Shironetsu Blog

@shironetsuのブログ

『アロウズ・オブ・タイム』-ライラの理論-アガタの実験

SF

グレッグ・イーガン『アロウズ・オブ・タイム』をよんだ. <直交>三部作完結. おわってしまった. 第1巻『クロックワーク・ロケット』から約14カ月. 第2巻『エターナル・フレイム』から半年. ちょうどいい間隔. ありがとうございました. 「アロウズ・オブ・…

お肉は高い

グレッグ・イーガンはヴェジタリアン*1らしい。このことは英語版Wikipediaの記事で知った。 Greg Egan - Wikipedia といっても記事中では"Egan is a vegetarian."の一文しか書かれていない。ソースとして貼られているリンクはふたつ。 ひとつはUniversity of…

モーメント

SF

導電ガガンボに寄生した好熱吸虫(中間宿主は天井を住処とするサカサカメムシである)が宿主を電灯への自殺的飛翔へ向かわせしばしば積もる死骸がショートを起こすその日だけものぐさな都会人は隈なき掃除の必要を痛感するのだ。 年に一度空が紫色に曇るその日…

『重力の使命』であそぶ―(2)メスクリンの歳差運動

SF

メスクリンの歳差運動 「もちろん、歳差はかなり急速なはずだ。赤道面が異常にふくらんでいるため、たとえこの惑星の質量の大部分が中心付近にあっても、太陽の引力に相当な手がかりを提供するからである。歳差の周期までは計算しなかったが、居住可能半球が…

『重力の使命』であそぶ―(1)メスクリンの表面重力

SF

重力の使命 はくちょう座61番星C. 黎明期の系外惑星探査の第一人者ピーター・ヴァンデカンプの指導の下カイ・オーゲ・ストランド博士の観測によって「発見」された16木星質量の見えない暗い星. 1942年に明かされたこの発見がひとつのSF作品のインスピレーシ…

バジリスクの卵

SF

* 北斜面生態系に属す生物は照期-昏期サイクルに同期したきわめて長周期の生活史を持つ。南極恒久研究所所属の研究員達のおよそ200年にわたる継続的な研究により集められた驚くべき観察記録は、南斜面生態系でも同様の適応が起こっていることを明らかにした…

ハダフライ

SF

2例あれば<故郷なき医師団>が動き出すためには十分な理由になる。 世界中の医療機関から絶え間なく流れ込む膨大な医学的記録――その大部分は異常性の認められない疾患と外傷である――の中に、10時間の間隔をおいて地球を半周離れた2地点で共通の特徴をもつ変…

『エターナル・フレイム』-ベクトル-レフトル-ライトル

SF

グレッグ・イーガンの<直交>三部作の第2巻『エターナル・フレイム』をよみました。 最高だった. 科学を開拓していく物語がこんなにもおもしろい. 実験, 分析, 発見…のコンボが次々にくりだされ科学それ自体が物語になっている. 人間離れした(※人間じゃな…

〈蚊の禿〉とは

SF

先日ストルガツキー兄弟の『ストーカー』を読んだ。「未知との遭遇」ものの古典とのことだが、簡単にあらすじを書いておく。 ~あらすじ~ 地球を訪れながら、地球人とのコンタクトを行わなずに去った「来訪者」。彼らは地球上のいくつかの地点を、異常な現…

進化の産物であること

SF

戦死した兵士が折り重なる戦場、骨の形が皮に浮き出た遺体の埋められた虐殺の跡、無差別テロの犠牲者が横たえられたベッドの並ぶ病院の一室……大部分が前世紀の写真である中、今世紀に入ってから撮影されたと思われるものも含まれているのに全てモノクロで統…

クロックワーク・ロケットをとばす

SF

グレッグ・イーガン『クロックワーク・ロケット』を考える記事(ネタバレ含む) 「山のどれくらいが太陽石だと考えているの?」ヤルダは訊いた。 「質量でたぶん三分の二」 ヤルダは背中を使ってすばやくいくつかの計算をした。 「それは四空間での四分の一…

クロックワーク・ロケットをよむ

SF

!!注意!! グレッグ・イーガン『クロックワーク・ロケット』のネタバレを含みます。 (ヤルダの法則) 2015年12月18日に早川書房から出版されたグレッグ・イーガンの『クロックワーク・ロケット』。クロックワーク・ロケット (新☆ハヤカワ・SF・シリーズ)作…

一般フィボナッチ数列の周期について(2)

(1)の続き.shironetsu.hatenadiary.com (1)の記事で実数列としてのフィボナッチ数列について一通り説明した. ここからは整数列としてのフィボナッチ数列の性質を見ていく. 用語の定義 そのまえに, 整除性の話を始めるために, ここから成分は特に述べない限り…

一般フィボナッチ数列の周期について(1)

祖先型の目で眺めたこの惑星は, 十分近づいても赤道と極以外に陸地が無いように見える.しかし周回軌道上でよく目を凝らせばその勘違いが, 青色と海を結びつける先入観に起因するものだと気付く. あるところでは群れをなし, またあるところでは毛羽立ち, 赤道…

2次元・3次元ラグランジュ点の位置と安定性

私を無理矢理平面の肉体に押し込み、案内役も無しにこの宇宙を探索させた〈圧搾者〉も、精神の消失からは私を保護してくれたようだった。復活した直後の安堵と微睡みのなか視野に飛び込んできたのは星空だった。やはり2πラジアンの。しかし今度は赤い太陽は…

燠火(解説)

グレッグ・イーガン『白熱光』、ハル・クレメント『重力の使命』*1、ロバート・L・フォワード『竜の卵』、スティーブン・バクスター『天の筏』、ラリイ・ニーヴン『インテグラル・ツリー』、そしてアーサー・C・クラークや野尻抱介の多くの短編……等々多くのS…

燠火(後半)

同類――私と同じくプレスされた人間?この世界についての有益な情報を得るためか、単に共感を求めるためか、危険の可能性を省みることなど忘れた私は一心不乱にコンタクトの手段をこの体の中から見つけるべく、再度まだ使っていない感覚を探った。まずはこち…

燠火(前半)

目覚めた私が捉えたのは2πラジアンの視野だった――4πステラジアンではなく。そのうち半分よりいくらか少ない領域はいくらか眩しさを感じる赤い光の線が占め、もう半分にはわずかに赤みがかったり青みがかったりしている弱く白い光点が所々に混ざった暗い線が…

金属があることから

先日の記事で 「これを記した筆者は重力理論の検証を兼ねた宇宙開発を目指している。しかしこの星には鉱物資源が無いため苦労することになるかもしれない。」 と書いた。 「作業仮説」スポイラー補足解説 - Shironetsu Blog 当初はこのネタをもっと膨らませ…

一般次元のマクスウェル方程式と重力のこと

n+1次元マクスウェル方程式 「作業仮説」の中でフルルッデに重力理論としてのマクスウェル方程式を導かせた。 shironetsu.hatenadiary.com しかし、 ローレンツ力を電磁場テンソルの(n+1)元速度の内部積として定義したこと。 同符号間に引力が働くとしたこと…

「作業仮説」スポイラー補足解説

「もし私たちが水中にしか棲めないお魚であったならば、どんなに脳味噌が発達していたとしても、このような基礎物理法則に到達することはできなかったであろう。」 (横山順一『電磁気学』(講談社)) 1年冬学期の電磁気の授業で使われた教科書に書かれてい…

「作業仮説」というSFもどきを書いた

「作業仮説」というイーガンの真似っぽいSFを書いた。 http://ux.getuploader.com/icdc_515/download/7/working_hypothesis.pdf (ダウンロードは上記URLリンク先ダウンローダーから) スポイラー補足説明記事を同時に上げるのでそちらで内容について触れる…

新天地

ブログを数式で埋めたら読み込むまでに永遠の時間が流れてしまうようになったため整理しようと思ったが、当然そんな気力も無かったので最初から付いていたのに使わずにいてもったいなかった未使用のブログにやってきた。