Shironetsu Blog

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イーガン の検索結果:

『正多面体と素数』の計算をしましょう(3)―正二十面体・頂点を∞へ立体射影

…-2]や、グレッグ・イーガン[Egan]もこの座標系を採用している。若干の記号の違いはあるが、前者ではここで計算するのと等価な式を見つけることができる。この座標系を利用して計算を行うことの利点は明白で、 軸が5回対称軸になるため正二十面体多項式の項数が最少になるのだ。正20面体ではこれが最大の対称性(含まれる元の位数の最大値)なので、係数の観察が主眼でなければこれは大変良い性質だ。 軸回りの回転周期が短いためGIFアニメーションを作るときのレンダー時間が最も少なくなるという現…

人類を未知の世界に導く天体たち――グレッグ・イーガン"Perihelion Summer"&"The Slipway"

…年の前半、グレッグ・イーガンによる2つの中短編SFが続けて発表された。 ひとつは、"Perihelion Summer"。Tor.comから4月16日に発売。Perihelion Summer (English Edition)作者: Greg Egan出版社/メーカー: Tor.com発売日: 2019/04/16メディア: Kindle版この商品を含むブログを見るPerihelion Summer by Greg Egan | Tor.com Publishing もうひ…

氷の塔を建てて隣の星へ――グレッグ・イーガン "Phoresis"

SF

…刊行されたグレッグ・イーガンによるノヴェラPhoresis. https://subterraneanpress.com/phoresis コレクター向けに1000部限定でナンバリングされたハードカバー書籍として発売された本作は, 刊行後まもなくKindle等電子書籍ストアでの取り扱いが始まり今では気軽に手に取れるようになっている. 発売から1年経ち, 新作Perihelion Summer(太陽系をブラックホールが通過するという何ともタイムリーな内容)の刊行も目前に迫ってい…

球面調和関数のレシピ - 角運動量の合成から

…きる。 (グレッグ・イーガン『クロックワーク・ロケット』) 物理学では水素原子のSchrödinger方程式を解くとき, 角度方向と動径方向の変数分離をして球面上の微分作用素が代数に従うことを利用することで球面調和関数に出会うようになっている(このあたりの歴史を自分は知らない). 物理っぽい(2次元)球面調和関数の導出法として, 他にWignerのD行列の次元を落とす方法もある. ここではスピンの合成を利用して導いてみる.個のスピン1系の合成によってスピン系を得る方法は1通り…

球面調和関数で正20面体をつくる

…められるのだろう? イーガンはl=6の場合についてC5軸(5回対称軸)をz軸に取ることで3つのJz固有ベクトルの和としてこれを表していた.いかにも手計算で求められそうな簡潔な式. たとえば上に列挙した二重正20面体が鏡系をなすこと*5など使えそうな対称性はいくつかあるものの現状未解決. 鏡といえば正20面体対称かつパリティー奇のものはで初めて許されるという話題もあった. これはの偶奇がそのまま球面調和関数のパリティーに対応することからすぐ分かる.While the simpl…

「トライアリティー」(八元数SF)

…~~解説 グレッグ・イーガン『エターナル・フレイム』第33章へのオマージュ。カルラとパトリジアとロモロが四元数を通じてスピンを発見するところ。ここほんとラブ。ただし舞台を8+0次元宇宙に移している。その結果四元数ではなく八元数が役に立つようになり……。 光学固体に関して冒頭に自分のものであるように書いているのはなかなか悪質だが、消化しきれていなかった部分を噛み砕いてみようという試みの反映。ただ正直実際にどんな測定をしているのか想像しきれていない。遊離輝素をどうやって供給するの…

5+1次元Dirac方程式 - Spin(5,1)とSL(2,H)の同型から

…する。」 グレッグ・イーガン『ディアスポラ』p.386の改変. 数字を変えている. というのは以下の理由から. 「参考」にリンクを張っている「『ディアスポラ』5+1次元宇宙についての考察」では次のように指摘されている. ところで、「ディアスポラ」の原子で最初の2つのレベルは完全に埋めるには、6つの軌道のひとつひとつを4つのスピン状態で埋めることになるので、レプトンは12個でなくて24個必要になるのではないでしょうか。 『ディアスポラ』の元の文章で「レプトン十二個」となっている…

6+0次元Dirac方程式 - Spin(6)とSU(4)の同型から

…く解説されている. イーガン関連でたびたびお世話になっているサイト. やはり『ディアスポラ』に関連して5+1次元Dirac方程式も調べられている.http://kuiperbelt.la.coocan.jp/sf/egan/Diaspora/dirac/dirac-5D.html 感想. 事実としてSU(4)からSO(6)への準同型写像が存在することは知っていたが, こんなにさっぱりしたものだとは思っていなかった. 背景にいつも見え隠れする四元数のありがたみをひしひしと感じる…

点付き・点なし

…c方程式もグレッグ・イーガン『エターナル・フレイム』The Eternal Flame 33章に近いアプローチで導出できることが分かった. van der Waerdenによって導入された, いわゆるdotted/undotted spinor(点付き/点なしスピノル)がこの道筋を辿ると自然に現れる. 以下, 上に挙げた記事(2)とほぼパラレルに進むためしばらくコピペ+改変. SL(2,C) 次の2次Hermite行列を考える(任意の2次Hermite行列はこのように実数(t…

非相対論的2+2次元水素原子 - Dichronautsをよんだ

… さらっとこれを描くイーガンの筆致に目がハートになった. ディアスポラの「重い同位体」の星スウィフト探査のエッセンスを感じる. トカゲとの交流は5+1次元マクロ球のポアンカレで出会ったヤドカリのそれにも通じる. こういうのが好き...Speculative Biology的な... 〈融合世界〉の他の作品とのかかわりとしては, 異なるレプリケーターを由来とする生物たちが出てくることで, 『白熱光』のなかでちょいちょい触れられていたパンスペルミア観がよりはっきりストーリーに現れ…

2+2次元Dirac方程式と確率解釈 ― Dichronautsよんでる

グレッグ・イーガンのDichronautsをよんでいます. やっとあらすじにある暗黒断崖が出てきた. ElenaとIrinaの間の軋轢, Sleepwalkerの騒ぎなどからSider-Walker間の必ずしもうまくいくとは限らない緊張をはらんだ関係が最初のほうで既に明かされていたが, Thantonという都市でSethとTheoはもっと不気味な実例と出会うことになった. このあたりが本書の含むある種政治的なテーマだろうか. ヒト世界には対応物がないけど. しばしば感じられる…

2+2次元Dirac方程式―Dichronautsをよみはじめた

グレッグ・イーガン『白熱光』がハヤカワ文庫SFから出版されましたね. もちろん入手したものの既に読んでいた作品だったようだ. そういうわけで今年3月末に電子書籍先行で出版された最新長編Dichronautsを読み始めた. Kindle本棚に並べたのは発売日だったのに積んでいたのだ. 罪深い.Dichronauts (English Edition)作者: Greg Egan出版社/メーカー: Greg Egan発売日: 2017/03/31メディア: Kindle版この商品を…

『アロウズ・オブ・タイム』-ライラの理論-アガタの実験

SF

グレッグ・イーガン『アロウズ・オブ・タイム』をよんだ. <直交>三部作完結. おわってしまった. 第1巻『クロックワーク・ロケット』から約14カ月. 第2巻『エターナル・フレイム』から半年. ちょうどいい間隔. ありがとうございました. 「アロウズ・オブ・タイム」がタイトルになっていることからも分かるように, 本巻ではここまで避け気味に語られてきた「時の矢」の問題に直接向かい合っていくことになる. 時間とは何か? 時間逆行カメラというささやかな逸脱からはじまり, その応用であ…

お肉は高い

グレッグ・イーガンはヴェジタリアン*1らしい。このことは英語版Wikipediaの記事で知った。 Greg Egan - Wikipedia といっても記事中では"Egan is a vegetarian."の一文しか書かれていない。ソースとして貼られているリンクはふたつ。 ひとつはUniversity of Illinois Pressから出版されたSF作家評論本シリーズのイーガンの巻。*2 もうひとつはイーガン自身の個人サイトで公開されているイラン旅行記のページのPart…

『エターナル・フレイム』-ベクトル-レフトル-ライトル

SF

グレッグ・イーガンの<直交>三部作の第2巻『エターナル・フレイム』をよみました。 最高だった. 科学を開拓していく物語がこんなにもおもしろい. 実験, 分析, 発見…のコンボが次々にくりだされ科学それ自体が物語になっている. 人間離れした(※人間じゃない)頭のいい科学者が新しく発見された難しい問題を前にして難しい議論をしていく。凄まじい理解に至り超高速で新理論が打ち立てられる。見渡す限りの記念碑的偉業。記念碑の森。 板倉先生が書かれていることの受け売りだが, ヒト世界の量子力…

進化の産物であること

SF

…来している。 人工食用肉に関する部分は特に何も調べずに書いてかなり無責任だが前々から興味はある。将来の、自分たちが経験することになる食の形としてありうるのか?昆虫食やペースト状謎食物が皿に並ぶ未来と同程度にはありそうな気もする。 *1:グレッグ・イーガン「クリスタルの夜」"Crystal Nights"は原文がここで公開されている。 http://ttapress.com/553/crystal-nights-by-greg-egan/ 日本語訳は『プランク・ダイヴ』に収録。

クロックワーク・ロケットをとばす

SF

グレッグ・イーガン『クロックワーク・ロケット』を考える記事(ネタバレ含む) 「山のどれくらいが太陽石だと考えているの?」ヤルダは訊いた。 「質量でたぶん三分の二」 ヤルダは背中を使ってすばやくいくつかの計算をした。 「それは四空間での四分の一回転の一回分にはじゅうぶんそうだけれど、旅の全体分をまかなえる見こみはまったくないわ」 (p.246) 〈孤絶山〉をロケットとして打ち上げ無限の速度――母星に対して――まで加速して必要なだけの時間を得ること、それがエウセビオの計画だった。…

クロックワーク・ロケットをよむ

SF

…注意!! グレッグ・イーガン『クロックワーク・ロケット』のネタバレを含みます。 (ヤルダの法則) 2015年12月18日に早川書房から出版されたグレッグ・イーガンの『クロックワーク・ロケット』。クロックワーク・ロケット (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者: グレッグイーガン,山岸真,中村融出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/12/18メディア: 単行本この商品を含むブログを見る おもしろかった……。田舎生まれの科学者ヤルダの成長と科学者としての人生、夜空を彩る多…

燠火(解説)

グレッグ・イーガン『白熱光』、ハル・クレメント『重力の使命』*1、ロバート・L・フォワード『竜の卵』、スティーブン・バクスター『天の筏』、ラリイ・ニーヴン『インテグラル・ツリー』、そしてアーサー・C・クラークや野尻抱介の多くの短編……等々多くのSFで扱われる「重力ネタ」*2。身近でありながら少し違った環境に出ると驚くべき振る舞いをする、もっともSF的な自然法則の一つであり、特にハードSFの題材として親しまれている。 「燠火」(おきび)はそういったSFにあこがれて書いた。「作業…

燠火(前半)

…いるかのように赤く照らされた目標の姿を片側の眼で認めたことによる驚きがそれをかき消した。光沢のある線とその間に挟まれて並んだ暗い破線、所々に見えるやや明るい点――ゆっくりと回転するその輪郭を、2次元遠近感覚は中心の膨らんだ4つの刃を持つ手裏剣として翻訳した。私は同類に出会ったのだ。(「燠火」(前編)終)ゼンデギ (ハヤカワ文庫SF)作者: グレッグイーガン,山岸真出版社/メーカー: 早川書房発売日: 2015/06/24メディア: 文庫この商品を含むブログ (10件) を見る

「作業仮説」スポイラー補足解説

…だろう。 グレッグ・イーガン『白熱光』ではロイ達は電磁気学を知らないまま一般相対論に 辿りついて危機を乗り越える。その過程には必然性がある。 同じくイーガン『ディアスポラ』には5+1次元宇宙「マクロ球」U*の天体ポアンカレでのヤドカリとの邂逅というとてもわくわくする章がある。 これらの作品へのリスペクトを込め、7+1次元宇宙(ちょっと多い)の「泥油」という液体の分厚い層の底近くに住む知的生命が数学知識を持て余してマクスウェル方程式と同じものを得てしまうという過程を描くことにし…

「作業仮説」というSFもどきを書いた

「作業仮説」というイーガンの真似っぽいSFを書いた。 http://ux.getuploader.com/icdc_515/download/7/working_hypothesis.pdf (ダウンロードは上記URLリンク先ダウンローダーから) スポイラー補足説明記事を同時に上げるのでそちらで内容について触れる。 shironetsu.hatenadiary.com以下サンプル画像。 白熱光 (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作者: グレッグ・イーガン,Rey.Hori,山岸…