『三体』の三体問題について
これは劉慈欣『三体』(早川書房)のネタバレがある記事。
「三体問題は(解析的に)解けない」という事実は古典力学を学ぶとなんとなく知ることになり、その意味するところもなんとなく分かる。ほんの僅かしかない力学の「解ける」例に触れた後、それより少し複雑な対象を扱うと「解けない」問題のほうが普通だと信じられるようになる。その一番簡単で象徴的な例が三体問題。
ところが、数学的に正確に「三体問題は解けない」の意味を説明しようとすると言葉に詰まる。「独立な第一積分が不足した非可積分系である」らしい。「不可能性」の数学的な定式化はだいたい難しい。
しかし、「三体問題は解けない」が怪しい使われ方をしている場面に直面して、「そういう意味ではない」と言うくらいならもう少し簡単な仕事になる。『三体』の三体問題の記述にはところどころにそう指摘せずにはおれない怪しさがある。
続きを読む直線の配置の数え上げ(1)―6本の直線が作る43通りの形
ある数え上げの問題. 言葉で説明するよりちょっと観察してみるのが早い.
4本の直線を引く. どの2本も平行ではなく, どの3本も同じ点で交わることはないとしよう.
すると, どう引いても直線で囲まれた領域の「形」はいつも同じになる. 1つの4角形が隣り合う2つの辺で2つの3角形とつながった形.
続きを読むPSL(2,13)指標表手作り体験記(2)――PSL(2,q)の部分群
- PSL(2,q)の部分群
- PSL(2,13)の指標(続)
- 14次元既約表現
- 12次元既約表現
- 指標表
- まとめと課題
- リファレンス
続き.
PSL(2,13)指標表手作り体験記(1)――G2の有限部分群 - Shironetsu Blog
PSL(2,q)の部分群
ガロアがシュヴァリエへ宛てた「最後の手紙」の中で述べた命題は現代的に解釈するとこうであった.
ガロアが気付いていたのかどうかは不明だが, 実際にはこの定理はより一般の有限体に拡張できて, 9元体を加えて次のようになる.
PSL(2,11)指標表手作り体験記――Paley biplaneと正20面体
- イントロ――ガロアの最後の手紙
- PSL(2,11):基礎事項
- 5次元既約表現
- 10次元既約表現その1
- Paley Biplane
- アダマール行列
- 2項正20面体群
- 11元体上の正20面体たち
- 10次元表現その2
- 11次元表現
- 12次元表現
- 指標表
- まとめとこれから
- リファレンス
イントロ――ガロアの最後の手紙
シュヴァリエへ宛てたガロアの最後の手紙[1]. モジュラー方程式との関係から彼が重要視し, 証明なしに与えた命題は現代的なことばで述べるとこうであった.
素数 に対して, が 点への忠実かつ推移的な作用を持つのは のときに限られる.
それぞれ正4面体群, 正8面体群, 正20面体群を部分群としてもつことから起こるこの現象. ADE分類, McKay対応の「例外的な三つ組」がここにも現れる.
本記事では について調べた前回の記事に引き続き, の既約指標を求めつつ, ここで起こっている現象の理解を目標とする.