることを意味する. 行列式1の行列全体のなす群{SL(n,q)}の中心による剰余群がこの群{PSL(n,q)}である.
 一般論に踏み込むことはできないのでここからは専ら{PSL(2,p)}を考える. pは奇素数としておく. この場合話は早くて, {\mathbb{P}^1(\mathbb{F}_p)\cong \mathbb{F}_p\cup\{\infty\}}に対する, 行列式が1の1次分数変換全体のなす群と考えるとよい.

たとえば{p=7}

{\begin{align}
f:x&\rightarrow \frac{3x+2}{2x+4}\\
0&\mapsto 4\\
1&\mapsto 2\\
2&\mapsto 1\\
3&\mapsto 6\\
4&\mapsto 0\\
5&\mapsto \infty\\
6&\mapsto 3\\
\infty&\mapsto 5
\end{align}}

{\begin{align}
g:x&\rightarrow \frac{x+1}{x+2}\\
0&\mapsto 4\\
1&\mapsto 3\\
2&\mapsto 6\\
3&\mapsto 5\\
4&\mapsto 2\\
5&\mapsto \infty\\
6&\mapsto 0\\
\infty&\mapsto 1 
\end{align}}

置換の巡回記法で表すとそれぞれ

{\begin{align}
f&=(04)(12)(36)(5\infty)\\
g&=(0426)(135\infty)
\end{align}}

になっている.

{PSL(2,p)}{\mathbb{P}^1(\mathbb{F}_p)}への推移的な作用で{(p+1)}次対称群に埋め込めるということ.

ガロアの最期の手紙

 ではそれより小さい対称群への埋め込みが存在するか, というと, これこそガロアが死の直前に友人オーギュスト・シュヴァリエに宛てた手紙の中で述べた命題の内容で,

{p=5,7,11}の場合にしか{p}次対称群への埋め込みは存在しない
(位数{p}の元が存在することからそれ未満は不可能だとすぐに分かる.).

Galois' last letter
http://www.neverendingbooks.org/galois-last-letter

 一応この3つ組を調べること, 特に指標表を書くこと(PSL(2,5)は5次交代群なのですでにやったが)を目標として書き始めたのがこの記事. これもまたマッカイ対応のひとつらしい. 保形形式の理論をはじめ, すごい数学がここから広がっているらしいが地道に始める. PSL(2,p)のよいところは簡単な数論で調べられるところ.

PSL(2,p)の位数

 まず{SL(2,p)}を数える.{\mathbb{F}_p^2\backslash{(0,0)}}の元は{p^2-1}個. 第1列をこの中から1つ決めると, 第2列はその定数倍ではない{(p-1)p}個の中から選ばなくてはならず, さらに行列式が1であるためにはその{1/(p-1)}に限られて結局

{\begin{align}|SL(2,p)|=(p-1)p(p+1)
\end{align}}

pは奇素数と決めたので中心は{\{I,-I\}}{PSL(2,p)\cong SL(2,p)/\{I,-I\}}

{\begin{align}|PSL(2,p)|=\frac{1}{2}|SL(2,p)|=\frac{(p-1)p(p+1)}{2}
\end{align}}

共役類を数える

 共役類を数えるには中心化部分群から. 与えられた{a\in PSL(2,p)}の中心化部分群{C(a)}の位数を数える.

{\begin{align}
C(a)=\{x\in PSL(2,p) \mid xa=ax\}
\end{align}}

準同型写像{\varphi : SL(2,p)\rightarrow PSL(2,p)}による{a}の逆像の元のひとつを{A}とすると(つまり{\varphi(A)=\varphi(-A)=a}),

{\begin{align}
C(a)=\{X\in SL(2,p)\mid XA=AX,XA=-AX\}/\{I,-I\}
\end{align}}

である({I}単位行列).

従って{a}を代表元に持つ共役類の大きさは,

{\begin{align}
\frac{(p-1)p(p+1)}{|\{X\in SL(2,p)\mid XA=AX,XA=-AX\}|}
\end{align}}

で表せる.

このような{X}を数えていく.

AX=XAの場合

{A}スカラー行列でないとき{X=\mu A+\nu I}と表せる. {t={\rm Tr}(A)}とすると,

{\begin{align}
\det(X)=\mu^2+t\mu\nu+\nu^2=1
\end{align}}

{x=\mu+t\nu/2,y=\nu/2,D=t^2-4}の置き換えによって,

{\begin{align}
x^2-Dy^2=1
\end{align}}

と変形できる. Xとこの方程式の解の個数が等しい. 判別式{D}によって解の様子が変わる.

  • 判別式が{p}の平方剰余のとき

{\mathbb{F}_p}因数分解できて

{\begin{gather}
(x+\sqrt{D}y)(x-\sqrt{D}y)=1\\
x=\frac{1}{2}\left(k+\frac{1}{k}\right),\ \ \ 
y=\frac{1}{2\sqrt{D}}\left(k-\frac{1}{k}\right)\ \ \ 
k=1,2,\cdots,p-1
\end{gather}}

ただし{\sqrt{D}}{D}平方根の一方(大小はないが"小さいほう"をとっておけばよい). 解は{p-1}個.

  • 判別式が0のとき

{x=\pm1, y=0,1,\cdots p-1}
で解は{2p}個.

  • 判別式が{p}の平方非剰余のとき

{f(x,y)=x^2-Dy^2}とする. {f(x,y)=a}の解の個数が{a=0}を除いてすべて等しいことを言う.

    • (-1)が{p}の平方剰余⇔{p\equiv 1\ {\rm mod 4}}のとき

{f(x_0,y_0)=a\Leftrightarrow f(Dy_0,x_0)=-Da}は容易に確かめられる:

{\begin{align}
x_0^2-Dy_0^2=a
\Leftrightarrow (Dy_0)^2-Dx_0^2=-Da
\end{align}}

{-D}は平方非剰余であるため, 全単射{(x,y)\mapsto (Dy,x)}の存在は

{\begin{align}|\{(x,y)\mid f(x,y)=({\mbox 平方剰余})\}|=|\{(x,y)\mid f(x,y)=({\mbox 平方非剰余})\}|\end{align}}

を意味する. また, {a,b}がともに平方剰余, またはともに平方非剰余のとき, {b/a}は平方剰余だから, 全単射{(x,y)\mapsto \sqrt{b/a}\,(x,y)}によって

{\begin{align}|\{(x,y)\mid f(x,y)=a\}|=|\{(x,y)\mid f(x,y)=b\}|\end{align}}

が分かる.

    • (-1)が{p}の平方非剰余⇔{p\equiv 3\ {\rm mod 4}}のとき

{-D}が平方剰余なので{\sqrt{-D}}{\mathbb{F}_p}に存在.
{f(x,y)=a\Leftrightarrow f(\sqrt{-D}\,y,x/\sqrt{-D})=-a}から, 全単射{(x,y)\mapsto (\sqrt{-D}\,y,x/\sqrt{-D})}の存在から
{\begin{align}|\{(x,y)\mid f(x,y)=({\mbox 平方剰余})\}|=|\{(x,y)\mid f(x,y)=({\mbox 平方非剰余})\}|
\end{align}}
が分かる. 以下同様.

{f(x,y)=0}の解は{x=y=0}意外に存在しないから, {f(x,y)=\, (a\neq 0)}の解はすべて等しく{(p^2-1)/(p-1)=p+1}個.

AX=-XAの場合

 2×2行列の基底として次の4つを取る.

{\begin{align}
e_0=I=\begin{pmatrix}1&0\\0&1\end{pmatrix},\ \ \ 
e_1=\begin{pmatrix}0&1\\1&0\end{pmatrix},\ \ \ 
e_2=\begin{pmatrix}0&-1\\1&0\end{pmatrix},\ \ \ 
e_3=\begin{pmatrix}1&0\\0&-1\end{pmatrix}
\end{align}}

積は

{\begin{gather}
e_1^2=-e_2^2=e_3^2=I\\
e_1e_2=-e_2e_1=e_3,\ e_2e_3=-e_3e_2=e_1,\ e_3e_1=-e_1e_3=-e_2
\end{gather}}

となっている. 標数2以外の体に係数を持つ分解型四元数と見ればよい.

これを用いると,

{\begin{gather}
{\rm Tr}(te_0+xe_1+ye_2+ze_3)=2t\\
{\rm det}(te_0+xe_1+ye_2+ze_3)=t^2-x^2+y^2-z^2
\end{gather}}

と表せる. さて,{A=\sum_{i=0}^3a_ie_i, X=\sum_{i=0}^3x_ie_i, }とすると,

{\begin{align}
AX=\phantom{+}&(a_0x_0+a_1x_1-a_2x_2+a_3x_3)e_0\\
     +&(a_1x_0+a_0x_1+a_2x_3-a_3x_2)e_1\\
      +&(a_2x_0+a_0x_2-a_3x_1+a_1x_3)e_2\\
     +&(a_3x_0+a_0x_3+a_1x_2-a_2x_1)e_3
\end{align}}

係数の比較から, {AX=-XA}

{\begin{align}
a_0x_0+a_1x_1-a_2x_2+a_3x_3=0&\hspace{30pt}(1)\\
x_0(a_1,a_2,a_3)+a_0(x_1,x_2,x_3)=(0,0,0)&\hspace{30pt}(2)
\end{align}}

と同値であることが分かる.

  • {a_0\neq 0\Leftrightarrow {\rm Tr}(A)\neq 0}のとき

(2)から

{\begin{align}
(x_1,x_2,x_3)=-\frac{x_0}{a_0}(a_1,a_2,a_3)\hspace{30pt}(2')
\end{align}}

(1)へ代入することにより

{\begin{align}
x_0(a_0^2-a_1^2+a_2^2-a_3^2)=0
\end{align}}

{\det(A)=1}から{x_0=0}. 再び(2')から{x_1=x_2=x_3=0}を得るが, {\det(X)=1}に反するため不可能*1. .

  • {a_0=0\Leftrightarrow {\rm Tr}(A)=0}のとき

(2)から

{x_0(a_1,a_2,a_3)=(0,0,0)}

{(a_1,a_2,a_3)\neq(0,0,0)}であるから,{x_0=0}

    • {a_2\neq 0}のとき

(1)から{x_2=(a_1x_1+a_3x_3)/a_2}. {\det(X)=1}から,

{\begin{align}
\left(\frac{a_1^2}{a_2^2}-1\right)x_1^2+2\frac{a_1a_3}{a_2^2}x_1x_3+\left(\frac{a_3^2}{a_2^2}-1\right)x_3^2=1
\end{align}}

左辺の判別式/4は

{\begin{align}
\frac{a_1^2a_3^2}{a_2^4}-\left(\frac{a_1^2}{a_2^2}-1\right)\left(\frac{a_3^2}{a_2^2}-1\right)
=\frac{a_1^2-a_2^2+a_3^2}{a_2^2}
=-\frac{\det(A)}{a_2^2}
=-\frac{1}{a_2^2}
\end{align}}

従って, -1が平方剰余か否かに応じて解の個数は{(p-1)}個, {(p+1)}個.

    • {a_2=0}のとき

{a_1,a_3}少なくとも一方は非零. 仮に{a_3\neq 0}なら{x_3=-a_1x_1/a_3}{\det(X)=\det(A)=0}から

{\begin{align}
\left(\frac{x_1}{}a_3\right)^2+x_2^2=1
\end{align}}

解の個数は-1が平方剰余か否かに応じて{(p-1)}個, {(p+1)}個. {a_1\neq 0}でも同様.

結局, {AX=-XA}を満たす
{X}{p\equiv 1 \mod 4}なら{(p-1)}個,
{p\equiv 3 \mod 4}なら{(p+1)}
存在する. 

まとめると, {t={\rm Tr}(A)}として{AX=\pm XA}となるXは,

  • {p\equiv 1 \mod 4}のとき
    • {t=0}......{2(p-1)}
    • {t=\pm 2}......{2p}
    • {t\neq0, t^2-4}が平方剰余......{(p-1)}
    • {t\neq0, t^2-4}が平方非剰余......{(p+1)}
  • {p\equiv 3 \mod 4}のとき
    • {t=0}......{2(p+1)}
    • {t=\pm 2}......{2p}
    • {t\neq0,\pm2,\ \ t^2-4}が平方剰余......{(p-1)}
    • {t\neq0,\pm2,\ \  t^2-4}が平方非剰余......{(p+1)}

 ここで,

{\begin{align}
\{t^2-4\mid t\neq0, \pm 2 \in\mathbb{F}_p\}
\end{align}}

に含まれる平方剰余は
{p\equiv 1 \mod 4}......{(p-5)/4}
{p\equiv 3 \mod 4}......{(p-3)/4}

平方非剰余は
{p\equiv 1 \mod 4}......{(p-1)/4}
{p\equiv 3 \mod 4}......{(p-3)/4}

ところで, 任意の{k\in\mathbb{F}_p}に対して{SL(2,p)}の元に, 少なくとも一つはそれをトレースとして持つものが存在する:

{\begin{align}
A_k:=
\begin{pmatrix}
k&-1\\
1&0
\end{pmatrix}
\in SL(2,p)
\end{align}}

{SL(2,p)\rightarrow PSL(2,p)}による{A_k}の像を{a_k}, {a_k}の共役類を{C_k}とすると,

{\begin{gather}
e \not\in C_k\\
C_k\cap C_{\ell}=\emptyset\ \ \ \left(0\leq k < \ell \leq \frac{p-1}{2}\right)
\end{gather}}

は言える(大小関係は{\mathbb{Z}}元として)から,

{\begin{align}
\left|\{e\}\cup \bigcup_{k=0}^{(p-1)/2} C_k\right|
&=\left\{\begin{array}{c}
\displaystyle 1\cdot 1+1\cdot \frac{p(p+1)}{2}+1\cdot \frac{(p-1)(p+1)}{2}+\frac{(p-5)}{4}\cdot p(p+1)+\frac{(p-1)}{4}\cdot (p-1)p\\
(p\equiv 1 \mod 4)\\\\
\displaystyle 1\cdot 1+1\cdot \frac{(p-1)p}{2}+1\cdot \frac{(p-1)(p+1)}{2}+\frac{(p-3)}{4}\cdot p(p+1)+\frac{(p-3)}{4}\cdot (p-1)p\\
(p\equiv 3 \mod 4)\\
\end{array}\right.\\
&=\frac{p^3-p}{2}-\frac{p^2-1}{2}
\end{align}}

 {PSL(2,p)}の元の数に対して{(p^2-1)/2}だけ不足する. 大きさ1の共役類は単位元を含むもの以外に存在しないから, これを埋め合わせられるのはトレースが±2(PSLでは±は同一視される)の場合のみ*2. 代表元が何かはこの考察からは分からないが, この共役類を{C'_2}とすると,結局

{\begin{align}
PSL(2,p)=\{e\}\cup C'_2\cup \bigcup_{k=0}^{(p-1)/2} C_k
\end{align}}

が分かる. {PSL(2,p)}の共役類はほとんど{SL(2,p)}元の±トレー)で決まるが, ±2の場合のみ単位元とほかの2つに分裂するということ. 共役類は合わせて{(p+5)/2}個になる.

単純性

 {p=11,13}でどうなっているか見る.

まず11の平方剰余は1,3,4,5,9.

{\begin{align}
\begin{array}{|cccccccc|}\hline
\{e\}&C_0&C_1&C_2&C'_2&C_3&C_4&C_5\\ \hline
1&55&110&60&60&132&132&110 \\ \hline
\end{array}
\end{align}}

13の平方剰余は1,3,4,9,10,12.

{\begin{align}
\begin{array}{|ccccccccc|}\hline
\{e\}&C_0&C_1&C_2&C'_2&C_3&C_4&C_5&C_6\\ \hline
1&91&182&84&84&156& 182&156&156\\ \hline
\end{array}
\end{align}}

 さて, この共役類の表をじっと睨むとどちらも単純群であることが分かる.

 もっと簡単な{PSL(2,7)}の場合で説明する.

{\begin{align}
\begin{array}{|cccccc|}\hline
\{e\}&C_0&C_1&C_2&C'_2&C_3\\ \hline
1&21&56&24&24&42 \\ \hline
\end{array}
\end{align}}

 位数は168. 非自明な正規部分群単位元を含んで, それ以外の共役類はすべて大きさ21以上なので指数は168/22以下2以上, 7,6,4,3,2しかありえない.すなわち部分群の位数として可能なのは24,28,42,56,84だが, 共役類をどう組み合わせてもこれらは実現できない. 従って{PSL(2,7)}単純群.

 {p\geq 5}の一般的な場合に同様に証明できるかどうか知らない*3. しかしともかく共役類の情報だけから最初のいくつかの{PSL(2,p),(p\geq5)}単純群であることが分かる.

まとめとこれから

 奇素数pに対してPSL(2,p)の位数は{(p^3-p)/2}である. 共役類はほとんど±トレースで決まるが±2の場合のみ3つに分裂して合計{(p+5)/2}個になる. したがって既約表現も{(p+5)/2}個.
 次の記事から{PSL(2,7)}を調べる. 既約表現は6個で次元は1,3,3,6,7,8.

*1:ちなみに以上の条件が必要条件であることはケーリー・ハミルトンの定理からもすぐ出る.

*2:というのはちゃんと示さないといけないが略

*3:反例も見つけていない. 気が向いたらプログラムを組んで探す.