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PSL(2,11)指標表手作り体験記――Paley biplaneと正20面体

イントロ――ガロアの最後の手紙

 シュヴァリエへ宛てたガロアの最後の手紙[1]. モジュラー方程式との関係から彼が重要視し, 証明なしに与えた命題は現代的なことばで述べるとこうであった.
 
素数\(p\)に対して, \(PSL(2,p)\)が\(p\)点への忠実かつ推移的な作用を持つのは\(p=5,7,11\)のときに限られる.
 
 それぞれ正4面体群, 正8面体群, 正20面体群を部分群としてもつことから起こるこの現象. ADE分類, McKay対応の「例外的な三つ組」がここにも現れる.
 本記事では\(PSL(2,7)\)について調べた前回の記事に引き続き, \(PSL(2,11)\)の既約指標を求めつつ, ここで起こっている現象の理解を目標とする.

小さな非可換単純群 - PSL(2,p) - Shironetsu Blog
PSL(2,7)指標表手作り体験記(1) 3,3,8次元既約表現 - Shironetsu Blog
PSL(2,7)指標表手作り体験記(2)――ファノ平面・GL(3,2)・四元数・正8面体 - Shironetsu Blog

 なお, この記事を書くにあたってはKostantによる優れた解説[2]を大いに参考にした.

PSL(2,11):基礎事項

 一般に奇素数\(p\)について\(PSL(2,p)\)の位数は\((p^3-p)/2\). 従って,
\begin{align}
|PSL(2,11)| = 660.
\end{align}
 \(PSL(2,p)\)の共役類は「ほぼ」プラスマイナスを無視したトレースで決まる. 例外はトレースが±2の場合. 単位元のみからなる共役類, 位数\(p\)の元からなる2つの共役類の合わせて3つに分裂する.
 ここで角括弧はプラスマイナスを同一視する意味で用いる.
\begin{align}
\begin{bmatrix}
a & b\\
c & d
\end{bmatrix}
=\left\{
\begin{pmatrix}
a & b\\
c & d
\end{pmatrix},\
\begin{pmatrix}
-a & -b\\
-c & -d
\end{pmatrix}
\right\}\in PSL(2,p).
\end{align}

共役類とその代表元のリストは以下の通り.

\begin{align}
\begin{array}{|c|c|c|c|}\hline
\mbox{共役類}&\mbox{代表元} & \mbox{大きさ} &\mbox{位数} \\ \hline
1A_1&\begin{bmatrix}
1 & 0\\
0 & 1
\end{bmatrix}
& 1 & 1 \\ \hline
55A_2&\begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} =t
& 55 & 2 \\ \hline
110A_3&\begin{bmatrix}
1 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} = st
& 110 & 3 \\ \hline
60A_{11}&\begin{bmatrix}
1 & 1\\
0 & 1
\end{bmatrix} = s
& 60 & 11 \\ \hline
60B_{11}&\begin{bmatrix}
1 & 2\\
0 & 1
\end{bmatrix} = s^2
& 60 & 11 \\ \hline
132A_5&\begin{bmatrix}
3 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} = s^3t
& 132 & 5 \\ \hline
132B_5&\begin{bmatrix}
4 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} = s^4t
& 132 & 5 \\ \hline
110A_6&\begin{bmatrix}
5 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} = s^5t
& 110 & 6 \\ \hline
\end{array}
\end{align}
生成元\(s,t\)によって各代表元がどう表されるかも書いた. \(s\)と\(t\)の表現さえ得られれば全ての指標が分かることになる.


5次元既約表現

 \(PSL(2,7)\)の3次元既約表現を思い出しながら.
 11の平方剰余は1,3,4,5,9. 1の原始11乗根を\zetaとして, 11の平方剰余による\zetaのべき乗の和を\etaとする.

\begin{align}
    \eta = \zeta+\zeta^3+\zeta^4+\zeta^5+\zeta^9.
\end{align}

\(-1\)が平方非剰余であることから,

\begin{align}
    \eta + \overline{\eta} = -1.
\end{align}

\etaの満たす2次方程式は,

\begin{align}
    \eta^2 &= \zeta^2 + \zeta^6+ \zeta^8+\zeta^{10} + \zeta^7\\
            &\hspace{10pt}+2(\zeta^4+\zeta^7+\zeta^9+\zeta^3 + \zeta^5+\zeta^8+\zeta^2+\zeta^6+\zeta + \zeta^{10})\\
            &= (-1-\eta) + 2\cdot(-1)\\
            &=-\eta-3.
\end{align}

これを解くと,

\begin{align}
    \eta = \frac{-1\pm\sqrt{-11}}{2}.
\end{align}

複号はプラスをとることにして, 以下の\(a,b,c,d,e\)を定義する.
\begin{align}
    a = \frac{\zeta-\zeta^{10}}{\sqrt{-11}},\ \ 
    b = \frac{\zeta^4-\zeta^{7}}{\sqrt{-11}},\ \ 
    c = \frac{\zeta^5-\zeta^{6}}{\sqrt{-11}},\ \ 
    d = \frac{\zeta^9-\zeta^{2}}{\sqrt{-11}},\ \ 
    e = \frac{\zeta^3-\zeta^{8}}{\sqrt{-11}}.
\end{align}

すべて実数であることに注意. 順序は,

\begin{align}
    a = \frac{\zeta-\zeta^{-1}}{\sqrt{-11}},\ \ 
    b = \frac{\zeta^{4}-\zeta^{-4}}{\sqrt{-11}},\ \ 
    c = \frac{\zeta^{4^2}-\zeta^{-4^2}}{\sqrt{-11}},\ \ 
    d = \frac{\zeta^{4^3}-\zeta^{-4^3}}{\sqrt{-11}},\ \ 
    e = \frac{\zeta^{4^4}-\zeta^{-4^4}}{\sqrt{-11}}.
\end{align}

から来ている. これらを用いて, 次の5×5行列を定義する.
\begin{align}
T =
\begin{pmatrix}
a & b & c & d & e\\
b & c & d & e & a\\
c & d & e & a & b\\
d & e & a & b & c\\
e & a & b & c & d
\end{pmatrix}.
\end{align}
行・列成分の順序は\(a,b,c,d,e\), 対角成分の順序は\(a,c,e,d,b\)となっていることに気付くだろう. 美しい.
f:id:shironetsu:20190317015733p:plain:w300
 トレース, 行列式はそれぞれ,

\begin{gather}
    {\rm tr}(T) = a+c+e+b+d = \frac{\eta-\overline{\eta}}{\sqrt{-11}}=1,\\
    \det(T) = 5abcde-a^5-b^5-c^5-d^5-e^5 = 1.
\end{gather}

 2乗すると,
\begin{align}
T^2 &=
\begin{pmatrix}
p & q & r & r & q\\
q & p & q & r & r\\
r & q & p & q & r\\
r & r & q & p & q\\
q & r & r & q & p
\end{pmatrix},
\end{align}
ここで,

\begin{align}
    p &= a^2+b^2+c^2+d^2+e^2,\\
    q &= ab+bc+cd+de+ea,\\
    r &= ac+ce+eb+bd+da.
\end{align}

なんとも都合の良いことに, \(p=1,\ q=r=0\)が成り立つ. すなわち,
\begin{align}
T^2 = {\bf 1}.
\end{align}
もうひとつ, 次の対角行列を定義する.
\begin{align}
    S=
    \begin{pmatrix}
        \zeta^5 & 0 & 0 & 0 & 0\\
        0 & \zeta^3 & 0 & 0 & 0\\
        0 & 0 & \zeta^4 & 0 & 0\\
        0 & 0 & 0 & \zeta^9 & 0\\
        0 & 0 & 0 & 0 & \zeta
    \end{pmatrix}
\end{align}

明らかに, \(S^{11} = {\bf 1}.\) そして(数式処理ソフトの力を借りて,
\begin{align}
(TS)^3 = (S^2TS^6T)^3 = {\bf 1}.
\end{align}
 これが何を意味するかというと,
\begin{align}
\langle S,T\rangle\cong PSL(2,11).
\end{align}
つまり\(S,T\)は\(PSL(2,11)\)の5次元表現の生成元[3].
\begin{align}
s= \begin{bmatrix}
1 & 1\\
0 & 1
\end{bmatrix}
\mapsto S,\ \
t=\begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
\mapsto T
\end{align}
によって表現になる. 指標は以下の通り.

\begin{align}
    \begin{array}{|c|cccccccc|}\hline
     \mbox{共役類}&1A_1 & 55A_2 & 110A_3 & 60A_{11} & 60B_{11} & 132A_5 & 132B_5 & 110A_6\\
     \hline
     \mbox{指標}&5 & 1 & -1 & \eta & \overline{\eta} & 0 & 0 & 1 \\ \hline
    \end{array} 
\end{align}

 クラインの4次曲線のように, 4次元複素射影空間\(\mathbb{C}P^4=\{(x_1:x_2:x_3:x_4:x_5)\mid x_1,x_2,x_3,x_4,x_5\in \mathbb{C}\}\)でこの行列による射影変換で不変なものを探すとあっさり見つかって次のように書ける.
\begin{align}
x_1x_2^2+x_2x_3^2+x_3x_4^2+x_4x_5^2+x_5x_1^2=0.
\end{align}
特に, 左辺を\(f({\bf x})=f(x_1,x_2,x_3,x_4,x_5)\)とおくと
\begin{align}
f(S{\bf x})=f(T({\bf x}))=f({\bf x})
\end{align}
が成立して不変式となっている. 何が起こっているのかよく分からないがとにかくそうなっている.

 もうひとつの5次元既約表現は複素共役から得られる. あるいは, PGL(2,11)\backslash PSL(2,11)(行列式が平方非剰余)の元による外部自己同型写像によって\(60A_{11}\)と\(60B_{11}\)を入れ替えても複素共役と同値な表現になる.

 この5次元表現に関しては計算すると確かに表現になっている, 以上のことが言えない. 背景にあるのが何なのか分かっていない.


10次元既約表現その1

 本記事の主目標. \(PSL(2,11)\)は11点に推移的に作用する. 13以上の素数\(p\)で\(PSL(2,p)\)が\(p\)点に推移的に作用することはない. では\(PSL(2,11)\)が11点に推移的に作用できるのはなぜかというと正20面体群と同型な部分群を持つためである.

Paley Biplane

 11の平方剰余(0を除く)の集合を\(a\)とする.法を11として全ての元に1ずつ加えてゆき, 順に\(b,c,\cdots,k\) とする. ただし10はXで表す.
\begin{align}
a &= \{1,3,4,5,9\}\\
b &= \{2,4,5,6,{\rm X\!}\}\\
c &= \{0,3,5,6,7\}\\
d &= \{1,4,6,7,8\}\\
e &= \{2,5,7,8,9\}\\
f &= \{3,6,8,9,{\rm X\!}\}\\
g &= \{0,4,7,9,{\rm X\!}\}\\
h &= \{0,1,5,8,{\rm X\!}\}\\
i &= \{0,1,2,6,7\}\\
j &= \{1,2,3,7,8\}\\
k &= \{3,4,5,8,9\}
\end{align}
数を「点」, アルファベットを「直線」と呼び, それぞれのなす集合を\(P,L\)としよう.
\begin{align}
P &= \{0,1,2,3,4,5,6,7,8,9,{\rm X}\}\\
L &= \{a,b,c,d,e,f,g,h,i,j,k\}
\end{align}
よく観察すると, 異なる2つの「点」は2つの同じ「直線」にのり, 異なる2つの「直線」は2つの同じ「点」をのせている(2点で「交わる」)ことが分かる.
たとえば\(\{0,1\}\)は\(h,i\)に含まれ, \(a,b\)は\(\{4,5\}\)を含んでいる. 集合の言葉で記述すると,
\begin{gather}
\forall p,q \in P,{\rm s.t.}\ p\neq q,\ \ |\{\ell \in L \mid \{p,q\}\subset \ell\}| = 2, \\
\forall \ell,m \in L,{\rm s.t.}\ \ell\neq m,\ \ |\{p \in P \mid \{\ell,m\}\subset p\}| = 2.
\end{gather}
この組み合わせを, Paley Biplane*1という[4,5]. 名前は数学者Raymond Paleyから.
 また, ブロックデザインのことばでは\(2-(11,5,2)\)デザインとなる. ここで\(t-(v,k,\lambda)\)デザイン\(X,B\)の定義は以下の通り.

定義: ブロックデザイン
 \(v\)個の元からなる有限集合\(X\)に対して, 大きさ\(k\)の\(X\)の部分集合の全体を\(X^{(k)}\)とする.
\begin{gather}
    |X| = v\\
    X^{(k)} = \{A\subset X\mid |Y|=k\}
\end{gather}
\(X^{(k)}\)の部分集合\(B\)があって次の性質を満たす:
\(X\)の相異なる\(t\)個の元に対して, それらを含む\(B\)の元はちょうど\(\lambda\)個存在する.
\begin{gather}
    \forall x_1,x_2,\cdots, x_t,\ {\rm s.t.}\ x_i\neq x_j\ (1\leq i \lneq j\leq t),\\
    |\{b\in B\mid x_1,x_2,\cdots,x_t\in b\}| = \lambda.
\end{gather}

 いま, \(X\)は「点」の集合\(P\), \(B\)は「直線」の集合\(L\)に対応する. \(v=11\)点集合\(P\)の\(k=5\)点部分集合の集合\(L\)について, \(P\)の相異なる\(t=2\)個の元はちょうど\(\lambda=2\)個の\(L\)の元に含まれるため, Paley Biplaneは\(2-(11,5,2)\)デザイン.

アダマール行列

 Paley biplaneは位数\(n=3\)のアダマール型2-デザインとも呼ばれる. このデザインから\(4n=12\)次のアダマール行列が作られるのだ. アダマール行列とは, すべての成分が\(\pm 1\)の正方行列であって, それ自身の転置行列との積がスカラー行列になるもの.
 具体的な構成は次のようになる. \(12\times 12\)行列\(H\)について, 12行目と12列目成分はともにすべて1として, 他の行はa…kのアルファベットで, 列は0から始めて11までで指定することにする. 各マスをPaley biplneの組をなすなら1, そうでないなら\(-1\)で埋める. すると,
\begin{align}
H =
\left(\begin{array}{rrrrrrrrrrrr}
-1 & 1 & -1 & 1 & 1 & 1 & -1 & -1 & -1 & 1 & -1 & 1\\
-1 & -1 & 1 & -1 & 1 & 1 & 1 & -1 & -1 & -1 & 1 & 1\\
1 & -1 & -1 & 1 & -1 & 1 & 1 & 1 & -1 & -1 & -1 & 1\\
-1 & 1 & -1 & -1 & 1 & -1 & 1 & 1 & 1 & -1 & -1 & 1\\
-1 & -1 & 1 & -1 & -1 & 1 & -1 & 1 & 1 & 1 & -1 & 1\\
-1 & -1 & -1 & 1 & -1 & -1 & 1 & -1 & 1 & 1 & 1 & 1\\
1 & -1 & -1 & -1 & 1 & -1 & -1 & 1 & -1 & 1 & 1 & 1\\
1 & 1 & -1 & -1 & -1 & 1 & -1 & -1 & 1 & -1 & 1 & 1\\
1 & 1 & 1 & -1 & -1 & -1 & 1 & -1 & -1 & 1 & -1 & 1\\
-1 & 1 & 1 & 1 & -1 & -1 & -1 & 1 & -1 & -1 & 1 & 1\\
1 & -1 & 1 & 1 & 1 & -1 & -1 & -1 & 1 & -1 & -1 & 1\\
1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1
\end{array}\right).
\end{align}
これが12次のアダマール行列になっている:
\begin{align}
HH^T = 12 I.
\end{align}
\(I\)は単位行列.
 ちなみに同じような方法で\(q\equiv 3 \mod 4\)なる素数冪\(q\)から\(q+1\)次のアダマール行列が作られる.
 12次のアダマール行列は11,12次のマシュー群との関係からもあまりに重要で, またたぶん別の機会に調べることになると思う.
 さて, このPaley Biplaneの自己同型群が\(PSL(2,11)\)と同型なのである. すなわち\(PSL(2,11)\)は\(P\)と\(L\)のどちらにも11点の置換として作用する. とはいえ, \(PSL(2,11)\)は1次変換の群. どこにPaley Biplaneがいるのだろう?

2項正20面体群

 \(SU(2)\)の部分群であった2項正20面体群を思い出そう. 詳しくは以前の記事を参照.

球面調和関数で正20面体をつくる(4) - 2項正20面体群とマッカイ対応 - Shironetsu Blog

\(xyz\)座標で正20面体の頂点として次の12個を取ることができる.
\begin{gather}
(\pm \phi,\pm1,0),\
(0,\pm\phi,\pm 1),\
(\pm 1,0,\pm\phi)\\
\phi = \frac{1+\sqrt{5}}{2}
\end{gather}

f:id:shironetsu:20180210224315p:plain:w300

 \(\phi\)は\(\lambda^2-\lambda-1=0\)の正根. これらを四元数\(x{\bf i}+y{\bf j}+z{\bf k}\)に対応させると, これらを不変に保つ共役による作用を引き起こす4元数\((t,x,y,z)=t{\bf 1}+x{\bf i}+y{\bf j}+z{\bf k}\)の全体は, 以下の120個.
\begin{gather}
(\pm 1,0,0,0),\ (0,\pm 1,0,0),\ (0,0,\pm 1,0),\ (0,0,0\pm 1),\\
(\pm\frac{1}{2},\pm\frac{1}{2},\pm\frac{1}{2},\pm\frac{1}{2}),\\
(\pm\frac{\phi^{-1}}{2},\pm \frac{\phi}{2},\pm\frac{1}{2},0),\
(\pm \frac{\phi}{2},\pm\frac{\phi^{-1}}{2},0,\pm\frac{1}{2}),\
(\pm\frac{1}{2},0,\pm\frac{\phi^{-1}}{2},\pm \frac{\phi}{2}),\
(0,\pm\frac{1}{2},\pm \frac{\phi}{2},\pm\frac{\phi^{-1}}{2}),\\
(\pm\frac{\phi^{-1}}{2},\pm\frac{1}{2},0,\pm \frac{\phi}{2}),\
(\pm\frac{\phi^{-1}}{2},0,\pm \frac{\phi}{2},\pm\frac{1}{2}),\
(0,\pm\frac{\phi^{-1}}{2},\pm\frac{1}{2},\pm\frac{\phi}{2}),\
(\pm\frac{1}{2},\pm\frac{\phi^{-1}}{2},\pm\frac{\phi}{2},0),\\
(0,\pm\frac{\phi}{2},\pm\frac{\phi^{-1}}{2},\pm\frac{1}{2}),\
(\pm\frac{\phi}{2},\pm\frac{1}{2},\pm\frac{\phi^{-1}}{2},0),\
(\pm\frac{1}{2},\pm\frac{\phi}{2},0,\pm\frac{\phi^{-1}}{2}),\
(\pm\frac{\phi}{2},0,\pm\frac{1}{2},\pm\frac{\phi^{-1}}{2}).
\end{gather}
なお下3行は成分の互いに成分の偶置換. これが2項正20面体群\(\widetilde{I}\)である.
 これを\(\mathbb{F}_{11}\)に移そう. \(1^2+3^2=-1\)から以下のようにとれる.
\begin{align}
{\bf i} =
\begin{pmatrix}
3 & 1\\
1 & -3
\end{pmatrix},\ \
{\bf j} =
\begin{pmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{pmatrix},\ \
{\bf k} =
\begin{pmatrix}
1 & -3\\
-3 & -1
\end{pmatrix}.
\end{align}
5は11の平方剰余であるため, \(\sqrt{5}=7\)に固定して\(\mathbb{F}_{11}\)上で
\begin{align}
\phi = \frac{1+\sqrt{5}}{2} = 4
\end{align}
とする. すると, 以下の120個が2項正20面体群と同型な群を\(SL(2,11)\)内でつくる.
\begin{gather}
(\pm 1,0,0,0),\ (0,\pm 1,0,0),\ (0,0,\pm 1,0),\ (0,0,0\pm 1),\\
(\pm 5,\pm 5,\pm 5,\pm 5),\\
(\pm 4,\pm 2,\pm 5,0),\
(\pm 2,\pm 4,0,\pm 5),\
(\pm 5,0,\pm 4,\pm 2),\
(0,\pm 5,\pm 2,\pm 4),\\
(\pm 4,\pm 5,0,\pm 2),\
(\pm 4,0,\pm 2,\pm 5),\
(0,\pm 4,\pm 5,\pm 2),\
(\pm 5,\pm 4,\pm 2,0),\\
(0,\pm 2,\pm 4,\pm 5),\
(\pm 2,\pm 5,\pm 4,0),\
(\pm 5,\pm 2,0,\pm 4 ),\
(\pm 2,0,\pm 5,\pm 4).
\end{gather}
これらが固定するのが次の6本の「対角線」(プラスマイナスを同一視する)の集合.
\begin{gather}
(\pm 4,\pm1,0),\
(0,\pm 4,\pm 1),\
(\pm 1,0,\pm 4)
\end{gather}
 \(A=x{\bf i}+y{\bf j}+z{\bf k}\)と\(B=x'{\bf i}+y'{\bf j}+z'{\bf k}\)の内積はやはり
\begin{align}
(A,B)=\frac{-1}{2}{\rm tr}(AB) = xx'+yy'+zz'
\end{align}
で定義する.

11元体上の正20面体たち

 以下の観察を行う.
問題1. \(\,(4,1,0)\)と同じく自分自身との内積が\(4^2+1^2+0^2=6\)となるベクトルは何個あるか?
答え1. 132個.
\(x^2+y^2+z^2=6\)の解を数える. これらの集合を\(\mathcal{V}\)とする.
\begin{align}
\mathcal{V} = \{(x,y,z)\in (\mathbb{F}_{11})^3\mid x^2+y^2+z^2=6\}
\end{align}
プラスマイナスを同一視するとちょうど半分の66個.
\begin{align}
\lbrack x,y,z\rbrack = \left\{(x,y,z),(-x,-y,-z)\right\}
\end{align}
と表すことにして,
\begin{align}
\mathcal{D} = \{\lbrack x,y,z\rbrack\mid\lbrack x,y,z\rbrack\subset \mathcal{V}\}
\end{align}
を定義する. \(|\mathcal{D}|=66\). この\(\mathcal{D}\)が「対角線」の集合.

問題2. 「正20面体」\(\{\lbrack 4,\pm1,0\rbrack,\ \lbrack0,4,\pm 1\rbrack,\ \lbrack\pm 1,0,4\rbrack\}\) に対する\(SL(2,11)\)の共役による作用の軌道はどのようになるか?
答え2. 軌道-固定点定理から大きさは11. 以下に列挙する.
\begin{align}
{\bf 0} &:\{\lbrack1, 0, 4\rbrack, \lbrack1, 0, 7\rbrack, \lbrack0, 4, 1\rbrack, \lbrack0, 4, 10\rbrack, \lbrack4, 10, 0\rbrack, \lbrack4, 1, 0\rbrack\}\\
{\bf 1} &:\{\lbrack1, 9, 1\rbrack, \lbrack1, 4, 0\rbrack, \lbrack1, 9, 10\rbrack, \lbrack5, 8, 7\rbrack, \lbrack5, 6, 0\rbrack, \lbrack5, 8, 4\rbrack\}\\
{\bf 2} &:\{\lbrack3, 4, 6\rbrack, \lbrack2, 10, 10\rbrack, \lbrack4, 0, 1\rbrack, \lbrack3, 7, 6\rbrack, \lbrack5, 0, 6\rbrack, \lbrack2, 1, 10\rbrack\}\\
{\bf 3} &:\{\lbrack1, 2, 1\rbrack, \lbrack5, 3, 4\rbrack, \lbrack5, 3, 7\rbrack, \lbrack1, 7, 0\rbrack, \lbrack1, 2, 10\rbrack, \lbrack5, 5, 0\rbrack\}\\
{\bf 4}&:\{\lbrack3, 6, 4\rbrack, \lbrack2, 9, 8\rbrack, \lbrack4, 8, 6\rbrack, \lbrack3, 2, 2\rbrack, \lbrack2, 8, 2\rbrack, \lbrack5, 4, 3\rbrack\}\\
{\bf 5}&:\{\lbrack5, 0, 5\rbrack, \lbrack2, 1, 1\rbrack, \lbrack2, 10, 1\rbrack, \lbrack4, 0, 10\rbrack, \lbrack3, 7, 5\rbrack, \lbrack3, 4, 5\rbrack\}\\
{\bf 6}&:\{\lbrack0, 5, 5\rbrack, \lbrack1, 10, 9\rbrack, \lbrack4, 5, 3\rbrack, \lbrack0, 1, 7\rbrack, \lbrack1, 1, 2\rbrack, \lbrack4, 6, 8\rbrack\}\\
{\bf 7}&:\{\lbrack2, 9, 3\rbrack, \lbrack4, 8, 5\rbrack, \lbrack2, 8, 9\rbrack, \lbrack5, 4, 8\rbrack, \lbrack3, 6, 7\rbrack, \lbrack3, 2, 9\rbrack\}\\
{\bf 8}&:\{\lbrack4, 6, 3\rbrack, \lbrack1, 1, 9\rbrack, \lbrack0, 5, 6\rbrack, \lbrack4, 5, 8\rbrack, \lbrack1, 10, 2\rbrack, \lbrack0, 1, 4\rbrack\}\\
{\bf 9}&:\{\lbrack3, 5, 4\rbrack, \lbrack2, 3, 2\rbrack, \lbrack4, 3, 6\rbrack, \lbrack3, 9, 2\rbrack, \lbrack5, 7, 3\rbrack, \lbrack2, 2, 8\rbrack\}\\
{\bf \rm X}&:\{\lbrack2, 3, 9\rbrack, \lbrack4, 3, 5\rbrack, \lbrack3, 5, 7\rbrack, \lbrack5, 7, 8\rbrack, \lbrack3, 9, 9\rbrack, \lbrack2, 2, 3\rbrack\}
\end{align}
これらの集合を\(\mathcal{P}\)とする. 「対角線」はちょうど1つの\(\mathcal{P}\)の「正20面体」に含まれる.

問題3. 「正20面体」はいくつ存在するか?
答え3. 22個.
「正20面体」とは互いの内積が\(\pm 4\)の「対角線」6本の集合のこと.
\(\mathcal{P}\)に加えて次の11個が存在.
\begin{align}
a &: \{\lbrack1, 10, 9\rbrack, \lbrack1, 1, 9\rbrack, \lbrack1, 0, 4\rbrack, \lbrack5, 0, 6\rbrack, \lbrack5, 7, 8\rbrack, \lbrack5, 4, 8\rbrack\}\\
b &: \{\lbrack1, 9, 1\rbrack, \lbrack0, 4, 1\rbrack, \lbrack0, 5, 6\rbrack, \lbrack1, 2, 10\rbrack, \lbrack4, 3, 6\rbrack, \lbrack4, 8, 5\rbrack\}\\
c &: \{\lbrack2, 9, 8\rbrack, \lbrack2, 3, 9\rbrack, \lbrack3, 7, 6\rbrack, \lbrack4, 5, 8\rbrack, \lbrack3, 9, 2\rbrack, \lbrack5, 8, 4\rbrack\}\\
d &: \{\lbrack3, 5, 4\rbrack, \lbrack2, 1, 1\rbrack, \lbrack4, 10, 0\rbrack, \lbrack3, 5, 7\rbrack, \lbrack5, 5, 0\rbrack, \lbrack2, 1, 10\rbrack\}\\
e &: \{\lbrack0, 5, 5\rbrack, \lbrack1, 2, 1\rbrack, \lbrack4, 3, 5\rbrack, \lbrack0, 4, 10\rbrack, \lbrack4, 8, 6\rbrack, \lbrack1, 9, 10\rbrack\}\\
f &:\{\lbrack3, 6, 4\rbrack, \lbrack2, 10, 10\rbrack, \lbrack4, 1, 0\rbrack, \lbrack2, 10, 1\rbrack, \lbrack5, 6, 0\rbrack, \lbrack3, 6, 7\rbrack\}\\
g &:\{\lbrack4, 0, 1\rbrack, \lbrack1, 4, 0\rbrack, \lbrack0, 1, 7\rbrack, \lbrack1, 7, 0\rbrack, \lbrack4, 0, 10\rbrack, \lbrack0, 1, 4\rbrack\}\\
h &:\{\lbrack3, 4, 6\rbrack, \lbrack5, 3, 4\rbrack, \lbrack4, 6, 8\rbrack, \lbrack3, 2, 2\rbrack, \lbrack2, 8, 9\rbrack, \lbrack2, 2, 8\rbrack\}\\
i &: \{\lbrack4, 6, 3\rbrack, \lbrack5, 3, 7\rbrack, \lbrack2, 8, 2\rbrack, \lbrack3, 4, 5\rbrack, \lbrack2, 2, 3\rbrack, \lbrack3, 2, 9\rbrack\}\\
j &:\{\lbrack5, 0, 5\rbrack, \lbrack1, 1, 2\rbrack, \lbrack1, 10, 2\rbrack, \lbrack5, 7, 3\rbrack, \lbrack5, 4, 3\rbrack, \lbrack1, 0, 7\rbrack\}\\
k &: \{\lbrack2, 3, 2\rbrack, \lbrack2, 9, 3\rbrack, \lbrack4, 5, 3\rbrack, \lbrack5, 8, 7\rbrack, \lbrack3, 7, 5\rbrack, \lbrack3, 9, 9\rbrack\}
\end{align}
これらの集合を\(\mathcal{L}\)とする. 「対角線」はちょうど1つの\(\mathcal{L}\)の「正20面体」に含まれる.

 \(PSL(2,7)\)のときからの類推で, \(\mathcal{P}\)が「点」に, \(\mathcal{L}\)が「直線」に, それぞれ対応付けられることが期待できる. というか既にもう答えを書いた. ただ対応の仕方が少し変わっている.

 \(\mathcal{P}\)の元\({\bf 0}\)を見よう.
\begin{align}
{\bf 0} : \{\lbrack1, 0, 4\rbrack, \lbrack1, 0, 7\rbrack, \lbrack0, 4, 1\rbrack, \lbrack0, 4, 10\rbrack, \lbrack4, 10, 0\rbrack, \lbrack4, 1, 0\rbrack\}
\end{align}
\({\bf 0}\)に含まれる6つの元は, \(\mathcal{L}\)の\(a,b,d,e,f,j\)に分かれて1つずつ入っている.
\begin{align}
a &: \{\lbrack1, 10, 9\rbrack, \lbrack1, 1, 9\rbrack, \underline{\lbrack1, 0, 4\rbrack}, \lbrack5, 0, 6\rbrack, \lbrack5, 7, 8\rbrack, \lbrack5, 4, 8\rbrack\}\\
b &: \{\lbrack1, 9, 1\rbrack, \underline{\lbrack0, 4, 1\rbrack}, \lbrack0, 5, 6\rbrack, \lbrack1, 2, 10\rbrack, \lbrack4, 3, 6\rbrack, \lbrack4, 8, 5\rbrack\}\\
d &: \{\lbrack3, 5, 4\rbrack, \lbrack2, 1, 1\rbrack, \underline{\lbrack4, 10, 0\rbrack}, \lbrack3, 5, 7\rbrack, \lbrack5, 5, 0\rbrack, \lbrack2, 1, 10\rbrack\}\\
e &: \{\lbrack0, 5, 5\rbrack, \lbrack1, 2, 1\rbrack, \lbrack4, 3, 5\rbrack, \underline{\lbrack0, 4, 10\rbrack}, \lbrack4, 8, 6\rbrack, \lbrack1, 9, 10\rbrack\}\\
f &:\{\lbrack3, 6, 4\rbrack, \lbrack2, 10, 10\rbrack, \underline{\lbrack4, 1, 0\rbrack}, \lbrack2, 10, 1\rbrack, \lbrack5, 6, 0\rbrack, \lbrack3, 6, 7\rbrack\}\\
j &:\{\lbrack5, 0, 5\rbrack, \lbrack1, 1, 2\rbrack, \lbrack1, 10, 2\rbrack, \lbrack5, 7, 3\rbrack, \lbrack5, 4, 3\rbrack, \underline{\lbrack1, 0, 7\rbrack}\}
\end{align}
\(a,b,d,e,f,j\)はPaley biplaneにおいて「点」\({\bf 0}\)がのっていない6つの「直線」である. 逆に補集合\(\mathcal{L}\backslash\{a,b,d,e,f,j\}=\{c,g,h,i,k\}\)は「点」0がのっている5つの「直線」.

 「点」と「直線」の双対性からこれらの語を入れ替えても同じことが言える. \(\mathcal{L}\)の元\(a\)を見よう.
\begin{align}
a : \{\lbrack1, 10, 9\rbrack, \lbrack1, 1, 9\rbrack, \lbrack1, 0, 4\rbrack, \lbrack5, 0, 6\rbrack, \lbrack5, 7, 8\rbrack, \lbrack5, 4, 8\rbrack\}
\end{align}
\(a\)に含まれる6つの元は, \(\mathcal{P}\)の\({\bf 0,2,6,7,8,{\rm X}}\)に分かれて1つずつ入っている.
\begin{align}
{\bf 0} &:\{\underline{\lbrack1, 0, 4\rbrack}, \lbrack1, 0, 7\rbrack, \lbrack0, 4, 1\rbrack, \lbrack0, 4, 10\rbrack, \lbrack4, 10, 0\rbrack, \lbrack4, 1, 0\rbrack\}\\
{\bf 2} &:\{\lbrack3, 4, 6\rbrack, \lbrack2, 10, 10\rbrack, \lbrack4, 0, 1\rbrack, \lbrack3, 7, 6\rbrack, \underline{\lbrack5, 0, 6\rbrack}, \lbrack2, 1, 10\rbrack\}\\
{\bf 6}&:\{\lbrack0, 5, 5\rbrack, \underline{\lbrack1, 10, 9\rbrack}, \lbrack4, 5, 3\rbrack, \lbrack0, 1, 7\rbrack, \lbrack1, 1, 2\rbrack, \lbrack4, 6, 8\rbrack\}\\
{\bf 7}&:\{\lbrack2, 9, 3\rbrack, \lbrack4, 8, 5\rbrack, \lbrack2, 8, 9\rbrack, \underline{\lbrack5, 4, 8\rbrack}, \lbrack3, 6, 7\rbrack, \lbrack3, 2, 9\rbrack\}\\
{\bf 8}&:\{\lbrack4, 6, 3\rbrack, \underline{\lbrack1, 1, 9\rbrack}, \lbrack0, 5, 6\rbrack, \lbrack4, 5, 8\rbrack, \lbrack1, 10, 2\rbrack, \lbrack0, 1, 4\rbrack\}\\
{\bf \rm X}&:\{\lbrack2, 3, 9\rbrack, \lbrack4, 3, 5\rbrack, \lbrack3, 5, 7\rbrack, \underline{\lbrack5, 7, 8\rbrack}, \lbrack3, 9, 9\rbrack, \lbrack2, 2, 3\rbrack\}
\end{align}
\({\bf 0,2,6,7,8,{\rm X}}\)はPalay biplaneにおいて「直線」\(a\)がのせていない6つの「点」である. 逆に補集合\(\mathcal{P}\backslash\{{\bf 0,2,6,7,8,{\rm X}}\}=\{1,3,4,5,9\}\)は「直線」\(a\)がのせている5つの「点」.

 かくしてPaley biplaneが見つかった. Palay biplaneの自己同型群「全体」であるというには少し足りないが, \(PSL(2,11)\)の元が自己同型として作用することは言えた(実際Paley biplaneのフルの対称性が\(PSL(2,11)\)である.).

 この埋め込み\(PSL(2,11)\hookrightarrow Sym(11)\)によって生成元は以下のように写される.
\begin{align}
s = \begin{bmatrix}
1 & 1\\
0 & 1
\end{bmatrix}
&\mapsto ({\bf 029867315{\rm X}4}) = (a\,h\,b\,g\,k\,i\,e\,f\,d\,c\,j)\\
t = \begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
&\mapsto ({\bf 13})({\bf 49})({\bf 68})({\bf 7{\rm X}}) = (b\,e)(c\,h)(d\,f)(i\,k).
\end{align}

各共役類の代表元についても,
\begin{align}
st = \begin{bmatrix}
1 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
&\mapsto {\bf (029)(35{\rm X})(487)} = (a\,h\,j)(b\,f\,c)(e\,g\,k)\\
s^2 = \begin{bmatrix}
1 & 2\\
0 & 1
\end{bmatrix}
&\mapsto {\bf (0963542871{\rm X})} = (a\,b\,k\,e\,d\,j\,h\,g\,i\,f\,c)\\
s^3t = \begin{bmatrix}
3 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
&\mapsto {\bf (081{\rm X}5)(26347)} = (a\,g\,e\,i\,f)(b\,c\,k\,d\,j)\\
s^4t = \begin{bmatrix}
4 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
&\mapsto {\bf (06143)(27985)} = (a\,k\,c\,i\,d)(b\,j\,g\,f\,h)\\
s^5t = \begin{bmatrix}
5 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
&\mapsto {\bf (078{\rm X}41)(23)(596)} = (a\,i\,c\,e\,f\,b)(d\,h\,g)(j\,k)
\end{align}
と写る. 11次対称群の10次元既約表現の制限によって指標は以下のようになる.
\begin{align}
\begin{array}{|c|cccccccc|}\hline
\mbox{共役類}&1A_1 & 55A_2 & 110A_3 & 60A_{11} & 60B_{11} & 132A_5 & 132B_5 & 110A_6\\
\hline
\mbox{置換の型}
& \lbrack1^{11}\rbrack
& \lbrack1^32^4\rbrack
& \lbrack1^23^3\rbrack
& \lbrack 11\rbrack
& \lbrack 11\rbrack
& \lbrack1,5^2\rbrack
& \lbrack1,5^2\rbrack
& \lbrack2,3,6\rbrack
\\ \hline
\mbox{指標}&10 & 2 & 1 & -1 & -1 & 0 & 0 & -1 \\ \hline
\end{array}
\end{align}


10次元表現その2

 5次元既約表現の反対称積から得られる. 一般に, 表現空間を\(V\)とする群\(G\)の表現(指標は\(\chi_V\)とする)の反対称テンソル表現\wedge^2 Vの指標\chi_{\wedge^2 V}は,

\begin{align}
    \chi_{\wedge^2 V}(g) = \frac{1}{2}\left(\chi_V(g)^2-\chi_V(g^2)\right),\ \ 
    g\in G
\end{align}

で得られるから, 指標は次の通り.
\begin{align}
\begin{array}{|c|cccccccc|}\hline
\mbox{共役類}&1A_1 & 55A_2 & 110A_3 & 60A_{11} & 60B_{11} & 132A_5 & 132B_5 & 110A_6\\
\hline
\mbox{指標}&10 & -2 & 1 & -1 & -1 & 0 & 0 & 1 \\ \hline
\end{array}
\end{align}


11次元表現

 \(\mathbb{F}_{11}\)上の射影直線\(P^1(\mathbb{F}_{11})\)への作用から12次交代群の11次元表現に埋め込む. 作用を各共役類の代表元に対して列挙しよう. なお, 10だけXで表す.
\begin{align}
\begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} &= (0\infty)(1{\rm X})(25)(37)(48)(69)\\
\begin{bmatrix}
1 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} &= (0\infty 1)(26{\rm X})(385)(497)\\
\begin{bmatrix}
1 & 1\\
0 & 1
\end{bmatrix} &= (0123456789{\rm X})\\
\begin{bmatrix}
1 & 2\\
0 & 1
\end{bmatrix} &= (02468{\rm X}13579)\\
\begin{bmatrix}
3 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} &= (0\infty 3{\rm X}4)(12876)\\
\begin{bmatrix}
4 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} &= (0\infty 413)(29{\rm X}56)\\
\begin{bmatrix}
5 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix} &= (0\infty 5789)(142{\rm X}63)
\end{align}
置換の型さえ分かれば, 固定点\(-1\)から指標が得られる.
\begin{align}
\begin{array}{|c|cccccccc|}\hline
\mbox{共役類}&1A_1 & 55A_2 & 110A_3 & 60A_{11} & 60B_{11} & 132A_5 & 132B_5 & 110A_6\\
\hline
\mbox{置換の型} &
\lbrack 1^{12}\rbrack &
\lbrack 2^6\rbrack &
\lbrack 3^4\rbrack &
\lbrack 1,11\rbrack &
\lbrack 1,11\rbrack &
\lbrack 1^2\,5^2\rbrack&
\lbrack 1^2\,5^2\rbrack&
\lbrack 6^2\rbrack \\ \hline
\mbox{指標}&11 & -1 & -1 & 0 & 0 & 1 & 1 & -1 \\ \hline
\end{array}
\end{align}


12次元表現

 一般に, \(G=PSL(2,p)\)の\(P^1(\mathbb{F}_p)=\mathbb{F}_p\cup\{\infty\}\)への作用において, \(\infty\)の固定部分群\(B\)は(プラスマイナスを同一視した)上三角行列の全体になる. 指数は(p+1)で位数は(p^2-p)/2.
\begin{align}
B = \left\{
\begin{bmatrix}
\alpha & \beta\\
0 & \alpha^{-1}
\end{bmatrix}\in PSL(2,p)
\mid
\alpha\in\mathbb{F}_p^{\times}, \beta\in\mathbb{F}_p
\right\}.
\end{align}
\(B\)による\(G\)の左剰余類の完全代表系\(R\)は次のように与えられる.
\begin{gather}
R = \left\{t_i \mid i \in P^1(\mathbb{F}_p)\right\},\\
t_\gamma =
\begin{bmatrix}
1 & 0\\
\gamma & 1
\end{bmatrix},\ \
t_\infty =
\begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix},\ \
\gamma \in \mathbb{F}_p.
\end{gather}
\(B\)は対角成分が1の行列全体からなる位数\(p\)の正規部分群\(N\)をもつ. 位数は\(p\).
\begin{align}
N = \left\{
\begin{bmatrix}
1 & c\\
0 & 1
\end{bmatrix}\in PSL(2,p)
\mid
c\in\mathbb{F}_p
\right\}.
\end{align}
\(B\)の\(N\)による剰余群は巡回群と同型になることが簡単な計算から確かめられる.
\begin{align}
B/N \cong \mathbb{Z}_{(p-1)/2}.
\end{align}
従って\(B\)には(忠実でない)既約な1次元表現が(p-1)/2個ある. この表現による誘導表現から\(G\)の(既約とは限らない)(p+1)次元表現が得られる.

 \(B\)の1次元表現\(\rho\)による\(G\)の誘導表現\(\pi\)の表現行列は具体的に次のように得られる. まず, 部分群の表現を次のように\(G\)全体に拡張して\(\widetilde{\rho}\)とする.
\begin{align}
\widetilde{\rho}(g)=\left\{
\begin{array}{cc}
\rho(g) & {\rm if\ } g\in B\\
0 & {\rm else\ if\ } g\not\in B
\end{array}
\right.
\end{align}
左剰余類\(G/B\)の完全代表系\(R=\{t_i\mid i\in P^1(\mathbb{F}_p)\}\)によって,\(\,(ij)\)成分を
\begin{align}
\lbrack\pi(g)\rbrack_{ij} = \widetilde{\rho}(t_i^{-1}gt_j)
\end{align}
とすれば\(G\)の表現になる. 指標は
\begin{align}
\chi_\pi(g) = \sum_{i\in\mathbb{F}_p}\chi_{\widetilde{\rho}}(t_i^{-1}gt_i)
\end{align}
 ここから\(p=11\). \(B/N \cong \mathbb{Z}_5\)であり, \(B\)には次の5通りの互いに同値でない既約な1次元表現\(\rho_i\ (i=0,1,2,3,4)\)が存在する.
\begin{align}
\begin{array}{|c|ccccc|}\hline
b\in B &
\begin{bmatrix}
1 & *\\
0 & 1
\end{bmatrix}
&
\begin{bmatrix}
2 & *\\
0 & 6
\end{bmatrix}
&
\begin{bmatrix}
3 & *\\
0 & 4
\end{bmatrix}
&
\begin{bmatrix}
4 & *\\
0 & 3
\end{bmatrix}
&
\begin{bmatrix}
5 & *\\
0 & 9
\end{bmatrix}\\\hline
\rho_0(b)&1 & 1 & 1 & 1 & 1\\
\rho_1(b)&1 & \xi & \xi^3 & \xi^2 & \xi^4\\
\rho_2(b)&1 & \xi^2 & \xi & \xi^4 & \xi^3\\
\rho_3(b)&1 & \xi^3 & \xi^4 & \xi & \xi^2\\
\rho_4(b)&1 & \xi^4 & \xi^2 & \xi^3 & \xi\\ \hline
\end{array}
\end{align}
ただし\(\xi\)は1の原始5乗根.

 \(\rho_0\)による誘導表現は, \(B\)の共役な部分群たちに対する置換表現にほかならず, 既に得られた\(1+11\)次元に分解するため無視. 他の誘導表現を得るため, \(G\)の共役類に対して\(R\)による共役を黙々と計算する.
\begin{align}
\begin{bmatrix}
1 & 0\\
-\gamma & 1
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
a & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
1 & 0\\
\gamma & 1
\end{bmatrix}
&=
\begin{bmatrix}
a-\gamma & -1\\
\gamma^2-a\gamma+1 & \gamma
\end{bmatrix} \\
\begin{bmatrix}
0 & 1\\
-1 & 0
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
a & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
&=
\begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & a
\end{bmatrix} \\
\begin{bmatrix}
1 & 0\\
-\gamma & 1
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
1 & b\\
0 & 1
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
1 & 0\\
\gamma & 1
\end{bmatrix}
&=
\begin{bmatrix}
1+b\gamma & b\\
-b\gamma^2 & 1-b\gamma
\end{bmatrix} \\
\begin{bmatrix}
0 & 1\\
-1 & 0
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
1 & b\\
0 & 1
\end{bmatrix}
\begin{bmatrix}
0 & -1\\
1 & 0
\end{bmatrix}
&=
\begin{bmatrix}
1 & 0\\
-b & 1
\end{bmatrix}
\end{align}
\(\rho_i\ (i=1,2,3,4)\)による誘導表現\(\pi_i\)の指標を\(\chi_i\)で表すと, 以下の表のようになる.
\begin{align}
\begin{array}{|c|cccccccc|}\hline
\mbox{共役類}&1A_1 & 55A_2 & 110A_3 & 60A_{11} & 60B_{11} & 132A_5 & 132B_5 & 110A_6\\
\hline
\chi_1 &12 & 0 & 0 & 1 & 1 & \xi+\xi^4 & \xi^2+\xi^3 & 0 \\ \hline
\chi_2 &12 & 0 & 0 & 1 & 1 & \xi^2+\xi^3 & \xi+\xi^4 & 0 \\ \hline
\chi_3 &12 & 0 & 0 & 1 & 1 & \xi^2+\xi^3 & \xi+\xi^4 & 0 \\ \hline
\chi_4 &12 & 0 & 0 & 1 & 1 & \xi+\xi^4 & \xi^2+\xi^3 & 0 \\ \hline
\end{array}
\end{align}
\(\pi_1\)と\(\pi_4\), \(\pi_2\)と\(\pi_3\)の組み合わせがそれぞれ同値, すべて既約であることが分かる. 12次元既約表現を2つ得た.


指標表

 以上の結果を指標表としてまとめる. 各表現を次元と順に下添え字で区別.
\begin{align}
    \begin{array}{|c|cccccccc|}\hline
          &1A_1 & 55A_2 & 110A_3 & 60A_{11} & 60B_{11} & 132A_5 & 132B_5 & 110A_6\\
     \hline
     {\bf 1}&1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 & 1 \\ \hline
     {\bf 5}_1 & 5 & 1 & -1 & \eta & \overline{\eta} & 0 & 0 & 1 \\ \hline
     {\bf 5}_2 & 5 & 1 & -1 & \overline{\eta} & \eta  & 0 & 0 & 1 \\\hline
     {\bf 10}_1 & 10 & 2 & 1 & -1 & -1 & 0 & 0 & -1 \\ \hline
     {\bf 10}_2 & 10 & -2 & 1 & -1 & -1 & 0 & 0 & 1 \\ \hline
     {\bf 11}&11 & -1 & -1 & 0 & 0 & 1 & 1 & -1 \\ \hline
     {\bf 12}_1&12 & 0 & 0 & 1 & 1 & \xi+\xi^4 & \xi^2+\xi^3 & 0 \\ \hline
     {\bf 12}_2 &12 & 0 & 0 & 1 & 1 & \xi^2+\xi^3 & \xi+\xi^4 & 0 \\ \hline
    \end{array} \\
    \eta = \frac{-1+\sqrt{-11}}{2},\ \xi = \exp\frac{2\pi\sqrt{-1}}{5}.
    \end{align}


まとめとこれから

 \(PSL(2,11)\)は11点に推移的に作用する. このことは正20面体群が部分群として存在することが原因である. また, \(PSL(2,11)\)はPaley biplaneと呼ばれる11点集合上のブロックデザインの自己同型群と同型になる. これら2つの事実を結びつけるため, 11元体係数の四元数上に定義される「正20面体」どうしの構造の中にPaley biplaneを発見した.
 また, 全ての既約表現の具体的な構成法も示した. ただ, 5次元既約表現については背景にある現象(代数幾何学的な?)を掴めていない. 種数70のbuckyball surface(切頂正20面体型のC60分子, バックミンスターフラーレンに由来)へPaley biplaneを埋め込めるらしい[6]が......

 \(PSL(2,11)\)は11次のマシュー群\(M_{11}\)の12点への作用における1点の固定部分群である. また, \(p=5,7,11\)のような性質こそないものの, 散在型単純群の部分群として重要な役割を担う射影特殊線形群は数多くあり, それらについてもここでの考察が役に立つだろう.


リファレンス

[1]Galois' last letter – neverendingbooks
http://www.neverendingbooks.org/galois-last-letter

[2]Kostant, B., "The graph of the truncated icosahedron and the last letter of Galois." , 1995, Notices of the AMS, 42(9), 959-968.
https://www.ams.org/notices/199509/kostant.pdf
%https://en.wikipedia.org/wiki/Raymond_Paley

[3]Behr, Helmut, and Jens Mennicke. "A presentation of the groups PSL (2, p)." Canadian Journal of Mathematics 20 , 1968, 1432-1438.
A Presentation of the Groups PSL(2, p) | Canadian Journal of Mathematics | Cambridge Core

[4]Block design - Wikipedia

[5]Paley graph - Wikipedia

[6]Martín, P., & Singerman, D. (2012). The geometry behind Galois’ final theorem. European Journal of Combinatorics, 33(7), 1619-1630.
The geometry behind Galois’ final theorem - ScienceDirect

*1:Biplaneを訳すとすれば双平面だろうか. 使用例が見られなかったためそのまま英語を使う. ちなみに 普通の辞書を引くとbiplaneは複葉機の意味になる.