『正多面体と素数』の計算をしましょう(1) ――正二十面体・辺の中点を∞へ立体射影
- これは何
- その12番目のほとんど想像を絶する効用
- 公式集
- 1の5乗根との関係
- フィボナッチ数との関係
- 正20面体多項式
- 32次、42次、50次、62次の正20面体多項式
- 32次
- 42次
- 50次
- 62次
- 球面調和関数
- References
これは何
橋本義武『正多面体と素数』(2020年、放送大学教育振興会)、主に10章「正20面体多項式」の計算を確かめます。
Sagemath等による計算ノートやその他のリソースを以下のリポジトリに上げています。順次追加予定。
github.com
その12番目のほとんど想像を絶する効用
黄金比 とは、 のふたつの実根のうち大きいほうのことをいう。すなわち、
\begin{align}
\phi=\frac{1+\sqrt{5}}{2}.
\end{align}
もう一方の解は
15世紀イタリアの芸術家にして数学者、フランシスコ会修道士のルカ・パチョーリはその著書『神聖な比例』(Divina proportione)の中で、黄金比の「その12番目のほとんど想像を絶する効用」として、黄金比を用いた正二十面体の構成法に言及しているという[Coxeter]。
その12番目の効用とはこうだ;縦横比を とする長方形を図1.のように組み合わせる。するとその頂点の全体が正20面体をなす。
デカルト座標で表すと、複号は全ての組み合わせに渡るとして
\begin{align}
(0,\pm\phi,\pm1),\\
(\pm 1, 0, \pm\phi),\\
(\pm\phi, \pm 1, 0)
\end{align}
の12点が正20面体の頂点になるということ。
これから正二十面体を表現するために3つの座標のとりかたを見ていくが、辺の中点のうち6つが 軸上にくるこの取り方はとりわけ重要な意味を持つ。
ホタルの名前はノクチルカ――夜光虫命名小史
円分多項式の係数を計算する - 〈105〉を超えて
- Introduction
- 鈴木の定理
- メビウス関数と反転公式
- Migotti の定理
- Square-free kernel
- 偶数位数
- 対称性
- 2つの素数の積
- 最小出現次数
- 再帰的アルゴリズム
- まとめ
- References
Introduction
の原始 乗根全てを根に持つ多項式で、モニック(最高次の係数が )なものを 次の 円分多項式 (cyclotomic polynomial) と呼ぶ. これを で表す.
定義からすぐに導けるように,
これを展開する方法は後で説明することにして, 最初のいくつかを見よう.
この範囲で各項の係数には しか現れない. 延々と計算を続けると, に至っても係数はやはり のいずれかで, 円分多項式とはそういうものなのだと予想したくなる. ところが, に至って平穏は破られ, 係数に が出現する:
E8-格子にふれる
- イントロ:E8-格子と約数関数
- 格子
- 定義
- グラム行列
- 双対格子
- 整格子・ユニモジュラー格子・偶格子・奇格子
- テータ関数
- 定義
- テータ関数の変換性
- E8-格子
- E8-格子のテータ関数
- 偶ユニモジュラー性と保型性
- テータ定数の3つ組
- まとめと展望
- リファレンス
- 書籍
- オンライン
イントロ:E8-格子と約数関数
以前の記事で のルート系が2項正20面体群から得られることについて書いた.
その際, -格子に含まれる, 「長さの2乗」=「ノルム」*1が の点の総数 が以下の式で与えられるという事実 [Conway]を引用した.
不思議だ. なぜここに数論的な関数が…? なぜ3乗…?などなど.
正20面体からE8が生まれる
- 2項正20面体群からE8へ
- 240本のベクトルがE8のルート系に一致すること
- もっとスマートに
- まとめ
- リファレンス
2項正20面体群からE8へ
3次元ユークリッド空間の原点周りの回転は四元数で表せる. このことは本ブログで以前から, 特に正20面体に関係する問題を考えるためにたびたび利用してきた.
shironetsu.hatenadiary.com
shironetsu.hatenadiary.com
正20面体の(向きを変えない)対称変換は60個あり, 5次交代群と同型な正20面体群をなす. この60個に対応する四元数120個もまた積について閉じており, これを2項正20面体群 (binary icosahedral group)という. 2項正20面体を記号 で表す.
モーメント3
既知理論の分析から「設計者の思想とユーモアのセンスを理解した」と主張する宇宙のシミュレーション仮説の過激な信奉者の一派が、仮説の強力な証拠になりうる「イースター・エッグ」を起動するため、自然には起こりえない複雑な手順で粒子を衝突させる巨大な装置を作り上げたが…。
~~~
〈世界の淵〉を遡上して力尽き浜辺に打ち上げられたリヴァイアサン(外海を原産地とする大型海獣の総称)は「寄生虫の宝箱」と呼ばれ、漂着イベントごとに膨大な数に及ぶ新種の命名に関しては宿主・寄生部位等を符号化した体系的な命名法が提唱されている。
~~~
皇帝の命を受け発見された全ての恒星に固有の文字を制定する造文局は、単一の変光星ではなく連星系であることが判明した結果、廃字となる一つの文字と同時に新たに追加される二つを公表した。
~~~
開戦の兆しが見えた頃、海中油田の所有者達は鯨油採取のために品種改良された鯨の増産体制に移るとともに、かれらをただ燃料源として利用するだけではなく兵器――生体魚雷――に転用する方法を化学者に求めたが、研究の成果はあらゆる生体に"着火"するための汎用的な技術――人間爆弾の原型――であった。
続きを読む